2025.12.11 起業ガイド
一級建築士の独立ガイド-設備設計で年収1,000万円を超える戦略
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設備設計一級建築士として働くなかで、「このまま会社員でいるより、自分の力をもっと発揮できる場があるのでは」と感じる瞬間がありませんか?
業務の幅が広がるほど、自分の判断で仕事を選びたい思いが強くなる。そんなとき、独立という選択が現実味を帯びてくるのではないでしょうか。
設備設計一級建築士は、高度な専門性を武器にしながら働ける資格です。
一方で、必要な準備、独立後の収入の変化など、整理したい情報は多くあります。
この記事では、設備設計一級建築士として独立を検討するときに必要な基本情報をまとめ、年収のイメージや狙うべき市場まで丁寧に整理します。
新しい働き方を考える際の土台として読み進めてみてください。
設備設計一級建築士とは?建築士・建築設備士との違いを整理
建築の専門資格は種類が多く、なかでも「一級建築士」「建築設備士」「設備設計一級建築士」は違いが把握しにくいかもしれません。
この章ではまず、各資格の違いと業務内容を整理していきましょう。
一級建築士ができること
一級建築士は、建築物全体を総合的に扱える国家資格です。
規模にかかわらず建築物の設計や工事監理を行えるため、建築プロジェクトの中心的な存在として位置づけられています。
設計では、意匠設計としてデザインや空間構成に重きを置く場合もあれば、構造や設備との整合性を取りながら、全体像をまとめる役割を担う場面も多いです。
ただし、一級建築士は建築全般の知識を備えていても、設備を専門とする資格ではありません。
この点を押さえておくと、次に紹介する建築設備士との違いが理解しやすくなります。
建築設備士ができること
建築設備士は、空調・換気・給排水衛生・電気など、建物を機能させる設備に特化した専門資格です。
設備面の性能や安全性、省エネ性、建物の利用の快適さを確保するうえで欠かせない存在です。
建築基準法では、延べ面積2,000㎡を超える建築物において、建築設備に関する設計や工事監理を行う際、建築設備士が建築士に意見を述べることが努力義務として定められています。
建築設備士は、建築士の業務に助言をする立場にあたり、自ら構造や意匠を設計する資格ではありません。建築物の「快適さ」や「安全性」を支えるための裏側の仕事に強みがあります。
設備設計一級建築士ができること
設備設計一級建築士は、設備分野の高度な専門性を証明する資格です。建築全体を見渡す視点と、設備の専門性の両方を備えている点が大きな特徴といえます。
建築士法では、3階以上かつ床面積5,000㎡超の特定建築物において設備設計を行う場合、設備設計一級建築士による関与が求められています。建物の安全性や省エネ性能が重視される施設で、業務の中心的な役割を担うことになります。
建築設備士は建築士に助言する立場で、設備設計一級建築士は実際に設備設計を担当する立場という違いも明確です。
建物全体の設計における重要な判断を下す立場に位置づけられています。
設備設計一級建築士は、建築の上流工程に深く関わる能力を備え、専門性と責任の両面で建設業界から高く評価される資格となっています。
設備設計一級建築士として独立するには?実務経験と試験・許可のロードマップ
設備設計一級建築士として独立を目指すとき、まず整理したいのがどんなプロセスが必要なのかという点です。
この章では、資格取得から独立後の手続きまでの流れをまとめました。
資格取得に必要な一級建築士としての実務経験と業務の内容
設備設計一級建築士の登録講習を受けるためには、一級建築士として 5 年以上の設備設計に関する実務経験が必要です。
この「実務経験」の中には、次のような業務が含まれます。
特に、図面の確認や監理の補助といった業務も実務経験として扱われる場合があるため、普段の業務がどこまで該当するのか把握しておくことが重要です。
開業に必要な建築士事務所登録と管理建築士講習
独立後に設計業務や工事監理を受託するためには、建築士事務所として都道府県知事への登録が必要です。
ここが独立に向けた一歩になります。
建築士事務所を登録するには、事務所の業務運営を統括する管理建築士の選任が求められます。管理建築士になる条件は次のとおりです。
管理建築士講習では、契約の進め方、設計・監理の法的ルール、図書の保存義務など、独立後に欠かせない内容を学びます。
講習を修了していないと管理建築士として認められず、建築士事務所登録ができません。
独立のために講習を早めに受けておきましょう。
500万円以上の工事案件を狙うなら建設業許可
設備設計だけでなく、工事を伴う業務にも対応したい場合は、建設業許可の有無が関わってきます。
設計業務そのものは建設業法でいう「工事」に該当しないため設計専業であれば許可は必須ではありません。
例えば、設計意図の説明、専門工事業者との打合せ、指示・助言、施工業者からの質疑対応、完了検査・性能試験への立ち会いなどのみを行う場合に限って、許可は不要とされています。
ただ、「工事も併せて請け負う」業態へ広げる場合は状況が変わります。
