LINEで無料の起業相談

2026.08.15 起業ガイド

訪問介護事業所を開業するには?指定基準・開業資金と倒産91件の教訓

訪問介護事業所を開業するには?指定基準・開業資金と倒産91件の教訓


「大きな施設は無理でも、訪問介護なら少人数で独立できるのではないか」。

訪問介護は、利用者の自宅を訪問してサービスを提供するため、デイサービスや特別養護老人ホームのような大規模設備を必要とせず、介護事業のなかでも初期投資を最も抑えられる業態です。

事務スペースと相談スペースが確保できれば、条件次第で自宅の一角からでも始められます。

しかし、一方で訪問介護は介護業界で最も倒産が多い分野でもあります。

東京商工リサーチの調査によると、2025年の介護事業者の倒産176件のうち、訪問介護は91件と過半数を占めました。倒産理由の82.4%が売上不振、資本金500万円未満が80.2%、従業員10人未満が86.8%です。

参入しやすい業態だからこそ小規模事業者が集中し、人材が確保できず、資金が尽きる。

「設備がいらないから安く始められる」という理由だけで開業すると、この統計の一件になりかねません。

本記事では、トップマーケターおよび介護事業経営支援の視点から、訪問介護の指定基準・リアルな開業資金と運転資金・報酬入金のタイムラグ・人材確保の実務・倒産事業者と続く事業所を分ける経営判断までを徹底解説します。

リスクを抑えて確実に収益化する事業をつくるためのロードマップとしてご活用ください。

訪問介護の指定を受けるための3つの条件

訪問介護事業を営むには、都道府県または市区町村から指定居宅サービス事業者としての指定を受ける必要があります。

要件は「法人格」「人員基準」「設備・運営基準」の3つです。

1. 法人格は必須(個人事業では不可)

指定申請は法人でなければ行えません。

株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人などが選択肢になり、定款の事業目的に「介護保険法に基づく居宅サービス事業」を明記しておく必要があります。

目的の記載漏れで申請が止まるケースは非常に多いので、設立段階で確認してください。

2. 人員基準|訪問介護員は常勤換算2.5人以上

訪問介護事業所ごとに、訪問介護員等を常勤換算で2.5人以上配置しなければなりません。

常勤換算とは、職員全員の週の総労働時間を、その事業所で定めた常勤職員の所定労働時間で割った数値です。

週40時間が常勤の事業所なら、合計週100時間分の稼働があれば2.5人となります。

さらに、サービス提供責任者(サ責)の配置が必要です。利用者の数が40人またはその端数を増すごとに1人以上を、常勤の訪問介護員等のうちから選任します。

サ責は原則として介護福祉士等の資格が求められ、常勤専従が基本です。管理者は常勤専従が原則ですが、支障がない場合は同一事業所内の他職種との兼務が認められます。

この人員基準を満たし続けられるかどうかが、訪問介護事業の生命線です。開業時に2.5人を揃えても、1人が退職した瞬間に基準を割り込み、報酬減算や指定取消のリスクが生じます。

介護人材の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る水準が続いており、募集をかけてもすぐには集まりません。開業前から採用ルートを複数確保しておくことが必須です。

3. 設備・運営基準

事業運営に必要な広さの事務室、利用者や家族が相談できるプライバシーの確保された相談スペース、感染症予防に必要な設備(手指消毒設備等)、鍵付き書庫などが求められます。

細かな要件は自治体ごとに運用が異なるため、物件契約前に必ず事前相談を行ってください。

開業資金|「設備が安い」の落とし穴

訪問介護の初期投資が小さいのは事実です。しかし、開業資金の大半を占めるのは設備費ではありません。

費目 金額の目安 備考
法人設立費用 6万〜25万円 合同会社か株式会社かで差
指定申請手数料・書類作成 3万〜30万円 行政書士に委託する場合を含む
事務所賃借(敷金・礼金等) 30万〜100万円 自宅開業なら大幅圧縮も可
備品・什器・介護用品 30万〜80万円 PC、複合機、書庫、消毒設備等
介護ソフト・通信環境 10万〜30万円 請求業務に必須
求人広告費 30万〜100万円 想定以上にかかる項目
運転資金(最低3〜6か月) 300万〜700万円 人件費・家賃が中心

合計すると、最低でも500万円以上、自己資金と公的融資を合わせて1,000万円を準備できれば当面の運営は安心という水準になります。

設備が要らない業態でありながらこの金額になる理由は、次に説明する資金繰りの構造にあります。

介護報酬は「翌々月末」にしか入らない

訪問介護の収入源は、利用者が支払う自己負担分(原則1割)と、介護給付費(原則9割)です。

自己負担分はサービス提供月の翌月初めに利用者から支払われますが、給付費の9割はサービス提供月の翌々月末に入金されます。

4月に開所した場合、4月中の入金はゼロ。5月に1割分が入り、9割分が入金されるのは6月末です。

しかも開所直後から利用者が揃うことはなく、ケアマネジャーからの紹介が安定するまで数か月かかります。その間も職員の給与と家賃は毎月支払わなければなりません。

さらに厄介なのが返戻です。請求内容に不備があると差し戻され、入金が1か月遅れます。仮に20万円分の返戻が発生すれば、その月の資金残高に直撃します。

だからこそ運転資金は最低3か月分、できれば6か月分を確保しておくべきなのです。倒産理由の82.4%が売上不振とされていますが、その実態の多くは「売上が立つ前に現金が尽きた」というキャッシュフローの問題です。

まずは起業の全体像を確認しませんか?


