2025.12.20 起業ガイド
ガソリンスタンド起業は儲かる?フランチャイズと個人経営の年収比較
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「自動車業界での経験を活かして自分の城を持ちたい」
「親から継ぐ話が出ているが、将来性が不安で決断できない」
そのように起業を考えながらも、ガソリンスタンドの店舗数減少や電気自動車への移行など厳しい現実が目の前にあると感じているのではないでしょうか。
この記事では、ガソリンスタンド起業におけるリアルな収益構造を解説し、フランチャイズと個人経営の年収モデルを具体的な数字を交えて比較します。
この記事を読めば、あなたに最適な開業形態を見極め、収益性の高い事業計画を立てるための具体的な手順がわかります。
ガソリンスタンドで起業する前に知る業界の現状と将来性

出典:揮発油販売業者・給油所数の推移|経済産業省 資源エネルギー庁
グラフが示す通り、給油所数はピーク時から減少を続け、令和6年度末には2万7009カ所まで縮小しています。
揮発油販売業者数も同じく減少しており、ガソリンスタンド業界は成長市場ではなく、撤退と再編が進む成熟・縮小市場です。
その一方で、電動車シフトやSS過疎地問題、災害時の燃料・電力供給拠点としての役割が増しており、スタンドは「給油だけの店」から地域インフラを担う拠点へと変化しつつあります。
起業を考えるなら、この厳しさと新たな役割の両方を踏まえ、燃料販売だけに頼らない事業モデルを前提に計画することが求められます。
30年で50%減少した給油所数と経営が厳しいと言われる背景
1990年代半ばに約6万カ所あった給油所数は、令和6年度末には2万7009カ所まで減少しており、約30年でほぼ半分になっています。
同じ期間に揮発油販売業者数も約3万2千から1万2千強まで縮小しており、「店舗数そのものが減り続ける業界」であることが数字からはっきりわかります。
車の燃費向上や人口減少、競合の価格競争、セルフ化による単価下落などでガソリン販売だけでは利益が出にくくなり、洗車・車検・コーティングなど油外収益や複合店舗化に取り組めないスタンドほど撤退を余儀なくされてきました。
2035年新車電動化目標と電気自動車(EV)シフトによる影響
経済産業省は乗用車について「2035年までに新車販売を電動車100%とする」目標を掲げており、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車・電気自動車・燃料電池車へのシフトが加速しています。
これにより中長期的にはガソリン需要は確実に減少していくと見込まれ、給油量頼みのビジネスモデルだけでは投資回収のリスクが高まります。
一方で、道路沿いの立地・駐車スペース・24時間対応などガソリンスタンドが持つ資産は、EV急速充電設備の設置拠点やカーシェア・コインランドリー・コンビニ・ドラッグストア併設など「モビリティ拠点」として発展させる余地があります。
起業の際には、燃料販売だけに依存しない収益構成を前提に計画することが重要です。
ガソリンスタンド過疎地問題と災害時に高まる地域インフラの価値
給油所数の減少は地方で特に深刻で、資源エネルギー庁は市町村内のガソリンスタンドが一定数以下になる「SS過疎地」が全国で300市町村規模に達していると報告しています。
こうした地域では、高齢者や事業者が燃料を確保するのに長距離移動を強いられ、生活・物流インフラの面で大きなリスクとなっており、国や自治体は補助金や支援事業で存続を後押ししている状況です。
また、地震や豪雨などの災害時には、燃料供給拠点としてのガソリンスタンドの重要性が一段と高まります。
非常用発電機や給水設備、EV給電機能などを備えた「防災拠点型SS」が注目されているため、地域ニーズと防災機能を組み合わせた事業計画は起業家にとって大きな差別化要素になり得ます。
ガソリンスタンド起業の選択肢フランチャイズと個人経営の年収比較
ガソリンスタンドで起業する上で、最初の大きな分岐点となるのが経営形態の選択です。
大手の看板を借りて安定したスタートを切れる「フランチャイズ(代理店)」と、自由な経営で大きな利益を目指せる「個人経営(無印スタンド)」には、それぞれ異なるメリットとデメリットが存在します。
この選択は、開業後の収益性、特に経営者の「年収」に直接的な影響を与えます。
フランチャイズ(代理店)経営の仕組みとロイヤリティ
フランチャイズ経営は、ENEOSや出光といった石油元売り会社と代理店契約や特約店契約を結び、そのブランド名を使用して事業を行う形態です。