このように工事請負契約が発生し、工事費が500万円を超える場合は建設業許可が必要となります。
将来どこまで事業を広げるかを考えておくことが重要です。
設備設計一級建築士として独立するメリット
独立を検討するとき気になるのは「働き方が変わると収入はどれほど違ってくるのか」という部分です。
この章では、東京都の賃金データや建設系職種の情報を踏まえながら、どの程度の変化が見込めるのかを整理していきます。
仕事量に応じた報酬と自分で顧客・案件を選べる自由度
独立後に最も変わるのは、収入の計算方法そのものです。
会社員の場合、経験年数や評価に応じて給与が決まります。
一方、一人親方やフリーランスの技術者は、案件単価と仕事量によって収入が決まります。
東京都の建設労働者賃金調査では、
出典:東京土建一般労働組合「2025年度 賃金・仕事と生活をめぐる討議」
=一人親方は常用の 1.27 倍となっており独立した場合に期待できる単価が分かります。
仕事量を増やせば収入が上がり、逆に調整したい時期は抑えることもできるなど、働き方を自分の裁量で決められる点が独立の大きな特徴です。
一級建築士・建築設備士の平均年収との比較
独立を検討するとき、参考になるのが資格ごとの年収の違いです。
一般的には、一級建築士の平均年収はおおむね 600万円前後、建築設備士については、650万円程度で設備の専門性が評価される場面が多いです。
一方、設備設計一級建築士の求人では、年収 800〜1000 万円クラスの募集が多数確認できます。
これは設備の複雑化が進む中で、設備設計の専門性が欠かせない存在になっているためといえます。
この比較から見えてくるのは、資格に応じて年収の上限が大きく変わるという点です。
設備設計一級建築士は特に、その専門性と現代の建築設備ニーズにより収入が伸びやすい立場です。
独立後の年収はどう変わる?比較シミュレーション
ここでは、実際に独立した場合の年収イメージを具体的に見ていきます。
建設業の一人親方は同じ仕事量でも単価が高く、前述のとおり常用 × 1.27倍の賃金差が生まれています。
例えば先ほどの「企業求人で年収800〜1000 万円クラス」のレベルの技術者が独立した場合
となり、雇用型の一級建築士や建築設備士と比べても2倍ほどの開きが生まれている点も注目です。
そして、案件単価や受注量でも収入が変わるため、ここからさらに伸びる余地があります。
独立後の収入想定範囲はさらに大きく広がり、働き方次第で年収の幅が柔軟に変化していく点も、独立ならではのメリットです。
設備設計一級建築士が独立してこれから狙うべき市場
独立を考えるとき、どの市場を狙うかを見極めることが重要です。
この章では、今後の需要が伸びる市場を整理し、独立後の方向性を描きやすいようまとめています。
省エネ・再エネ/リノベーション市場
省エネ基準の適合義務化により、建物の省エネ性能を設計段階から確保することが求められるようになりました。
設備設計はその中心にあるため、今後も安定した需要が続くと考えられます。
一方、リフォーム市場も安定した成長が期待されています。国土交通省の既存住宅のリフォームや空き家問題への対応や取り組みも含めて「既存ストックを活かす」方向へ市場が動いています。
新築だけではない時代の潮流に合わせた市場へ、設備設計一級建築士として活躍の幅を広げていきましょう。
地方インフラの老朽化・公共施設更新などへの対応
内閣府や国土交通省がまとめたインフラ老朽化の資料では、高度経済成長期に整備された公共インフラが一斉に更新の時期を迎えます。
特に地方部では、技術者の不足も課題になっているため、設備設計一級建築士が関わる場面が広がります。
地方で求められる主な案件は次のとおりです。
人口減少により新築需要は下がる一方で、既存インフラを維持するための長寿命化・設備更新が欠かせない状況が続くため、地方での需要は安定した市場です。
地方公共団体の創業支援市場
地方公共団体が発注する建設案件は、設備更新・改修が中心となるため、設備設計一級建築士が力を発揮しやすい領域です。
また、地方では創業支援や移住支援の制度が広く用意されており、創業補助金やオフィス支援などを活用して事業を始める人も少なくありません。
成功する起業家は自分だけではなく、「誰のために役に立つか」という意識を常に持っています。地方で開業する人たちにとっても、快適で安心の「働く地盤づくり」ができる設備設計一級建築士の能力が不可欠です。
地方の市場は、新築偏重ではなく、生活に直結するインフラの更新や地域の暮らしを支える設備改善が中心です。
長期的に関わる案件を獲得して、地方経済を支える存在となってください。
まとめ:高度な専門資格を社会に活かそう
設備設計一級建築士は、設備の高度な専門性を扱う資格です。
省エネ化や既存建物の再生が進む中、その資格の需要が高まっています。
独立に向けて考えることは多くありますが、資格の強みや市場の動きを整理すると、設備設計一級建築士として活躍できる場が広がっています。
年収の伸びしろも重要ですが、誰とどのように働くか、地域や社会にどのように貢献できるか、その視点も忘れずに将来の選択肢を広げてみてください。
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