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2026.08.15 起業ガイド

障害者が起業するには?使える助成金・融資と、年金への影響を制度から解説【2026年版】

障害者が起業するには?使える助成金・融資と、年金への影響を制度から解説【2026年版】

「障害者 起業 助成金」で検索してこのページにたどり着いた方に、最初にお伝えしなければならないことがあります。

障害のある方が自分で事業を始めるとき、その本人に対して支給される全国共通の「起業助成金」は、原則として存在しません。

厳しい話に聞こえるかもしれません。

ここを最初に理解しておかないと、あるはずのない制度を何ヶ月も探し続けることになります。

実際には、使える制度は確実にあります。

ただしそれは「障害者向け」という入口ではなく、別の入口から入るのです。この記事では、その入口の場所を制度の構造から整理します。

なぜ「障害者向けの起業助成金」が見つからないのか

理由は、日本の障害者雇用政策の建て付けにあります。国の支援は「障害のある人を雇用する事業主」に対して設計されており、支給対象は基本的に事業主側です。

障害者雇用納付金を財源とする各種助成金も、特定求職者雇用開発助成金も、すべてこの構造です。

一方、障害のある方が自ら事業主になる場合、制度上は「一人の創業者」として扱われます。つまり、探すべきは「障害者向け」ではなく「創業者向け」の枠です。ここを切り替えるだけで、選択肢は一気に増えます。

整理すると、資金の入口は次の3つに分かれます。

入口 対象 主な制度
①創業者全般向け あなた自身 日本政策金融公庫の創業融資、小規模事業者持続化補助金、自治体の創業助成金
②障害者を雇う事業主向け あなたが人を雇う段階 特定求職者雇用開発助成金、障害者作業施設設置等助成金など
③福祉サービスの報酬 福祉事業を運営する場合 就労継続支援B型などの介護給付費・訓練等給付費

①まず押さえる:創業者として使える資金ルート

日本政策金融公庫の創業融資

公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方またはおおむね7年以内の方が対象で、融資限度額7,200万円、設備資金は20年以内(据置5年以内)、運転資金は10年以内(据置5年以内)という条件です。女性、35歳未満または55歳以上の方はさらに有利な特別利率Aが適用されます。

ここで重要なのは据置期間です。最長5年、元金の返済を待ってもらえる。体調に波がある方にとって、立ち上げ期に返済が乗らない設計は、金利以上に価値があります。

融資は返済義務がありますが、助成金と違って「後払い」ではなく先にお金が入る点で、実務上は最も現実的な選択肢です。

補助金は「後払い」であることを理解する

小規模事業者持続化補助金などは、対象経費の一部を補助する制度ですが、原則として自分で支払った後に精算払いされます。

手元資金がゼロの状態では使えません。補助金は「資金調達手段」ではなく「経費の一部戻し」だと考えてください。

自治体の創業支援を先に使い切る

産業競争力強化法に基づく「創業支援等事業計画」は、2026年6月25日現在で1,414件(1,580市区町村)が認定されています。

無料または低額の創業セミナー・個別相談があり、要件を満たすと「特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書」が交付されます。

この証明書により、会社設立時の登録免許税の軽減、創業関連保証の特例(創業6か月前からの利用)などが受けられます。

ここは無料です。

有料の相談に進む前に、必ず使ってください。内容は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村へご確認を。

②人を雇う段階で使える助成金

あなたが事業主になり、障害のある方を雇用する側に回ったとき、はじめて「障害者雇用」の助成金が視野に入ります。

代表的なものは、特に就職が困難な方を継続雇用する事業主への特定求職者雇用開発助成金、試行雇用を支援する障害者トライアル雇用助成金、そして高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が実施する障害者作業施設設置等助成金などです。

作業施設設置等助成金は、雇用する障害者が作業しやすいよう施設を設置・整備する費用の一部を助成するもので、支給額の上限は1人あたり数百万円規模とされています。ただし、支給要件・上限額・申請期限は毎年度改定されるため、必ずJEEDの公式サイトで最新の支給要領をご確認ください。

