2025.12.03 起業ガイド

林業起業支援と資金調達で独立を成功させる方法3選

林業起業支援と資金調達で独立を成功させる方法3選

「いつかは森の仕事で独立したいと思いながらも、今の収入を手放す不安が大きくて、具体的な行動に踏み切れない」

山で働くやりがいと、ケガや収入への不安のあいだで揺れながら、「本当に自分に続けられるのか」と自問自答を繰り返し、林業起業支援の検索や資料集めだけが増えていく、そんな状態が続いているかもしれません。

今回は、林業起業支援と資金調達の制度を押さえながら、自分に合った3つの独立パターンを比較し、安全面と収益性を両立させる考え方を解説します。

この記事を読めば、林業のリスクと収入の実態を理解したうえで、自分に合う起業ステップが見つかります。

林業起業支援と資金調達で独立を成功させる

起業を志す多くの人が直面するのは、「本当に資金が回るのか」という経済的な不安ではないでしょうか。

林業は自然相手のビジネスであるため、収益が出るまでに時間がかかることや、専用機械が高額であるという特徴があります。

しかし、国や自治体は林業の担い手を増やすため、初期投資や運転資金をサポートする手厚い仕組みを用意しています。

これらを正しく理解し活用することで、リスクを抑えた独立が可能です。

林業起業支援の全体像と年間3200人の新規就業ルート

林業起業支援
出典:林業労働力の動向「新規就業者の推移」|林野庁

新規就業者の推移を見ると、「林業に入ってくる人が今どれくらいいるのか」が具体的にイメージしやすくなります。

「緑の雇用」事業が始まる前は、新規就業者は年間平均約2,000人程度でしたが、事業開始後は年間平均約3,200人にまで増加し、令和5年度(2023年度)は3,333人に達しています。

これは、林業従事者数全体が減少傾向にある一方で、「新しく林業を仕事に選ぶ人」は安定して増えていることを示しており、国の支援制度や研修の整備によって、未経験から林業に入るルートが整ってきているといえます。​

起業や独立を目指す場合も、多くの人がいきなり個人事業主になるのではなく、まずは「緑の雇用」や林業就業支援事業などで事業体に雇用され、現場経験と資格・安全知識を積んでからステップアップしていくのが一般的です。

林業改善資金や基盤整備資金と補助金一覧

林業起業支援で使える主な制度資金と補助金を一覧にまとめました。

区分 制度・補助金名 主な対象者 主な使いみち
制度資金 林業・木材産業改善資金 森林所有者、素材生産業者、木材製造・流通業者など 高性能林業機械の導入、作業道整備、安全設備・福利厚生施設、新たな加工・販売設備など
制度資金 林業基盤整備資金(造林資金) 林業を営む個人・法人、森林組合など 人工植栽、天然林改良、育林、造林用機械や路網整備など
制度資金 林業基盤整備資金(利用間伐等推進) 林業を営む個人・法人、森林組合など 利用間伐、主伐、集材設備、路網整備など
制度資金 林業経営育成資金(森林取得等) 林業経営を行う個人・法人、森林組合など 山林・林地取得、経営規模拡大、経営基盤強化のための投資
補助金 森林整備事業系補助金(造林・間伐等) 森林所有者、森林組合、林業事業体など 造林、間伐、下刈り、保育作業など森林整備にかかる経費の一部補助
補助金 スマート林業・ICT導入等の補助金 林業事業体、森林組合、自治体など ドローン、GIS、ICT機器、高性能林業機械の導入、省力化・安全対策投資など
補助金 林業就業・創業支援関連補助金 新規就業者、移住・創業希望者、受入れ事業体など 研修費、移住支援金、創業時の設備・安全装備費の一部補助
補助金 都道府県独自の林業設備・安全対策補助 各地域の林業者・森林組合など チェーンソーや安全装備、高性能機械、作業道整備など地域ごとの重点分野に応じた支援

