2025.12.04 起業ガイド

機械設計起業で年収を上げるフリーランスの働き方

機械設計起業で年収を上げるフリーランスの働き方

「機械設計エンジニアとして10年以上経験を積んでも、会社員である限り年収は伸び悩む」

「客先常駐や下請け構造のなかで、評価も裁量も得られず、将来が見通せない」

このように感じ、機械設計起業やフリーランスで独立を考えても、「営業や案件獲得のノウハウがない」「収入が途切れるリスクが怖い」などの不安から、行動に移せずにいる方は少なくありません。​

今回は、機械設計エンジニアが起業で失敗しないための準備ステップと、年収を上げるフリーランスの働き方を具体的に解説します。​

本記事を読めば、あなたが持つCADスキルと現場経験を活かし、リスクを管理しながら独立後も安定して稼ぐ方法がわかります。

機械設計起業で年収を上げる仕組みを解説

機械設計エンジニアが会社員という枠組みを超えて収入を伸ばすためには、業界の構造と報酬の仕組みを正しく理解する必要があります。

技術力があっても、働き方を変えなければ収入の大幅な向上は望めません。

ここでは、独立によってどのように収入構造が変わるのか、具体的な現実を見ていきます。

エンジニアで独立起業する現実と将来性

機械設計業界は現在、深刻な人手不足に直面しており、スキルのあるエンジニアに対する需要は高止まりしている傾向です。

しかし、会社員として働いていると、その市場価値が給与に直結しにくい構造があります。

フリーランスとして独立した場合、会社員の頃と比較すると3つのメリットがあります。

  • 収入の上限撤廃
  • 働き方の自由度
  • 経費の活用

収入の上限撤廃では、会社規定の給与テーブルに縛られず、成果に応じた報酬を得られます。

働き方の自由度では、案件を選び、リモートワークや時間にとらわれない働き方が可能です。

経費の活用では、高額なCADソフトやPCを経費計上し、税金対策を行いながら手取りを増やせます。

機械設計エンジニアの年収は30〜40代で伸びが鈍くなる

機械設計エンジニアの年収は、同じ技術職の中でも「中堅〜やや高め」のレンジに位置しますが、30〜40代で伸びが鈍くなり、役職や会社規模による差も大きいのが実情です。

