2025.12.24 起業ガイド

洋服販売で起業する全手順|売れないを防ぐブランド設計と仕入れ

洋服販売で起業する全手順|売れないを防ぐブランド設計と仕入れ

「自分の好きな洋服を販売して生きていきたい」「いつか自分のブランドを持ちたい」。

そう願って起業する人は後を絶ちませんが、残念ながら多くのアパレル事業が数年以内に撤退を余儀なくされています。

その原因のほとんどは、「センスの良さ」ではなく「ビジネスモデルの設計ミス」にあります。

今回は、在庫リスクに怯えることなく利益を出し続けるための具体的なステップを、資金調達から集客まで一気通貫で解説します。

アパレル起業は在庫との戦い!失敗しないための3つの鉄則

洋服販売で起業する際、最も恐れるべきは「売れ残った在庫」です。

洋服は食品のように腐りはしませんが、トレンドの移り変わりが激しく、季節(シーズン)が過ぎれば商品価値は著しく低下します。

一度仕入れた商品が現金化されず、倉庫に積み上がっていく状況は、経営における「死」を意味します。

多くの初心者は、売れるという根拠のない自信だけで大量に発注し、広告費も回収できずに撤退していきます。

成功する起業家は、この在庫リスクを極限まで減らすための「仕組み」を最初に作ります。

まずは、アパレルビジネスの厳しさと、それを乗り越えるための鉄則を理解することから始めましょう。

なぜ多くのアパレルブランドが2年以内に消えるのか

アパレルブランドの生存率は決して高くありません。

その最大の理由は「キャッシュフロー(現金の流れ)」の悪化です。

洋服販売は、売上が入金される前に、仕入れ代金や製造費を支払うケースがほとんどです。

例えば、秋物を売るためには夏に仕入れ代金を支払う必要があります。

もし商品が予想通りに売れなければ、次のシーズンの仕入れ資金がなくなり、ビジネスが止まってしまいます。

また、個人ブランドの場合、集客をInstagramなどのSNSに依存しがちですが、アルゴリズムの変更などで突然露出が減り、売上が激減するリスクもあります。

資金管理と集客の分散は、ブランドを長く続けるための生命線です。

店舗かネットか?初期費用とリスクを比較

起業のスタイルとして「実店舗」を持つか、「ネットショップ(EC)」のみで始めるかは最初の大きな決断です。

以下の比較表を見てください。実店舗は信頼性が高く、試着による購入率の高さが魅力ですが、初期費用と固定費が重くのしかかります。

一方、ネットショップは低コストで始められますが、試着できないハードルや、送料負担の問題があります。

比較項目 実店舗(路面店など) ネットショップ(EC)
初期費用目安 300万〜1,000万円 0円〜30万円
毎月の固定費 家賃・光熱費・人件費(高) システム利用料(低)
集客エリア 店舗周辺(商圏狭い) 全国・海外(商圏広い)
メリット 世界観を体現・接客力 24時間営業・低リスク
デメリット 撤退コストが高い 価格競争・送料負担

初心者がリスクを抑えて起業するなら、まずはネットショップからスタートし、POPUPストア(期間限定店舗)などでリアルな接点を持ち、実績を作ってから実店舗を検討するのが最も安全なルートです。