本部から経営ノウハウや研修制度、そして何より安定した燃料供給を受けられるため、業界未経験者でも比較的参入しやすいのがメリットです。
大手の看板が持つ集客力と信頼性は、開業初期の不安定な時期を支える助けとなります。
一方で、経営の自由度には制約があります。販売価格やサービス内容、キャンペーンなどは本部の規定に従う必要があり、独自のアイデアを反映させにくいのがデメリットです。
また、ブランド使用料として、売上や販売量に応じたロイヤリティや手数料を本部に支払う義務が生じます。
ガソリンスタンド業界の独立開業(無印スタンド)の自由度とリスク
独立開業(無印スタンド)とは、特定の元売り会社のブランドに属さず、完全に独立して経営する形態です。
魅力的なのは、その圧倒的な経営の自由度にあります。
燃料の仕入れ先をその時々で最も条件の良い業者から自由に選べるため、価格競争で優位に立てる可能性があります。
また、洗車や車検、レンタカーといった油外サービスも、地域のニーズに合わせて自由に展開でき、利益はすべて自分のものです。
しかし、その自由度は高いリスクと表裏一体です。大手の看板がないため、集客や顧客からの信頼獲得はゼロから自力で行わなければなりません。
燃料の安定供給先の確保や、経営の方向性を決める全ての責任を経営者一人が負うことになり、その経営手腕が事業の成否を直接左右します。
年収300万円と1000万円で見るフランチャイズと個人経営の違い
ガソリンスタンド経営者の年収を大きく分けるのは、経営形態そのものよりも「収益構造」です。
年収300万円のモデルは、粗利益率(10%前後)の低いガソリン販売に依存しているケースです。
燃料価格の変動に収益が左右され、厳しい競争の中で利益を確保するのが難しくなります。
一方、年収1000万円を超えるモデルは、洗車、車検、コーティングといった「油外収益(粗利益率50%超)」を事業の柱に据えています。
顧客一人当たりの単価を上げ、安定した収益基盤を築くことで高い年収を実現しています。
フランチャイズでは本部が開発した成功しやすい油外収益の仕組みを導入できますが、個人経営では自由な発想でニッチな需要を狙うことも可能です。
どちらの道を選ぶにせよ、ガソリン販売以外の収益源をいかに確立するかが、年収を分ける最大の分岐点と言えます。
ガソリンスタンドを家族経営や事業承継で開業する際の注意点
一見すると、ガソリンスタンドの家族経営や事業承継はメリットが多いように見えますが、見落としがちな注意点が5つあります。
- 隠れた債務や負債の確認
- 適正な事業価値の評価と相続問題
- 従業員と顧客の引き継ぎ
- 役割分担と意思決定の曖昧さ
- 経営方針の刷新と旧体制との軋轢(あつれき)
事業承継は、先代からの従業員や顧客との関係再構築、家族間での役割分担の明確化、そして経営方針を巡る旧体制との対立など、乗り越えるべき課題は多岐にわたります。
なかでも特に注意すべきは、帳簿に現れない負債です。
老朽化した地下タンクの交換義務は、数百万単位の予期せぬ支出につながりかねないため、契約前に必ず確認すべき最重要項目です。
ガソリンスタンド起業に必要な資金・資格・許認可の全知識
ガソリンスタンドの起業が他のビジネスと大きく異なるのは、多額の初期投資に加え、法律で定められた専門的な資格と許認可が不可欠である点です。
これらの準備を怠ると、開業計画そのものが頓挫しかねません。
ここでは、事業をスムーズに開始するために避けては通れない「資金」「資格」「許認可」という3つの重要な要素について、それぞれ具体的に解説します。
乙種第4類危険物取扱者資格の概要と最短1ヶ月での取得方法
ガソリンは消防法で定められた「危険物」に該当するため、その取り扱いや監督には国家資格である「危険物取扱者」が必須です。
特にガソリンや軽油などが含まれる「乙種第4類」は、ガソリンスタンドで働くうえでの基本的な資格となります。
たとえセルフサービスの店舗であっても、従業員の中に必ず有資格者が常駐することが法律で義務付けられています。
合格率は例年30〜40%台ですが、試験範囲は決まっているため、市販の参考書と問題集を繰り返し学習すれば、早い方で1ヶ月程度の準備期間で合格を目指すことも十分可能です。
揮発油販売業登録など許認可手続きの方法
ガソリンスタンドを開業するには、消防法関連の許可とは別に、「揮発油等の品質の確保等に関する法律」に基づき、管轄の経済産業局へ「揮発油販売業」の登録申請を行わなければなりません。
申請時には3万円の費用が発生し、事業計画書や品質管理体制に関する書類など、専門的な書類の提出が求められます。
また、商業登記(小規模な株式会社の場合)の登録免許税として15万円の納付が必要です。
