2025.12.10 起業ガイド
解体業で独立に必要な資金は?開業費用、コストや稼ぎ方まで徹底解説
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今の日本は空き家の増加やインフラの老朽化が進んでおり、解体の仕事が必要とされる場面が確実に増えています。
この機会を活かして、雇われの身を離れ、自力で起業したいと思う人も多いのではないでしょうか。
でも「独立するにもいくらお金が必要になるか」といった不安が頭に浮かび、資金や手続きの見通しが立たないまま悩み続ける人は少なくありません。
この記事では、解体業独立に必要な資金のイメージ、揃えておきたい許可や資格、仕事の取り方、そして小さく始めて収入を安定させる方法まで解説します。
小さな現場から一歩ずつ経験を重ねれば、無理なく独立する道筋を描くことができます。
解体業で独立する前に知っておきたい解体業の将来性
解体業は空き家の増加やインフラの老朽化など、長期的な社会課題と深く結びついているため、安定した需要が続きやすい分野です。
この章では、国が公表しているデータを軸に、解体業の将来性を読み解いていきます。
データから見る業界動向-空き家の増加・老朽インフラで広がる解体ニーズ
解体業の将来を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「空き家の増加」です。
国土交通省によると、国内の空き家数が1988年の394万戸から2023には900万戸(2023)へ増加しています。特に地方では放置される住宅が増え続けており、空き家の増加が一時的な現象ではなく、今後も続く可能性が高いです。
解体業が求められるもう一つの大きな要因がインフラの老朽化です。内閣府と国交省の資料によれば、全国の道路橋、トンネル、河川、上下水道、港湾など、建設後50年を超えるインフラ設備は加速度的に増加する見込みです。

こうした状況下で、安全性を保持するための撤去作業を含めた解体業者の関わる領域が一段と広がっていきます。
新築から「建て替え・リフォーム」へ-解体に広がる参入チャンス
社会的意識も大きく変わりつつあります。
「今ある建物をどう使うか」という住宅への意識の転換が、解体の仕事にも「全部壊す」だけではない選択肢を生んでいます。
実際に、新築住宅着工数は緩やかな減少傾向で、既存住宅の活用や改修の比重が高まっていおり、この流れに合わせて対応できるのが、「部分解体」や「内装解体」と呼ばれる仕事です。
たとえば、壁だけを抜く工事、キッチンの交換に伴う撤去、店舗の内装をスケルトンに戻す作業などの案件が増えます。
重機が入れない狭い場所では、手工具で解体する必要があり、こうした作業は小規模事業者でも入りやすい領域です。
空き家対策特別措置法と各種支援策-国の後押し
空き家が増えるなかで、「空き家対策特別措置法」によって自治体の対応が強化されています。
自治体ごとの補助制度も広がっており、老朽住宅の除却に対し補助率80%前後の補助金が設定される場合もあります。
除却後の跡地活用や地域の空き家管理の仕組みなどの制度を理解しておくと、依頼者の負担を減らしながら仕事を受けられるケースもありますので、仕組みを把握しておくことが重要です。
解体業で独立するときに必要な許可・資格・登録と取る順番
この章では、独立時に必要となる「解体工事業登録」と「建設業許可(解体工事業)」の違い、産業廃棄物の運搬に関わる許可、アスベスト対策に必要な資格などを分かりやすく解説しています。
具体的な内容を見ていきましょう。
建設業許可と解体工事業登録の違い
解体業で独立を考える際に最初の分岐となるのが、「解体工事業登録」と「建設業許可(解体工事業)」のどちらを取るかという点です。
工事の請負金額によって必要な許可が変わり、500万円未満の工事なら解体工事業登録で工事が可能ですが、500万円以上の工事を請け負うなら建設業許可が必要です。
解体工事業登録は、都道府県に届け出て5年ごとの更新で維持できます。
一方で、建設業許可は専任技術者の配置など条件が厳しくなりますが、全国で工事が可能になります。
独立したばかりの時期は、まず解体工事業登録を取得し、売上や工事件数が増えてきた段階で建設業許可を検討する流れが現実的です。
産業廃棄物収集運搬とリサイクル規制
解体の仕事では、建物を壊したあとに出る廃材の扱いも重要です。
木くずやコンクリートがら、金属、アスファルトなどは「建設副産物」と呼ばれ、その処理にはルールがあります。
床面積80㎡以上の解体工事では、自治体への事前届出が義務になっており、廃材を自社で処分場まで運ぶ場合は、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
この許可がないと運搬を外部に委託することになり、費用や段取りが変わってきます。
独立初期は、無理にすべてを自社で抱える必要はありません。
まずは処分場や運搬業者との連携を活かしつつ、少しずつ自社で担える範囲を増やしていきましょう。
アスベスト関連義務と専門家連携の考え方
解体の現場で近年とくに注意が必要になっているのがアスベスト(石綿)です。
健康被害が大きい素材であるため、解体前には必ず「事前調査」を実施することが義務化されています。
アスベストを取り扱う現場では、「石綿作業主任者」などの資格者が作業を管理します。
飛散を防ぐ養生や専用の防護具を使った作業が求められ、違反すると罰則の対象になります。
自社で資格を取るか、専門業者と協力して進めるかは、仕事の内容と規模を見ながら判断できますが、必要な場面だけ専門業者に委託する方法が現実的な選択肢です。
