2026.07.20 起業ガイド
社会福祉法人の設立要件とは?資産・役員・定款の基準と認可までの流れ
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「社会福祉法人の設立要件を調べ始めたけれど、資産の条件や役員の人数など、決まりが多すぎて何から手をつければいいかわからない」
社会福祉法人は、特別養護老人ホームや保育所などの社会福祉事業を、長く安定して運営するための法人です。そのため、NPO法人や株式会社と比べて、設立の要件が細かく決められています。ただし、要件の全体像を押さえておけば、準備の順番に迷うことは大きく減ります。
この記事では、社会福祉法人の設立要件(資産・役員・定款)、所轄庁と認可までの流れと期間、NPO法人との違い、設立後に求められる運営のルールを、社会福祉法や国の審査基準をもとに整理して解説します。
社会福祉法人とは?設立を検討する前に知っておきたいこと
社会福祉事業を継続して運営するための法人
社会福祉法人は、社会福祉法にもとづいて設立される、社会福祉事業を行うことを目的とした法人です。
社会福祉事業には、特別養護老人ホームや障害者支援施設などの「第一種社会福祉事業」と、保育所やデイサービス、訪問介護などの「第二種社会福祉事業」があります。
第一種社会福祉事業は、利用者への影響が大きいことから、経営できるのは原則として国や地方公共団体、社会福祉法人に限られています。特別養護老人ホームなどの施設を運営したい場合は、社会福祉法人の設立が前提になることが多いです。
NPO法人・一般社団法人・株式会社との違い
| 社会福祉法人 | NPO法人 | 株式会社・合同会社 | |
|---|---|---|---|
| 設立の方法 | 所轄庁の認可 | 所轄庁の認証 | 登記のみ |
| 資産の要件 | あり(施設の不動産の所有、または1億円以上の基本財産など) | なし | なし(資本金1円から) |
| 役員の要件 | 理事6人以上、監事2人以上、評議員7人以上 | 理事3人以上、監事1人以上 | 取締役1人から |
| 第一種社会福祉事業の経営 | できる | 原則できない | 原則できない |
| 法人税 | 収益事業以外は非課税 | 収益事業以外は非課税 | すべての所得に課税 |
デイサービスや訪問介護などの第二種社会福祉事業だけを小さく始める場合は、NPO法人や株式会社で運営し、事業が広がった段階で法人の形を見直すという選択肢もあります。どんな事業を、どのくらいの規模で、どのくらいの期間続けるのかを整理してから、法人の形を選びましょう。
社会福祉法人の設立要件の全体像
社会福祉法人の設立要件は、大きく分けて次の4つです。
- 資産:事業に必要な資産(施設の不動産や基本財産)を持っていること
- 役員:理事・監事・評議員を、決められた人数と条件で置くこと
- 定款:法律で決められた事項を定款に書くこと
- 事業:社会福祉事業を、長く安定して続けられる計画があること
具体的な基準は、国の通知「社会福祉法人の認可について」で示された審査基準をもとに、所轄庁がそれぞれ審査基準を定めています。同じ要件でも、所轄庁によって運用が異なる部分があるため、設立を考えたら早めに所轄庁の審査基準と手引きを確認しましょう。
所轄庁はどこになるか
社会福祉法人の設立を認可する「所轄庁」は、主たる事務所の場所と、事業を行う区域によって決まります。
| 事業を行う区域 | 所轄庁 |
|---|---|
| 1つの市の区域内だけで事業を行う | その市の市長(町村の場合は都道府県知事) |
| 1つの都道府県内の、複数の市町村で事業を行う | 都道府県知事 |
| 2つ以上の都道府県にまたがり、1つの地方厚生局の管轄内で事業を行う | 主たる事務所がある都道府県の知事(一定の条件を満たす指定都市は市長) |
| 2つ以上の地方厚生局の管轄にまたがって事業を行う | 厚生労働大臣 |
細かな区分は事業の内容によって変わるため、最初に、主たる事務所を置く予定の市や都道府県の福祉の担当窓口に相談しましょう。
資産要件:施設の不動産と基本財産
資産の要件は、社会福祉施設を経営するかどうかで大きく変わります。
施設を経営する法人:施設の土地と建物を基本財産として持つ
特別養護老人ホームや保育所などの施設を経営する法人は、原則として、施設に使う土地と建物を法人が自分で所有し、基本財産にしなければなりません。施設を運営している途中で立ち退きを求められ、利用者の生活が脅かされることを防ぐためです。
例外として、すべての施設の不動産を国や地方公共団体から借りている場合は、1,000万円以上の現金や預金などを基本財産として持てばよい、とされています。都市部など土地の確保が難しい地域では、一定の条件のもとで、民間からの賃借を認めている所轄庁もあります。
施設を経営しない法人:原則1億円以上の基本財産