起業について学び、次の一歩を考えるイメージ

新しいことを始めたいと思っても、最初の一歩が曖昧なままだと、情報を集めるだけで時間が過ぎてしまいます。

大切なのは、今の経験やアイデアを整理し、自分が何をしたいのかを明確にすること。

ソーシャルスタートアップアカデミーでは、起業アイデアの整理から、事業づくり、集客、価格設定、数字の管理まで、起業に必要な内容を体系的に学べます。


何から始めればよいか分からない方も、
まずは起業の全体像を確認してみてください。


起業の全体像を確認する ▶

学習内容・サポート内容・料金を確認できます

開業までのスケジュール|逆算で組む6か月

指定申請は多くの自治体で月1回の受付、指定日は翌月または翌々月1日付という運用です。書類の不備があれば1か月単位で開所が遅れ、その間の家賃と人件費が丸ごと持ち出しになります。

標準的な工程は、まず法人設立に1か月、並行して事業計画の作成と融資申請に1〜2か月。物件の事前相談と契約に1か月、サービス提供責任者を含む人材採用に2〜3か月。

指定申請書類の作成・提出から指定日までに1〜2か月。全体で最低6か月、余裕をみれば8か月を見込んでください。

ここで最も読みにくいのが人材採用です。

サ責の要件を満たす人材は各事業所で取り合いになっており、求人を出してから採用決定まで2〜3か月かかることも珍しくありません。物件を先に契約して採用が間に合わず、空家賃を払い続けるという失敗を避けるため、採用の目処が立ってから物件を確定させる順番を強く推奨します。

倒産する事業所と、続く事業所の分かれ目

1. ケアマネジャーとの関係構築に投資しているか

訪問介護の利用者は、ほぼすべて居宅介護支援事業所のケアマネジャーからの紹介で決まります。

つまり営業対象は利用者本人ではなく、地域のケアマネです。開業前から地域包括支援センターと居宅介護支援事業所を回り、「どんな依頼に対応できるか」を具体的に伝えておく必要があります。

特に強みになるのが、他事業所が断りやすい依頼への対応力です。

早朝・夜間の対応、医療的ケアが必要な利用者、認知症の重い方、短時間の複数回訪問など。断らない事業所には紹介が集中します。

2. 稼働率を管理しているか

訪問介護の収益は、ヘルパーの移動時間をいかに削るかでほぼ決まります。

同じ8時間の勤務でも、移動に3時間かかる組み方と1時間で済む組み方では、算定できるサービス時間がまったく違います。地域を絞り、同一エリア内で訪問を組み立てるシフト設計が、そのまま利益率になります。

3. 人が辞めない体制をつくれているか

従業員10人未満の事業所が倒産の86.8%を占めるという事実は、1人の退職が事業の存続を左右する規模の脆さを示しています。

常勤換算2.5人という基準は、裏を返せば「2.5人を割ったら事業ができない」という意味です。

登録ヘルパーを複数名確保して稼働に厚みを持たせる、シフトの希望を柔軟に受け入れる、事務作業を介護ソフトで削減して負担を減らす。こうした地道な体制づくりが、結果的に最大のリスク管理になります。

事業の組み立て方そのものに不安がある方は、起業の始め方を体系的にまとめた記事で全体像を確認しておくと、優先順位をつけやすくなります。

よくある質問

自宅を事業所にできますか

条件を満たせば可能です。

ただし生活スペースと明確に区分されていること、プライバシーが確保された相談スペースがあること、鍵付きの書庫を設置できることなどが求められます。賃貸物件なら事業所使用が契約上認められているかの確認も必要です。自治体によって判断が分かれるため、必ず事前相談してください。

介護福祉士の資格がなくても開業できますか

経営者自身に資格要件はありません。

ただしサービス提供責任者には資格要件があるため、有資格者を雇用する必要があります。また、介護報酬制度と運営基準を理解していないと、実地指導での指摘や報酬返還につながります。経営に専念する場合でも、制度の基本は経営者自身が把握しておくべきです。

資金調達はどうすればよいですか

日本政策金融公庫の創業融資が代表的な選択肢です。

審査では、利用者獲得の見通しをケアマネへの営業計画とともに示せるか、人員基準を満たす採用計画があるか、報酬入金までのタイムラグを織り込んだ資金繰り表を作成できているかが重視されます。なお融資の可否は個別事情で判断されるため、金融機関や商工会議所など専門機関にご相談ください。

まとめ|設備が要らない事業ほど、資金繰りで決まる

訪問介護は、介護事業のなかで最も少ない設備投資で始められる一方、2025年の倒産176件のうち91件を占めた分野でもあります。

この矛盾を生んでいるのが、参入の容易さと、人材確保・資金繰りの難しさのギャップです。

逆に言えば、対策は明確です。

サービス提供責任者を含む人材を先に押さえる、報酬が翌々月末入金である前提で6か月分の運転資金を確保する、開業前からケアマネへの営業を始める、訪問エリアを絞って稼働率を上げる。この4点を実行できる事業所は、統計の外側にいます。

あなたの経験やアイデアを、事業として形にしませんか?


起業の最初の一歩を考えるイメージ

起業に必要なのは、最初から完璧なアイデアや特別な才能を持っていることではありません。

今の自分に必要な知識を学び、
相談できる相手とつながり、
行動を続けられる環境を持つことが大切です。

Social Startup Academyでは、
アイデア出しから事業づくり、集客、数字の管理まで、
起業に必要な学習内容を確認できます。


自分に合う学びや環境があるか、
まずは料金とサービス内容を確認してみてください。


自分に合う起業環境を確認する ▶

遷移先の記事で学習内容・サポート内容・料金を確認できます

◯関連記事
「起業したいけど何から始めればいいか分からない…」独学で失敗する人の共通点と、確実に成果を出すための”3つの条件”
介護保険外サービス起業の始め方|資格不要で稼ぐアイデアと集客術

Related Posts

ニュース一覧へ戻る