いきなり店舗を構えるのは、経営のプロでない限りおすすめしません。

完全ロードマップ|個人が洋服販売を始める5つのステップ

洋服販売の全体像を把握するために、起業までの流れを5つのステップに分解しました。

多くの人がいきなり商品を仕入れようとしますが、それは間違いです。まずは「誰に何を売るか」というコンセプト設計が先決です。

コンセプトが曖昧なまま商品を集めても、統一感のない店になり、ファンがつきません。

また、必要な届出や許可を忘れると、法的なトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

ここでは、準備段階から販売開始までにやるべきことを順序立てて解説します。

コンセプト設計:誰に何を届けるブランドなのか

コンセプトはブランドの核となる部分です。

「20代の女性向け」といった大雑把なターゲット設定では、今の時代、誰にも刺さりません。

「都会で働く30代女性が、週末のカフェでリラックスするための服」のように、具体的なシーンやライフスタイルまで落とし込みましょう。

コンセプトが決まれば、ブランド名やロゴデザイン、価格帯、そして仕入れるべき商品のテイストが自然と決まります。

逆にここがブレていると、高い商品を仕入れてしまったり、安っぽいロゴを作ってしまったりと、チグハグな経営になります。

あなたのブランドが提供する価値を一言で表せるようになるまで、徹底的に考え抜いてください。

資金調達と開業届・古物商許可の手続き

ビジネスとして洋服を販売するには、いくつかの手続きが必要です。

まず、管轄の税務署に「開業届」を提出します。

これにより屋号での銀行口座開設が可能になります。

次に、資金計画です。自己資金だけで賄えるのが理想ですが、商品の仕入れにはまとまったお金が必要です。

必要に応じて日本政策金融公庫などの創業融資を検討しましょう。

また、古着(ユーズド)を扱う場合や、アンティーク商品を販売する場合は、「古物商許可証」を取得しなければなりません。

無許可で中古品を販売すると法律違反になります。

新品のみを扱う場合は不要ですが、将来的に取り扱う可能性があるなら取得しておくと安心です。

仕入れかオリジナル作成か?あなたに合う商品調達ルート

「商品はどこから持ってくるの?」これは起業前の人が抱く最大の疑問でしょう。

大きく分けて、既存の商品を買い付けて売る「セレクトショップ(仕入れ)型」と、自分でデザインして作る「オリジナルブランド型」の2パターンがあります。

どちらが良いかは、あなたのスキルや資金力によります。

セレクト型は商品数が確保しやすく始めやすいですが、他店と商品が被る可能性があります。

オリジナル型は独自性を出せますが、製造ロット(最低発注数)の壁があり、在庫リスクが高まります。

それぞれの特徴を知り、自分のブランドコンセプトに最適な調達方法を選びましょう。

セレクトショップ型:卸サイトや海外買い付けのコツ

商品を仕入れる方法は主に3つあります。

1つ目は「ネット卸サイト(NETSEAなど)」の利用です。

審査を通れば誰でも卸価格で購入できますが、競合も多いため価格競争になりがちです。

2つ目は「メーカーや問屋との直接取引」です。展示会に行ったり、直接交渉したりして取引口座を開きます。信頼関係が必要ですが、条件が良くなることもあります。

3つ目は「海外買い付け」です。韓国の東大門や中国の広州、あるいは欧米の古着倉庫などへ行き、直接商品をピックアップします。

独自のセンスを発揮でき、利益率も高く設定しやすいのが魅力ですが、渡航費や関税、言語の壁といったハードルがあります。

オリジナルブランド型:小ロットOEMとハンドメイド

自分だけの服を作りたい場合、工場に製造を依頼する「OEM」を利用します。

以前は数百着単位でないと作れませんでしたが、最近は小ロット(10着〜50着程度)から対応してくれる工場や、個人向けのクラウドソーシングサービスが増えています。

生地選びからタグのデザインまでこだわれる反面、原価は高くなりがちです。

また、自分でミシンを使って縫製する「ハンドメイド」も一つの手段です。

生産数は限られますが、作り手の顔が見える安心感や一点物としての価値を訴求できます。

まずはTシャツやトートバッグなど、型が決まっていてプリントだけで差別化できるアイテムから始めるのが、リスクを抑えるコツです。

作っても売れない時代に勝つ!SNS集客とファン化の仕組み

「良い服を作れば(仕入れれば)売れる」という考えは捨ててください。

どんなに素晴らしい服も、お客様に見つけてもらわなければ存在しないのと同じです。

Amazonや楽天などの巨大モールに出店する方法もありますが、手数料が高く、価格競争に巻き込まれます。

個人ブランドが生き残る道は、BASEやShopifyなどで自社サイト(本店)を作り、SNSで集客してファンになってもらう「D2C(Direct to Consumer)」スタイルです。

ここでは、広告費をかけずにSNSを活用して、濃いファンを獲得し、継続的に購入してもらうためのマーケティング戦略を解説します。

インスタグラムで世界観を作りBASE/Shopifyへ誘導する方法

アパレル販売においてInstagramは最強のツールです。

しかし、単に商品の置き画を投稿するだけでは不十分です。

ユーザーは「その服を着た時の自分」をイメージしたいのです。

着用動画(リール)で生地の動きやサイズ感を見せたり、ストーリーズで着回しコーデを提案したりすることで、購買意欲を高めます。

プロフィール欄には必ずショップのURLを貼り、投稿内のショッピングタグ機能を使ってスムーズに購入画面へ誘導しましょう。

また、「中の人」の想いやライフスタイルを発信することで親近感を抱かせ、「この人から買いたい」と思わせる「人検索」の需要を取り込むことも重要です。

在庫リスクを減らす受注生産と予約販売のテクニック

在庫リスクを最小限にする究極の方法が「受注生産(オーダーメイド)」と「予約販売」です。

商品のサンプルだけを作り、写真を撮影してSNSやショップに掲載します。

そして「〇月〇日まで予約受付中」として注文を取り、注文が入った分だけを工場に発注したり、買い付けたりします。

これなら売れ残る心配がありません。

ただし、お客様を待たせることになるため、「予約特典」を付けたり、「今しか手に入らない限定感」を演出したりする工夫が必要です。

この手法をうまく組み合わせることで、資金繰りを安定させながら、徐々にブランドの規模を拡大していくことができます。

まとめ:小さなブランドを育てて、一生モノの仕事にしよう

洋服販売での起業は、地道なリサーチや泥臭い交渉、日々の発送作業など、やるべきことは山積みです。

しかし、自分が選んだ服、あるいは自分が作った服をお客様が身につけ、喜んでくれる瞬間は何にも代えがたい喜びがあります。

正しい知識と戦略を持って挑めば、個人でも十分に利益を出し、長く愛されるブランドを作ることは可能です。

まずは小さく始めて、走りながら学び、あなたのブランドを育てていってください。

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