施設を経営せず、訪問介護などの在宅サービスなどを中心に行う法人は、原則として1億円以上の資産を基本財産として持つことが求められます。ただし、行政からの委託費などで事業を続けるための収入が安定して見込める場合などは、所轄庁が認める額まで引き下げられることがあります。
「社会福祉法人の設立には1億円が必要」と言われることがありますが、これは主に施設を経営しない法人の基準です。施設を経営する法人は、1億円の基本財産ではなく、施設の不動産の所有が基本になります。
運転資金も自己資金で用意する
基本財産とは別に、事業を始めた直後の運営に必要な運転資金を、現金や預金で用意しておく必要があります。必要な額は所轄庁によって違い、たとえば介護保険の事業を行う法人では、年間事業費の12分の3以上を自己資金で持つことを求める所轄庁もあります。この自己資金は、借入金や募金でまかなうことは認められないのが一般的です。
資金の調達方法
施設の建設費などの調達は、設立に関わる人からの寄附、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の福祉施設向けの融資、国や自治体の施設整備の補助金を組み合わせるのが一般的です。寄附を受ける場合は、見返りなどの特別な条件が付いていないことも求められます。
役員要件:理事・監事・評議員の人数と条件
社会福祉法人の役員の要件は、社会福祉法で細かく決められています。特に、親族などの特別な関係にある人の制限は、理事と評議員で内容が違うため、正確に押さえておきましょう。
| 人数 | 主な条件 | |
|---|---|---|
| 理事 | 6人以上 | 社会福祉事業の経営に識見のある人、地域の福祉の実情に詳しい人、施設の管理者(施設を経営する場合)を含める。親族などは3人以内、かつ理事の総数の3分の1以内 |
| 監事 | 2人以上 | 社会福祉事業に識見のある人と、財務管理に識見のある人を含める。理事・評議員・職員との兼務はできず、役員の親族などはなれない |
| 評議員 | 理事の人数を超える数(7人以上) | 役員や職員との兼務はできない。ほかの評議員や役員の親族などはなれない |
理事:6人以上で、親族などは3分の1以内
理事は6人以上置く必要があり、社会福祉事業の経営に識見のある人、地域の福祉の実情に詳しい人、施設を経営する場合はその施設の管理者を含めなければなりません。
また、各理事について、配偶者や三親等以内の親族などの特別な関係にある人が、3人を超えて、または理事の総数の3分の1を超えて含まれてはならないと決められています。家族だけで運営するような体制にならないようにするためのルールです。
監事:2人以上で、理事などからの独立性が必要
監事は2人以上置き、社会福祉事業に識見のある人と、財務管理に識見のある人を含める必要があります。税理士や公認会計士、社会福祉士などが就任することが多いです。
監事は理事や評議員、法人の職員を兼ねることができず、役員の親族などがなることもできません。法人の運営を客観的にチェックする立場だからです。
評議員:理事より多く、親族などは就任できない
評議員は、理事の人数を超える数を置く必要があります。理事が6人なら、評議員は7人以上です。評議員会は、理事や監事の選任・解任、計算書類の承認、定款の変更など、法人の重要な事項を決める機関です。2016年の社会福祉法の改正で、すべての社会福祉法人に置くことが義務づけられ、議決機関としての役割が明確になりました。
評議員は、役員や職員を兼ねることができません。さらに、ほかの評議員や役員の配偶者、三親等以内の親族などは、評議員になれません。
理事の制限(3分の1以内)よりも厳しいため、注意が必要です。地域の福祉関係者や専門職など、法人から独立した立場の人を、早めに探しておきましょう。
定款の作成と設立準備
定款に書かなければならない事項
定款には、目的、名称、行う社会福祉事業の種類、事務所の所在地、評議員と評議員会、役員の定数と選任・解任、資産と会計、公益事業や収益事業を行う場合はその種類、解散、定款の変更、公告の方法などを書く必要があります。
特に、解散したときの残りの財産の帰属先は、ほかの社会福祉法人などから選ぶよう定める必要があります。厚生労働省や所轄庁が公開しているモデル定款をもとに、自分の法人に合わせて調整するのが確実です。
設立準備会と所轄庁への事前相談
設立の準備は、設立者(発起人)が中心となって、基本財産の確保、役員と評議員の候補への依頼、定款案の作成、事業計画と収支予算の作成を並行して進めます。
準備の途中で、所轄庁への事前相談を何度か行い、書類の精度を高めていくのが一般的です。資産や役員の要件に問題がないかを早めに確認してもらうことで、正式な申請の後に差し戻されるリスクを下げられます。施設を整備する場合は、自治体の施設整備の計画や補助金の募集の時期とも合わせる必要があるため、さらに早い段階からの相談が欠かせません。
なお、社会福祉法人の根本規則は、以前は「寄附行為」と呼ばれていましたが、現在は「定款」です。古い資料を参考にするときは、法改正が反映されているかを確認しましょう。