ここでの実務的なポイントは「順番」です。助成金があるから雇うのではなく、事業に必要だから雇い、その費用の一部を助成金で軽くする。この順序を逆にすると、助成金が切れた時点で人件費だけが残ります。

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起業すると障害年金は止まるのか

相談で最も多く、そして最も誤解が多い論点です。結論を先に書きます。

保険料の納付要件を満たして受給している障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)には、原則として所得による支給停止はありません。働いて収入を得ても、それだけで止まることはない。ここは安心してください。

ただし例外があります。20歳前に初診日がある傷病による障害基礎年金には所得制限があります。扶養親族がいない場合、前年所得が約360万円を超えると年金額の2分の1相当が、約462万円を超えると全額が支給停止となります(金額は扶養親族の人数等で変動し、制度改正もあり得ます)。

ここで注意すべきは、判定に使われるのが売上ではなく「所得」だという点です。個人事業主の所得は、売上から必要経費を差し引いた後の金額です。年商500万円でも経費が200万円なら所得は300万円。この構造を知らずに「売上が増えると年金が止まる」と思い込み、意図的に売上を抑えてしまう方がいます。これは機会損失です。

また、障害年金の等級は「働けているかどうか」だけで機械的に判断されるものではありませんが、就労状況が診断書の記載を通じて更新時の判断材料になる場合はあります。不安がある方は、事業を始める前に年金事務所または障害年金に詳しい社会保険労務士へ、自分のケースとして確認してください。一般論のネット記事で判断すべき領域ではありません。

選択肢としての「福祉事業での起業」

就労継続支援B型やA型、生活介護といった障害福祉サービスを自ら運営する道もあります。障害当事者や家族の視点を持つ方が運営に入ることには、明確な意味があります。

ただし現実的な条件は厳しめです。法人格が必須(個人事業主では指定を受けられません)、人員基準・設備基準・運営基準を満たしたうえで自治体の指定を受ける必要があり、開業資金はB型で600万〜800万円以上、A型では900万円程度が目安とされています。

加えて、指定申請から入金までのタイムラグがあるため、数ヶ月分の運転資金が別途必要です。

収入は利用者数と加算に連動する公定価格制で、価格を自分で決められません。

「福祉なら安定している」という認識は、後述する介護業界の倒産動向を見る限り、もはや通用しません。参入するなら、利用者確保の見込みを事前に立てられるかが分水嶺です。

よくある質問

Q. 障害者手帳があると融資で不利になりますか?

公庫の融資審査は事業計画の妥当性、自己資金、返済能力で判断されます。手帳の有無そのものが審査項目ではありません。むしろ、体調の波をどう事業設計に織り込んでいるか(受注量の上限設定、代替体制など)を計画書で説明できると、計画の解像度が高いと評価されます。

Q. 就労移行支援を利用しながら起業準備はできますか?

就労移行支援は原則として雇用就労を目指すサービスであり、自営を目的とした利用の可否は自治体・事業所の判断が分かれます。必ず利用中の事業所と市区町村の障害福祉担当窓口に確認してください。

Q. どこに相談すればいいですか?

資金は日本政策金融公庫の支店、事業計画は自治体の創業支援窓口や商工会議所、年金は年金事務所、福祉サービスの利用は相談支援専門員。窓口を一つに絞ろうとせず、論点ごとに分けて相談するのが最短です。

まとめ:探す言葉を変えれば、制度は見つかる

この記事の要点は3つです。①「障害者向け起業助成金」ではなく「創業者向け制度」を探す。②助成金は雇用する側になってから。まずは公庫の融資と自治体の無料支援。③障害年金は原則止まらない。ただし20歳前傷病の障害基礎年金は所得制限があるため、必ず個別確認する。

制度は、知っている人だけが使えます。そして制度探しは、事業の中身を決める作業の代わりにはなりません。「誰の、どんな困りごとを、いくらで解決するのか」——これが決まっていれば、公庫の面談でも自治体の窓口でも、話は前に進みます。

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