林業で起業する際は、「借入(制度資金)」と「返済不要の補助金」の両方を組み合わせて資金計画を立てることが重要です。

上記の一覧では、それぞれの制度の対象者と主な使いみちを整理しています。自分の事業イメージに近いものを見つける目安として活用してください。

日本政策金融公庫の林業融資と審査の考え方

公的な融資機関である日本政策金融公庫は、実績の少ない起業家にとっても心強い存在です。

特に「林業経営育成資金」や「林業基盤整備資金」といった専門の制度があり、一般的な融資よりも返済期間が長く設定されている特徴があります。

審査においては、単なるやる気ではなく、事業計画の実現可能性や、災害リスクへの対策が練られているかが重視されます。

また、認定林業事業体の認定を受けているかどうかも、有利な条件で融資を受けるための判断材料です。

まずは支店の窓口で、自身のキャリアプランと照らし合わせながら相談することをおすすめします。

林業起業支援で向いている人と収入の現実

林業で独立して生活を成り立たせるためには、森での実務能力に加え、経営者としての資質が問われます。

自然環境の厳しさに耐えられる体力はもちろん必要ですが、それ以上に「経費と売上のバランス」を冷静に見極める数字への感覚が欠かせません。

ここでは、実際に林業で生計を立てている人の特徴や、収入を安定させるための現実的な考え方について解説します。

林業に向いている人の特徴と儲からない理由

林業支援起業
出典:一目でわかる林業労働(データ編)|林野庁

林業に向いている人は、「自然が好き」「体力に自信がある」だけでなく、長期的な収入の波を受け止めつつ計画的に動けるタイプです。

林野庁のデータでは、年間就業日数210日以上の林業従事者の平均給与は約361万円と試算されており、全産業平均458万円より低い水準にあります。

この数字だけを見ると「林業は儲からない」と感じますが、就業日数や勤務形態、地域の物価水準、住宅費の有無(社宅・山村暮らし)など条件が異なる点も踏まえて判断することが必要です。

個人事業主年収と複数の収入源の考え方

林業だけで高収入を得ることは簡単ではありませんが、複数の収入源を持つことで生活を安定させることは可能です。

例えば、春から秋は造林や保育作業を行い、冬場は素材生産や薪の販売を行うなど、季節ごとの業務を組み合わせるスタイルが一般的です。

また、近年では「半林半X」として、農業や観光業、Web制作など、全く異なる業種と兼業する人も増えてきました。

一つの収入源に依存しない体制を作ることは、天候や木材価格の変動リスクを分散させるための有効な手段となります。

自分の得意分野を活かし、トータルの年収を確保する設計図を描くことが大切です。

林業の災害発生率は全産業の約10倍

林業起業支援
出典:一目でわかる林業労働(データ編)|林野庁

林野庁の資料によると、林業の死傷年千人率は全産業2.4に対して22.8と約10倍で、産業の中でも突出して高い水準にあります。

伐木や玉切りなどチェーンソーを使う場面での事故が多く、一度の事故が重篤化しやすいことも踏まえると、「体力に自信があるかどうか」だけでなく、安全装備や作業手順への投資を前提にした働き方が欠かせません。

個人事業主として独立する場合でも、労災保険の特別加入、安全靴・ヘルメット・防護ズボン・防振手袋などの装備費用を事業計画に組み込み、「事故を起こさない前提での収支」ではなく「安全コスト込みで成り立つ働き方」を考える必要があります。

林業起業支援で個人事業主の準備と独立方法3選

林業での独立には、大規模な機械を導入する形から、身一つに近い形で始める方法まで、いくつかの選択肢があります。

自分に合ったスタイルを選ばなければ、過剰な設備投資で苦しむことになりかねません。

まず前提として、どの方法を選ぶにしても「資格・安全装備」「開業手続き」「仕事確保」の3セットは共通して必要です。

個人事業主として独立するために必要な3セット

林業で個人事業主として独立するには、3セットを揃えることが大切です。

  • 資格・安全装備・道具のセット
  • 開業・税務・保険のセット
  • 仕事づくり・資金調達のセット

チェーンソーや刈払機の講習、安全衛生教育などの資格を押さえつつ、ヘルメットや防護ズボン、安全靴といった個人装備、チェーンソー・軽トラなど基本的な機械を整えることが出発点になります。

ここが不十分だと、そもそも現場に安全に立てないため、林業で独立したい人ほど最優先で準備したい領域です。

森林組合や林業会社、山主との関係づくりを通じて請負・下請けなどの仕事ルートを確保し、自伐型であれば、自分の山林や借り受ける山林でどんな施業と収入源を組み合わせるかを設計します。