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認可申請から設立までの流れと期間
認可申請に必要な主な書類
認可の申請には、主に次のような書類が必要です。様式は所轄庁ごとに決められているため、必ず最新のものを確認しましょう。
- 設立認可申請書と定款
- 財産目録と、財産の権利を証明する書類(不動産の登記事項証明書、預金の残高証明書など)
- 寄附の申込書など、財産の確保を証明する書類
- 設立後の事業計画書と収支予算書(2年分などが求められることが多い)
- 役員・評議員の名簿、就任承諾書、履歴書など
- 設立者の会議の議事録
不動産の名義の変更や抵当権の整理などには時間がかかることがあるため、早めに着手しましょう。
審査から認可までの期間
正式な申請の後は、書類の審査に加えて、施設の予定地の確認などが行われ、認可まで数か月かかるのが一般的です。事前相談の期間を含めると、準備を始めてから認可を受けるまで、1年前後かかることも珍しくありません。施設を新しく建てる場合は、建設の期間も含めて、さらに長い期間が必要です。
認可後の登記と各種届出
認可を受けたら、法務局で設立の登記を行うことで、法人が正式に成立します。登記が終わったら、所轄庁への届出、税務署や都道府県税事務所への届出、社会保険・労働保険の手続きなどを進めます。
設立後に求められる運営のルール
社会福祉法人は、設立後も公益性の高い法人として、さまざまなルールを守る必要があります。設立を判断するときは、こうした運営の負担と、税制の優遇などのメリットを比べて考えましょう。
税制の優遇
社会福祉法人は、収益事業以外の事業から生じる所得には法人税がかかりません。また、社会福祉法人への寄附には、寄附した人の側で所得控除などの税制上の優遇が受けられます。固定資産税なども、自治体によって減免の措置があります。
一方で、収益事業から生じる所得には法人税がかかるため、社会福祉事業と収益事業を分けて経理する必要があります。
会計基準と情報公開
社会福祉法人は、「社会福祉法人会計基準」という専用の会計のルールに沿って、計算書類(貸借対照表、資金収支計算書、事業活動計算書など)を作成する必要があります。毎年度、計算書類や現況報告書を所轄庁に届け出るとともに、定款や計算書類、役員の報酬の基準などをインターネットで公表することが義務づけられています。
事業の規模が一定以上の法人には会計監査人の設置が義務づけられているほか、内部に一定以上の余裕のある財産(社会福祉充実残額)がある場合は、地域の福祉に役立てる「社会福祉充実計画」をつくる必要もあります。
所轄庁の指導監査
所轄庁は、社会福祉法人に対して定期的に指導監査を行います。評議員会や理事会の開催と議事録の整備、役員の親族などの制限が守られているか、基本財産が適切に管理されているかなどが確認されます。役員や評議員が交代したときは、親族などの制限を満たしているかを、その都度確認しておきましょう。
社会福祉法人の設立でよくある質問
Q. 社会福祉法人の設立には、必ず1億円が必要ですか?
いいえ。1億円以上の基本財産は、主に施設を経営しない法人に求められる基準です。施設を経営する法人は、施設の土地と建物を自分で所有し、基本財産にすることが基本です。具体的な基準は所轄庁によって違うため、事前に確認しましょう。
Q. 理事や評議員に家族を選べますか?
理事は、親族などが3人以内、かつ理事の総数の3分の1以内であれば選べます。一方、評議員には、ほかの評議員や役員の親族などはなれません。監事にも役員の親族などはなれません。
Q. 設立までにどのくらいの期間がかかりますか?
事前相談から認可までで1年前後かかることが多く、施設を新しく建てる場合は、さらに長くなります。早い段階から所轄庁に相談し、スケジュールを確認しておきましょう。
Q. NPO法人と社会福祉法人は、どちらを選べばよいですか?
特別養護老人ホームなどの第一種社会福祉事業を行う場合は、社会福祉法人が前提になることが多いです。デイサービスなどの第二種社会福祉事業を小さく始める場合は、設立の負担が軽いNPO法人や株式会社も選択肢になります。
まとめ:社会福祉法人の設立要件は、資産・役員・定款の3つを早めに確認しよう
社会福祉法人の設立要件の中心は、施設の不動産の所有または原則1億円以上の基本財産という資産の要件、理事6人以上・監事2人以上・評議員7人以上という役員の要件、法律で決められた事項を書いた定款の3つです。特に、理事と評議員では親族などの制限の内容が違うため、役員の人選は早めに進めましょう。
具体的な基準は所轄庁によって違うため、設立を考えたら、まずは所轄庁の審査基準を確認し、事前相談を重ねながら準備を進めることが大切です。
※2026年10月時点の情報です。法律や通知、所轄庁の審査基準は変更されることがあるため、最新の内容は所轄庁や専門家にご確認ください。
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