2025.12.06 起業ガイド

畜産業の起業は小規模でも可能!成功の秘訣と初心者向きの3ルート

畜産業の起業は小規模でも可能!成功の秘訣と初心者向きの3ルート

会社員として働きながら、「畜産を仕事にできたらどうだろう」と感じる瞬間がありませんか?

しかし厳しい経営の話も目に入り、最初の一歩が重く感じられやすい印象があります。

一方で、国の支援や小さく始める経営、体験を受け入れる牧場が増え、30〜40代から畜産の世界に入る人も少しずつ出てきています。

畜産は日本の農業の中でも大きな割合を占め、加工品や体験を組み合わせた新しい取り組みも広がっています。

この記事では、畜産業界の今と、初心者が選びやすい起業のルート、補助金、小さな成功事例までを順番に整理していきます。

畜産業で起業するあなたの夢のお手伝いができれば幸いです。

畜産業起業の未来-市場規模と今後の可能性

畜産の世界に興味を持つと、最初に気になるのは「この業界は本当に先があるのか」という点かもしれません。

この章では、主要品目ごとの規模、国内消費の傾向、加工や体験分野の広がりを整理し、今後のチャンスを見ていきます。

畜産・酪農・養鶏の市場規模と日本ブランドの立ち位置

畜産起業出典:農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢令和7年2月」

農林水産省によると、日本の畜産の産出額は3兆7,248億円(令和5年)で、国内の食を支える大きな産業です。

畜産農家の高齢化や原価上昇のニュースが目につく一方、国産の商品には根強い需要があり、「安全性」「品質の高さ」から選ばれやすい状況となっています。

畜産起業出典:農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢令和7年2月」

日本の畜産の産出額全体に占める割合は、鶏32%・生乳22%・肉用牛19%・豚21%で、どの品目も需要が大きく偏らず、バランスよく消費されています。

一方、海外でも日本産商品の支持は強く、安全性を理由に選ぶ声が多い状況です。日本の畜産商品はまだまだこれからも可能性が広がっています。

生産して出荷するだけ?一次産品の現状と課題

多くの畜産農家は、枝肉や生乳、生卵といった一次産品を出荷する形で経営しています。

しかし、このスタイルだけで利益を安定させるのは簡単ではありません。

農林水産省の資料を見ると、飼料価格の上昇や燃料代の変動が収益に大きく影響し、特に酪農では在庫の増加が課題として挙げられています。

さらに、豚肉や鶏肉は輸入量が多く、価格競争が起こりやすい面があります。

鶏肉は国内消費の3〜4割を輸入が占めるため、国際市況の影響を受けやすい状況にあります。

一次産品だけの販売には収益の波が生じやすいため、小規模で安定した経営を目指すなら、加工や直売を組み合わせて収入源を複数に分ける発想が重要です。

ハム・ソーセージ・乳製品など加工品市場の広がり

肉や乳を加工して販売する動きは、収入を上げる手段として注目されています。

ハム・ソーセージなどの豚肉の加工品はブランドや味で選ばれる傾向が強く、地域の特産品が育ちやすい品目です。

乳製品では、チーズの需要が高く、特に国産チーズの存在感が高まっており、原料乳の安定確保に向けた取り組みも進んでいます。

加工に取り組む農家は、一次産品だけでは得られない多角的な収益を得ることが可能です。

体験・観光・副産物ビジネスなど高付加価値市場の可能性

最近は体験や観光、加工、サブスクなどを組み合わせて収益を広げる取り組みが増えています。

観光牧場や牧場カフェ、動物とのふれあい体験は地域の観光資源として価値が高まっています。

加工・直売・体験を組み合わせて畜産商品の付加価値を高められます。生産量の大小にも左右されないので、農場のファンづくりや地域連携を通じて継続しやすい点が魅力です。

畜産業起業で初心者が選べる3つのルート

未来の市場に可能性があるとはいえ、迷いがある方も多いのではないでしょうか。

ここでは、未経験者でも選べる現実的なルートを整理し、行動につなげるポイントを紹介します。

ルート①:農業系の学校・研修機関から個人で独立

農業大学校や自治体の研修機関では、基礎から体系的に畜産を学べる環境が整っています。

座学だけでなく、牛や豚、鶏の扱い方、飼料設計、衛生管理、繁殖や搾乳の実習まで幅広い内容を経験でき、卒業後の独立を目指すプログラムも用意されています。

全国農業会議所の調査でも、20〜40代の新規就農者の多くが「研修を経て就農した」と答えており、学校ルートは安定した準備期間として選ばれやすい入り方です。

メリットは、技術や経営の基礎を体系的に学べる点ですが、一方でフルタイムで通うケースが多いため、学費や生活費の準備が必要です。まずは資料請求や説明会に参加することから始めましょう。

ルート②:既存の牧場・養鶏場を引き継ぐ事業承継

近年、畜産経営者の高齢化、後継者不足が深刻化しており、事業承継の可能性が注目されています。

この流れを受け、牧場や養鶏場を「譲りたい」という相談が増えており、設備・飼育ノウハウ・販路をまとめて引き継ぐ機会が広がっています。

地域での信頼関係や既存の顧客を受け継ぐことで、スタート時の負担が軽くなります。

事業承継の魅力は、ゼロから施設を建てなくても動ける点ですが、老朽化した設備や既存の借入金が残っている場合もあり、引き継ぐ内容はしっかり確認しておくことが重要です。