機械設計起業
出典:
職業情報提供サイト「job tag」機械設計技術者 年齢別の収入|厚生労働省

このグラフは、機械設計エンジニアの年齢階級別平均年収を示しています。

30〜40代で一定水準までは伸びるものの、その後は大きく増えにくく、役職や担当領域による差が大きいことが分かります。

この水準を基準として把握しておくと、機械設計起業やフリーランス独立後に、どの程度の年収アップを狙うか判断しやすくなります。

独立後は、単に図面を描くだけでなく、ビジネスパートナーとして顧客の課題を解決する姿勢が必要です。

自分の技術を「時間」ではなく「価値」として提供することで、会社員時代には到達できなかった年収を実現できる可能性が広がります。

機械設計業務の範囲と強み

機械設計と一口に言っても、その業務範囲は広く、独立して成功するためには「何でもできます」よりも「これが得意です」という強みが重要です。

特定の分野に特化することで、高単価な案件を獲得しやすくなります。

具体的には、仕様検討から関わりゼロから形にする上流工程である構想設計や、製造可能なレベルまで図面を落とし込む実務である詳細設計・図面作成があります。

さらに、強度や熱流体のシミュレーションを行い設計品質を担保するCAE解析も需要が高い分野です。

特に、3D CADを用いたモデリングだけでなく、力学計算に基づいた強度の保証や、加工コストを意識した設計ができるエンジニアは重宝されます。

自分の経験の中で、どの工程が最も顧客に価値を提供できるかを見極めることが、起業の成功率を高めます。

機械設計起業で独立前に満たす経験条件

独立を考える際、「今のスキルで通用するのか」という不安はつきものです。

しかし、完璧な状態を待つ必要はありません。必要なのは、顧客の要望を形にし、トラブルに対応できる基礎体力です。

ここでは、独立に向けて最低限クリアしておきたい経験の目安について解説します。

一人前になる年数と目安

機械設計エンジニアとして独立するには、一般的に5年から10年程度の実務経験が望ましいとされています。

これは、単にCAD操作ができるだけでなく、設計から試作、量産立ち上げまでの一連の流れを経験するために必要な期間です。

求められる経験としては、設計ミスや現場での不具合を解決したトラブル対応経験や、加工業者や部品メーカーとの調整を行うサプライヤーとの折衝経験が挙げられます。

加えて、機能を満たしつつ、製造コストを抑える設計提案ができることも重要です。

指示された図面を描くだけのオペレーター業務だけでは、独立後の案件獲得は苦戦します。

自分で考え、仕様を決定し、責任を持って図面を出図した経験が、クライアントからの信頼を勝ち取るための担保となります。

機械設計職に向いている人の特徴

独立して成功する機械設計エンジニアには、技術力以外にも共通する特徴があります。

組織に守られていない環境では、自ら動いて問題を解決する姿勢が求められるからです。

具体的には、根拠に基づいて設計意図を説明できる論理的思考力や、顧客の曖昧な要望を汲み取り具体的な仕様に落とし込むコミュニケーション能力が必要です。

また、新しい技術やツール、法規制の情報を常にアップデートする自己研鑽の継続も欠かせません。

特に重要なのは、受け身ではなく能動的に動けるかどうかです。

顧客からの指示を待つのではなく、「こうすればもっと良くなる」「この方がコストが下がる」といった提案ができる人は、独立後も継続的に仕事が舞い込みます。

客先常駐機械設計から独立を考える視点

客先常駐(派遣・SES)で働いているエンジニアは、独立に向けた準備がしやすい環境にあります。

様々な企業の設計現場を見ることができ、幅広い製品知識や人脈を築けるチャンスがあるためです。

メリットとして、複数の企業で異なる設計ルールやノウハウを学べる多様な設計思想の習得や、派遣先で信頼を得ることで独立後の直接契約へつながる人脈の形成が挙げられます。

さらに、常に最前線の開発現場で手を動かすことで、実践的なスキルが錆びつかない点もメリットです。

ただし、常駐先での業務が細分化された一部の作業に留まっている場合は注意が必要です。

全体像を把握できるよう、積極的に担当範囲を広げる交渉や、関わるプロジェクトを変えるなどの工夫を行い、独立に備えた実績作りを心がけます。

機械設計起業で個人事業主としての準備

技術的な自信がついたら、次は事業主としての環境を整える段階です。

会社員とは異なり、税金や保険、契約の手続きをすべて自分で行う必要があります。

ここでは、スムーズに事業を開始するために必要な手続きと準備について解説します。

個人事業主の開業手続き

個人事業主として活動を始めるための手続きは、想像以上にシンプルです。

費用もかからず、書類を提出するだけで法的な「事業者」としての地位を得ることができます。

必要な手続きは主に3つです。まず、管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。

次に、最大65万円の控除を受けるために開業届と同時に提出する青色申告承認申請書を作成します。

そして、事業の顔となる名前を決める屋号の決定です。

特に青色申告は、節税効果が大きいため必須と言えます。

最近では、オンラインで簡単に書類作成ができるクラウド会計ソフトも充実しているため、簿記の知識がなくても心配ありません。

面倒な事務作業はツールで効率化し、本業の設計業務に集中できる環境を作ります。

機械設計開業を副業から始める流れ

リスクを最小限に抑えるためには、いきなり会社を辞めるのではなく、副業からスモールステップで始める方法を推奨します。

具体的な方法として、ランサーズやココナラなどで小規模な案件を受注するクラウドソーシングの活用や、過去の同僚や取引先に声をかけ手伝える仕事がないか探す知人からの紹介があります。

また、平日の夜や土日を使って3Dモデリングや図面トレースを行う週末起業も有効です。

副業で月数万円でも稼ぐ実績ができれば、独立への自信につながります。

また、顧客とのやり取りや納品の流れを予行演習できるため、独立後のトラブルを未然に防ぐことにも役立ちます。

起業後の年収と単価の現実

フリーランスになると「売上=手取り」ではない点に注意が必要です。

会社員時代には会社が負担していた社会保険料や、業務に必要な経費を自分で支払わなければなりません。

考慮すべき支出には、3D CADやハイスペックPCの購入費がかかる設備投資費用、国民健康保険や国民年金などの税金と保険があります。

これらを差し引くと、実質の手取りは売上の約6〜7割程度が生活費として使える目安です。

したがって、会社員時代の年収を維持・向上させるためには、給与の1.5倍程度の売上目標を立てる必要があります。

高額なCADライセンス料は大きな負担となるため、サブスクリプション版の活用や、補助金制度の利用も検討します。

個人事業主と法人化の違い

事業が軌道に乗ってくると、個人事業主のまま続けるか、法人化(会社設立)するかという選択肢が出てきます。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の事業規模に合わせた判断が必要です。