解体業の独立資金はいくら?必要な初期費用と運転資金の目安
独立を考えるとき、多くの人が最初につまずくのが「結局いくら必要なのか」という点です。
リースや協力会社を活用し、一人親方として小さく始める選択肢もあります。
この章では、無理なくスタートできるよう、規模別の資金の考え方を整理します。
一人親方の開業費用と毎月のランニングコスト
解体業を「一人親方」として独立する場合、初期費用を抑えたスモールスタートが可能です。
最初に揃えるのは
・軽トラック(中古40~80万円)
・小型工具一式(3~10万円)
・営業所の敷金・礼金(20~40万円)
・解体工事業登録費(3~5万円)
など、初期費用は200万円前後からスタートできます。
月のランニングコストは
・車両(燃料・整備)1〜3万円
・保険月3,000〜8,000円
・通信費5,000〜1万円
・工具の消耗品5,000円〜
など、月5~10万円程度で試算が可能です。
重機が必要な工事を行う場合については、購入(200~400万円)せずにリースや協力会社の利用で資金を大幅に抑制することが現実的です。
従業員雇用で増えるお金
従業員雇用を検討する際、費用は一気に増加します。
特に、建設業の「公共工事設計労務単価」(全国平均24,852円/日)には注意が必要です。
この単価には事業主が負担すべき法定福利費(社会保険料の会社負担分)や労務管理費などは含まれていません。
これらを含めると、労働者一人あたりの真の雇用コストは、35,041円と試算されます。
また、賃金設計の目標値としては日額29,000円が示されています。なので社員を一人雇うだけでも、
・給与20~28万円
・社会保険料3~5万円
・事務所家賃5~10万円
などの固定費が発生し、月30~40万円前後の支出となります。
初期は小規模で安定させ、仕事量に応じて段階的に拡大する計画が必要です。
同時に、こうした事情を依頼者に丁寧に説明し、技術力と信頼性へ納得を得ることができれば、結果として良質な案件の受注につながります。
解体業の創業融資と助成金の選択肢
独立資金を自己資金だけで賄えない場合、日本政策金融公庫の創業融資が強力な味方になります。
担保や保証人が不要で利用しやすい制度もあり、開業費の大部分をサポートできます。
また、初期の負担を軽減するため、自治体独自の補助金・支援策も活用しましょう。
特に依頼者が利用できる空き家解体に利用できる補助金など、地域ごとの制度を積極的に探せば、依頼者への提案にもつながります。
種類が多く迷う場合は、商工会議所や金融機関、行政書士などに相談しながら、最適な支援策を選びましょう。
資金面での不安を減らし、独立の進め方に余裕を持つことができます。
解体業独立で着実に稼ぐ参入ルートと収益シミュレーション
独立を考えたとき、気になるのが「最初の収入はどれくらいになるのか」という点です。
解体業は規模の違いによって仕事の取り方が変わり、単価にも幅があります。
この章では、無理のない範囲で収入を安定させる方法を一緒に見ていきましょう。
部分解体・内装解体・手壊しで稼ぐ
独立直後は、大規模案件より小さな現場から実績を積むのが現実的です。
最初に取りやすい仕事として、内装スケルトンや個人宅の一部解体があります。
部分解体・内装解体の相場イメージは以下のようになります。
・手壊し解体:4~18万円/坪
・20㎡(6~7坪)の店舗内装:10〜20万円前後
・個人宅の一部解体(壁・床など):数万円〜10万円台
次に、生活を成り立たせるための月の収益イメージを見てみます。
・20㎡の内装スケルトン工事:15万円/件
・月4件受注:60万円の売上
・車両・保険・通信費などのランニングコスト:5〜10万円前後
この方法であれば、手元に残るお金は約50万円前後になり、一人親方として生活資金を確保しつつ技術を磨くことが可能です。
リフォーム会社・工務店・協力会社ルート+重機が入れない現場を武器にする
独立直後は、元請けではなく協力会社として現場に入るのが一般的です。
案件獲得ルートは、仕事の取り方としては、次のようなルートがあります。
・地元の工務店・リフォーム会社へ解体の営業をする
・協力会社募集サイトから小規模解体を受注する
・重機が入れない現場(狭小地・マンション内)を得意分野にする
特に重機が入れない狭小地や手壊しを必要とする現場は、大手企業が避けがちなため、高単価な案件を積み重ねられます。得意分野を明確にして、安定的な収入基盤を築きましょう。
公共インフラの解体・撤去案件をもらう
売上が安定してきた段階では、建設業許可の取得や重機の導入を検討し、より大きな案件へ進む選択肢も出てきます。
国土交通省のデータでも道路橋や上下水道など建設後50年以上経過するインフラが急増していることが示されています。
重機を使う現場・小規模な外部工事に慣れてきたら、建設業許可を取得、公共インフラの撤去案件に進む流れが現実的なステップです。段階的に進めるほうがリスクを抑えられ、将来の選択肢も広がります。
まとめ:時勢に乗って解体業で独立しよう
解体業は空き家の増加やインフラの老朽化で、長期的に需要が続く分野です。
独立の準備には手続きや資金計画など考えることが多くありますが、小さな現場から始めて経験を積み、段階的に仕事の幅を広げる方法なら無理がありません。
社会的なニーズも追い風になりますので、ご自身のペースで進めながら、必要な許可や資格を整えていきましょう。
最初の一歩を踏み出せれば、あなたの働き方をつくりやすくなります。
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