ルート③:体験学習で牧場・養鶏場で働きながら学び、数年後に独立

畜産業は通年で仕事があるため、すぐに週末アルバイトや短期雇用から始めることができます。

畜産現場で働きながら、畜産業の生活や年間の作業を肌で感じられる点が選ばれる理由です。

このルートの魅力は今の仕事を続けながら現場を見られる点ですが、すぐに経営者になれるわけではなく独立まで時間がかかる場合があります。

ただ、働きながら加工品のアイデアを考えたり自分のペースで進めたい人に適しており、「まずは現場を見たい」という方は、最初の一歩として体験ツアーや就農イベントへ参加してみましょう。

畜産業の起業に必要なお金・開業資金・補助金の全体像をつかむ

資金の負担で起業を不安に感じる方も少なくありません。

でも実際には小さなスタートから始める例も多く、補助金や支援制度も整っています。ここでは、開業資金の目安、代表的な補助金を整理します。

小さく始める畜産の開業資金の目安

畜産の初期投資は、作物づくりと比べて設備や飼料の割合が大きくなりやすい特徴があります。

新規就農者調査では、畜産で就農した人の設備投資額が平均より高くなるとされ、特に牛舎や鶏舎の整備にはまとまった資金が必要です。

全国新規就農相談センターが実施した調査(2024年度)によると、農業全体の新規就農者が用意した自己資金の平均額は営農面で278万円、生活資金は170万円、実際にかかった金額は896万円でした。

畜産業は飼料費が国際相場で変動するため、初年度は必要な設備だけ整備し、少頭数で始める方がリスクを抑えやすいです。

新規就農向け補助金・給付金の基本

新規就農者を後押しする制度として、国や自治体の補助金が複数用意されています。

代表的なのは、青年等就農資金・農業次世代人材投資資金などで、就農初期の生活費や設備の整備に充てられます。

ただし、補助金は「もらえる前提」で計画を立てるより、資金計画の一部として扱うことが現実的です。

最初のステップとして、地域の就農相談窓口に制度の内容を聞いてみると、必要な準備が見えてきます。

加工品販売や販路づくりに使える補助金・支援

畜産の経営を安定させるために、加工施設の整備や直売所などの販路づくりを組み合わせる動きが広がっています。

加工品に取り組むことで一次産品以外の利益を得られます。

農山漁村振興交付金は、工房整備・パッケージ開発・販路開拓などに幅広く使えるため、将来の多角化を見据える場合に役立つ支援です。

今は「どんな補助金があるか」を軽く押さえておくだけでも、独立後の選択肢を広げやすくなります。

業務効率化やIT導入(スマート畜産)のための補助金・支援

近年、家畜のデータをセンサーで管理したり、給餌を自動化する技術が進歩し、畜産現場でもITを活用して作業の効率を高める取り組みが増えています。

スマート畜産の導入により作業の負担が減ることで本来の仕事に集中しやすくなります。

スマート畜産に関する補助金や支援事業は、設備導入の負担を抑える目的で設けられているため、効率化を考えたい方には心強い仕組みです。

畜産業起業の稼ぎ方は小規模×多角化が鍵

近年は加工や体験、観光を組み合わせて、収入源を広げる経営が増えています。

ここでは小規模でも「強い事業」づくりに成功した事例を紹介します。

牛パターン:肉+乳製品+体験で稼ぐ小さな牧場

牛を軸にした小規模経営は、乳・肉に加えて加工と体験を組み合わせることで収入の柱を増やしやすい特徴があります。

長野県の「小布施牧場」では、乳牛8頭の就農から多角経営に発展させており、カフェや直売所を併設して来訪者との関係を深めています。

牛の畜産では乳・肉だけに依存せず、加工品(チーズ、アイス、ヨーグルト)で単価を上げ、牧場体験やイベントで地域とのつながりを育てる3つの柱をつくることが重要です。

豚パターン:肉+加工品(ハム・ソーセージ)でブランド化

豚は加工品との相性が良く、ハムやソーセージ、ベーコンのようなブランド品をつくりやすい分野です。

地元の豚肉を使ったハム工房や精肉店と連携し、少頭数でも利益を上げることが可能です。

大分県の荻町高原綜合農場では地域ブランドを守りながら加工品を展開しています。

加工場を小規模に整え、飲食店や直売所に卸すスタイルです。

地域ブランドづくりに興味がある方、規模よりも品質で勝負したい方に向いています。

商品を丁寧につくる姿勢が、事業の強さにつながります。

鶏パターン:卵+卵加工+体験・サブスクで広げる小規模養鶏

養鶏は回転が速く、小規模でも多角化しやすい分野です。

山梨県忍野村「田辺養鶏場」の事例では、地域の卵を使ったスイーツや東京のスイーツ店と連携した取り組みが紹介されています。

養鶏場の卵と地元の醤油を使った卵かけご飯を自宅で味わえるコースは全国からファンを獲得しました。

卵はプリンやシフォンケーキ、マヨネーズなど「卵から生まれる商品」で価値を生み出すことが可能です。

卵は毎日採卵できるためキャッシュフローが安定しやすく、加工品へ発展しやすい点、来場者向けの体験イベントと相性が良い点が魅力です。

まとめ:畜産で起業は小規模でも十分可能

畜産の市場規模は年々拡大しており、日本ブランドへの信頼も根強いです。そして畜産の世界は、大規模な設備を持つ人だけが挑戦できる分野ではありません。

数字や事例を見ていくと、小さなスタートでも道が開けることが分かります。

まずは、気になるルートをひとつ選び、資料請求や体験プログラムの参加など、小さな一歩を踏み出してみてください。

あなたの商品が口にできる日を楽しみにしています!

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