主な違いは、法人の方が大手企業と直接取引口座を開設しやすい社会的信用や、一般的に課税売上高が1,000万円を超えるとメリットが出る税負担の分岐点があります。

一方で、法人は社会保険への加入義務や決算業務など、維持管理の手間が増える事務負担も考慮しなければなりません。

機械設計の場合、大手メーカーとの取引を目指すなら法人化が有利ですが、下請けや設計事務所からの受託がメインであれば、個人事業主でも十分に対応可能です。

まずは個人で実績を作り、売上の見通しが立った段階で法人成りを検討するのが堅実なルートです。

機械設計起業で案件獲得と安定収入を築く方法

独立後に不安なのが「仕事が途切れないか」という点です。

待っているだけで仕事が来ることは稀なため、自分から案件を取りに行く仕組みを作る必要があります。

ここでは、機械設計エンジニアが安定して仕事を獲得するための具体的なルートを紹介します。

業務委託と機械設計外注募集活用

安定した収入基盤を作るためには、エージェントやマッチングサイトを活用するのが近道です。

営業活動を代行してもらえるため、設計業務に集中できるメリットがあります。

活用できるチャネルとして、エンジニア向けの案件紹介サービスを利用するフリーランスエージェントや、繁忙期の設計事務所が出す外注募集があります。

また、製造業に特化したビジネスマッチングを活用するのも効果的です。

エージェント経由の案件は、マージンが引かれるものの、支払いサイトが明確で未払いのリスクが低いメリットがあります。

最初はエージェントで実績を作り、徐々に直接契約の比率を増やしていく戦略が、収入を安定させつつ高めるために必要です。

フリーランスでの単価交渉と条件整理

収入を上げるためには、適切な単価設定と交渉が欠かせません。

安売りをしてしまうと、長時間労働で疲弊してしまうため、自分の価値に見合った価格を提示する勇気が必要です。

交渉のポイントは、「時給制」か「図面1枚いくら」かを案件によって使い分ける時間単価と成果単価の設定や、仕様変更や修正回数の上限を決める見積もりの明確化です。

さらに、納期短縮やVA/VE提案などプラスアルファの価値を提示することで単価を上げやすくなります。

見積もり時は、「なぜその金額になるのか」を工数根拠と共に、説明できるようにしておかなければなりません。

明朗な見積もりは顧客の安心感につながり、結果として希望単価が通りやすくなります。

自分の価値に見合った価格を提示する勇気を持ちましょう。

大手企業との取引と下請け構造

機械設計の仕事は、自動車や家電などの大手メーカーが発注元となるケースが多いものの、個人がいきなり大手と直接取引するのはハードルが高いのが現実です。

理由は、大手は与信管理が厳しく個人事業主とは直接契約しない口座開設の課題があります。

対策としては、口座を持つ企業を介して参画する商社や派遣会社の活用や、決済スピードが早い中小規模の装置メーカーへの営業が有効です。

「大手との直取引」にこだわりすぎず、まずは信頼できる中堅の設計会社や技術商社をパートナーにすることが、安定受注への近道です。

実績を積み重ねることで、将来的には大手からの指名で仕事が入ることも十分にあり得ます。

機械設計事務所として信頼される情報発信

「営業が苦手」というエンジニアこそ、Webを活用した情報発信に力を入れるべきといえます。

ポートフォリオやブログは、あなたが寝ている間も営業してくれる頼もしい味方です。

具体的な発信方法として、守秘義務に配慮しつつ過去の実績や得意分野を可視化するポートフォリオ作成や、設計ノウハウやCADのTIPSを発信する技術ブログの運営があります。

また、同業者や潜在顧客とつながるSNSでの活動も業界内での認知度を高めます。

発信内容は高度な技術論だけでなく、「仕事への取り組み方」や「トラブル解決事例」なども効果的です。

「この人に頼めば安心して任せられそうだ」と感じてもらうことが、Web集客の本質です。

まとめ:機械設計起業で経験を生かし挑戦しよう

機械設計エンジニアとしての独立は、確かな技術と準備があれば、会社員時代以上の収入と自由な働き方を手に入れることができます。

独立に向けた行動は、早すぎるということはありません。まずは今日からできる小さなアクションを起こしてみてください。

あなたの積み上げてきた設計技術は、社外でも通用する貴重な資産です。

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