そのうえで、生活費を含めた運転資金を見積もり、林業向けの制度資金や補助金など「林業起業支援」の仕組みを組み合わせることで、無理のない資金計画が作成可能です。

自伐型林業始め方と林業新規参入の進め方

自伐型林業は、大型機械に頼らず、小型の機械と作業道を組み合わせて、持続的に山を管理する手法です。

初期投資を数百万円程度に抑えられるため、個人や小規模チームでの参入に適しており、環境負荷も低いことから注目されています。

参入にあたっては、地域の自伐型林業推進協議会などが開催する研修に参加し、技術と山林管理のノウハウを学ぶことが近道です。

自分で山を所有するか、地域の山主から山林管理を任せてもらう必要がありますが、高付加価値な木材生産と副業を組み合わせやすい点が魅力といえます。

小さく始めて長く続けることを目指す人には適した選択肢です。

移住や副業兼業で林業創業支援を使う方法

都市部から地方へ移住し、林業に携わる場合は、「地域おこし協力隊」などの制度を活用するのが有効です。

一部の自治体や基金では、林業に新規就業した人に対し、3年間の研修や定着奨励金の支給など、就業初期の生活と技術習得を支える制度が用意されています。

この期間中に地域の信頼を得ることで、任期終了後にスムーズに独立するための地盤を固めることができるはずです。

また、週末だけ林業に携わる副業スタイルから開始し、徐々に林業の比重を増やしていく方法もあります。

いきなり全てを賭けるのではなく、生活の基盤を維持しながら段階的にシフトすることで、失敗のリスクを最小限に抑えられます。

事業承継や買収を使った独立の進め方

一から顧客や機材を揃えるのではなく、引退する林業家や経営者から事業を引き継ぐ方法もあります。

後継者不足に悩む事業主は多く、意欲ある若手や中堅層に経営を譲りたいと考えているケースは少なくありません。

事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関に相談することで、候補となる事業者を紹介してもらえる可能性があります。

この方法のメリットは、既存の販路や山林の管理権、機械設備をそのまま活用できるため、初年度からある程度の売上が見込める点です。

ただし、負債や人間関係も引き継ぐことになるため、事前のデューデリジェンス(資産査定)は慎重に行う必要があります。

林業起業支援と資金調達の実践3ステップ

独立に向けた具体的な準備を進めるためには、正しい手順で資金調達と事業計画の策定を行う必要があります。

思いつきで動くのではなく、金融機関や支援機関が納得する根拠を用意しなければなりません。

ここでは、支援制度を確実に活用し、スムーズに開業へと繋げるための3つのステップを解説します。

林業起業支援を使った資金調達と計画の流れ

都道府県の林業担当部署や商工会などの窓口へ行き、利用可能な制度の最新情報を収集しましょう。

次に、その情報を基に、具体的な設備投資額や予想される収益、返済計画を盛り込んだ事業計画書を作成します。

この段階で、機械メーカーからの見積もりや、作業を受託する予定の森林組合などからの発注見込み書があると、計画の説得力が増します。

書類が整ったら、日本政策金融公庫や自治体の融資窓口へ申し込みを行いますが、審査には数週間から数ヶ月かかる場合があるため、早めの準備が必要です。

開業予定日に資金が間に合うよう、余裕を持ったスケジュールで動くことをおすすめします。

日本政策金融公庫や信用保証の活用ポイント

融資を申し込む際は、単に「お金を借りたい」と伝えるのではなく、「事業が軌道に乗るまでの道筋」を論理的に説明することが求められます。

特に林業は、植林から伐採までのサイクルが長いため、元金据置期間(元本の返済を待ってもらう期間)を適切に設定してもらう交渉が必要です。

また、信用保証協会を利用することで、万が一の際の保証を公的機関に担ってもらい、融資審査を通りやすくする方法もあります。

面談では、自身の経験や資格、安全管理への取り組みを具体的にアピールし、返済能力がある経営者であることを証明するよう心がけましょう。

補助金で儲かると誤解しない資金計画の考え方

補助金はあくまで経費の一部を補填するものであり、事業の利益そのものではありません。

「補助金が出るからやる」という動機で高額な機械を導入すると、後のメンテナンス費用や減価償却費が経営を圧迫する恐れがあります。

大切なのは、補助金がなくても利益が出るビジネスモデルを構築し、補助金はあくまで「成長を加速させるためのオプション」として捉えることです。

自己資金を適正に残しつつ、突発的な修繕費や天候不順による収入減にも耐えられるような、堅実なキャッシュフロー計画を立ててください。

まとめ:林業起業支援で自分らしい独立を実現しよう

林業での独立は適切な支援制度と資金調達を活用することで、実現可能な目標になります。

危険や収入面の不安は、正しい知識と準備によってコントロールできる部分も多いものです。

まずは自身のキャリアや資金状況を整理し、使える制度をリストアップすることから行動を開始してください。

しっかりと計画を練り上げれば、豊かな森と共に生きる働き方が手に入ります。

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