手続きには一定の期間を要するため、店舗の工事計画と並行して、できるだけ早い段階から準備を進めることが重要です。
スタンド起業に必要な資金調達で活用できる補助金や融資制度
ガソリンスタンドの開業には数千万円単位の資金が必要になることも珍しくなく、自己資金だけですべてを賄うのは困難な場合がほとんどです。
そのため、多くの起業家が外部からの資金調達を活用します。
これから事業を始める方にとって最も身近な選択肢が、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。
実績がない創業者に対しても積極的に融資を行っています。
また、事業承継で開業する場合は「事業承継・引継ぎ補助金」、EV充電設備など新しい投資を行う場合は「充電インフラ整備補助金」といった、返済不要の補助金が利用できる可能性もあります。
ガソリンスタンド起業で儲かるための油外収益ビジネスモデル
ガソリン販売の利益率は1リットルあたり数円程度と低く、原油価格の変動に収益が大きく左右されるのが現実です。
この厳しい状況で安定した経営を実現し、「儲かる」ガソリンスタンドとなるためには、ガソリン以外の収益源、すなわち「油外収益」の確立が不可欠です。
油外収益は利益率が高いだけでなく、顧客との接点を増やし、リピーターを育てるためのポイントになります。
ここでは、成功している経営者が実践する油外収益の多角化戦略を、具体的なビジネスモデルと共に紹介します。
洗車・車検・コーティングで収益を最大化する方法
ガソリンスタンドへ給油に訪れた顧客に対して、自然な形で提案できるのが洗車や車両メンテナンスサービスです。
最新のドライブスルー洗車機を導入するだけでも収益は見込めますが、利益を最大化するには、手洗い洗車や高品質なボディコーティング、さらには車検の受付といった高付加価値サービスを組み合わせることが重要です。
これらのサービスは、顧客をリピーターへと育てるための最も効果的な仕組みづくりにつながります。
定期的なメンテナンスを通じて顧客との信頼関係を築き、安定した収益基盤を確立できます。
レンタカーやカーシェア事業を併設するメリット
ガソリンスタンドの持つ駐車スペースや洗車設備、そして道路沿いという立地は、レンタカーやカーシェアリング事業と非常に相性が良いです。
特に、駅や観光地の近くでなくとも、地域住民の「少しだけ車を使いたい」というニーズを拾うことで、新たな顧客層を開拓できます。
この事業のメリットは、遊休資産である駐車スペースを新たな収益源に変えられる点です。
車両の貸し出しだけでなく、返却時の給油や洗車といった追加の収益も見込める、相乗効果の高いビジネスモデルです。
コンビニやカフェ併設によるガソリンスタンド経営の集客効果と収益性
ガソリンスタンドの目的を「給油」だけでなく、「休憩」や「買い物」へと広げることで、収益機会は飛躍的に増大します。
コンビニエンスストアやカフェを併設すれば、これまでの顧客の利用単価が上がるだけでなく、給油目的以外のお客様を新たに呼び込む強力な集客装置です。
特に、運転の合間に一息つきたいドライバーにとって、淹れたてのコーヒーが飲めるカフェは魅力的です。
給油の「ついで」に利用してもらうことで、ガソリン販売の薄い利益を補って余りある収益を獲得できます。
EV充電設備の導入と将来のエネルギー拠点化
電気自動車(EV)の普及は、既存のガソリンスタンドにとっては脅威であると同時に、大きなチャンスでもあります。
急速充電器を設置することで、新たなEVユーザーを顧客として取り込むことが可能です。
ガソリンの給油が数分で終わるのに対し、EVの充電には20分以上の時間が必要です。
この充電中の滞在時間を新たな収益機会に変えるという発想が重要になります。
ドライバーが待ち時間に利用できるカフェや洗車サービスを提供することで、将来の「エネルギー拠点」として生き残るための先行投資となります。
まとめ:ガソリンスタンド起業で地域に必要なエネルギー拠点になろう
ガソリンスタンドの起業は、店舗数の減少やEVシフトという大きな変化の波に直面しており、決して簡単な道ではありません。
しかし、この記事で解説したように、ポイントはガソリン販売という従来のビジネスモデルから脱却し、多様な「油外収益」を事業の柱に据えることにあります。
洗車や車検、さらにはコンビニやカフェの併設、そして将来を見据えたEV充電設備の導入は、単なる収益アップの手段ではありません。
これらは、あなたのガソリンスタンドを、単に燃料を補給する場所から、人々が集い、地域に不可欠な「エネルギー拠点」へと進化させるための戦略です。
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