2025.12.22 起業ガイド
看護師が訪問看護ステーションで起業!失敗しない開業と年収UPの経営術
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「もっと、利用者様一人ひとりに寄り添った看護がしたい」。
訪問看護ステーションでの起業は、あなたの理想の看護を実現し、地域医療に深く貢献し、会社員時代超える収入を得ることも可能な、看護師にとって究極のキャリアパスです。
しかし、複雑な行政手続き、厳しい人員基準、そして激しい競争が待ち受け、決して平坦なものではありません。
この記事では、看護師が訪問看護ステーションで起業するために必要なことや起業の手順、失敗しないための戦略などを解説します。
この記事を読めば、看護師の経験を活かして、どのように訪問看護ステーションが起業をすれば良いかがわかります。
なぜ今、訪問看護ステーションでの起業が「手堅い」ビジネスなのか?
「介護業界は人手不足で大変そう」「今から参入しても、大手には勝てないのでは…」。
そうした不安を感じるかもしれません。
しかし、日本の社会構造の大きな変化が、今、訪問看護ステーションというビジネスに、かつてないほどの強い追い風を吹かせています。
なぜ、この事業が社会に絶対的に求められ、かつ堅実なビジネスとして成立するのか。その構造的な理由を3つの視点から解説します。
理由1:国の後押し。「病院から在宅へ」という、揺るぎない時代の潮流
日本の医療費は増大の一途をたどり、国は医療費抑制のため、「病院完結型」の医療から、地域全体で支える「地域完結型」医療への転換、つまり「病院から在宅へ」という方針を強力に推進しています。
自宅で療養生活を送る高齢者や難病患者は、今後も増え続けることが確実です。
その在宅医療の最前線を担うのが、まさに訪問看護ステーションです。
理由2:介護保険・医療保険がベースの「安定した収益構造」
訪問看護事業の収益は、その大部分が介護保険と医療保険によって賄われます。
利用者の自己負担は1割~3割で、残りは国保連や支払基金から事業者へ支払われます。
利用者の経済状況に左右されにくい、安定した収入基盤を築けます。
また、一度契約すれば、利用者がサービスを必要とする限り、毎月継続的に収益が発生する「ストック型」のビジネスモデルである点も、事業計画を立てる上で非常に大きなメリットです。
理由3:大手にはない「顔の見える関係」と「信頼」が武器になる
訪問看護は、利用者様の最もプライベートな空間である「自宅」にお邪魔し、その方の人生に深く関わる仕事です。
そこでは、マニュアル通りの画一的なサービスではなく、利用者様一人ひとりの価値観や生活史を尊重した、温かい看護が求められます。
「〇〇さんだから、安心して何でも話せる」。この顔の見える関係から生まれる深い信頼こそが、大手事業者には決して真似のできない、個人経営のステーションが持つ最大の武器になります。
起業前に知るべき「訪問看護経営」3つの厳しい現実
訪問看護ステーションの起業は、看護師としての高い志を実現できる素晴らしい道ですが、同時に、経営者として乗り越えなければならない厳しい現実も存在します。
理想だけで突っ走ると、開業後すぐに行き詰まってしまう可能性があります。
ここでは、あなたが起業準備を始める前に、必ず直視しておくべき「3つの厳しい現実」を解説します。
現実1:【人員基準】「看護師2.5人」が常に必要。1人でも欠けたら事業停止
訪問看護ステーションを運営するには、法律で「常勤換算で2.5人以上の看護職員(看護師、保健師または助産師)」の配置が義務付けられています。
これは、あなたを含めて、常に2~3人の看護師を確保し続けなければならないことを意味します。
もし、スタッフが一人でも退職し、この基準を満たせなくなれば、事業は即時停止に追い込まれます。
慢性的な看護師不足の中、いかにしてスタッフを採用し、定着させるか。この人材確保こそが、訪問看護経営における最大の課題です。
現実2:【24時間対応】休日・深夜も鳴る電話。経営者の終わらない緊張感
訪問看護ステーションには、利用者やその家族からの緊急の相談に対応するため、「24時間対応体制」を整えることが求められます。
これは、休日や深夜であっても、いつ電話が鳴るか分からない、という緊張感を常に強いられることを意味します。
創業当初は、経営者であるあなた自身が、このオンコール対応の中心とならざるを得ません。
自分のプライベートな時間を確保し、心身の健康を維持しながら、この重責をどう果たしていくのか。明確な体制と覚悟が必要です。
現実3.【低利益率】介護報酬は国が決める。戦略なき経営では利益が残らない
訪問看護の主な収入源である介護報酬・診療報酬は、国によって単価が定められています。
提供するサービスの価格を、自由に決めることはできません。人件費や家賃、車両費などのコストは年々上昇する一方で、収入の単価は国の政策次第。
どんぶり勘定で経営していると、どんなに忙しく働いても、利益がほとんど残らないという事態に陥ります。
限られた報酬の中で、いかにして利益を最大化するか。そのための経営戦略がなければ、事業の継続は困難です。
9割が陥る「儲からないステーション」3つの罠と回避術
「訪問看護は儲からない」。そう嘆く経営者がいるのは事実です。
しかし、それは訪問看護というビジネス自体が儲からないのではなく、経営に致命的な罠があるからです。
ここでは、多くのステーションが利益を出せずに苦しむ、3つの根本的な原因と、それを回避するための具体的な方法を解説します。
罠1:【低稼働率の罠】依頼を待つだけ。「ケアマネ営業」の本当の意味を知らない
失敗するステーションの典型が、「開業しました」と挨拶に行くだけで、あとはケアマネジャーからの紹介をひたすら待つ「待ちの営業」スタイルです。
多忙なケアマネジャーは、数あるステーションの中から、最も信頼でき、対応が迅速で、専門性の高いステーションを選びます。
回避術は、「御用聞き」ではなく「課題解決のパートナー」になること。
「うちのステーションは、〇〇(例:ターミナルケア、精神科)の経験が豊富です」
「急な依頼も、24時間必ず対応します」
など、ケアマネジャーの業務を助ける情報提供や、他社にはない強みを積極的に提案し、「困ったときは、まず〇〇さんに相談しよう」と思われる存在になることが重要です。
罠2:【低単価の罠】「基本報酬」だけで稼ごうとし、利益を増やす「加算」を取りこぼす
訪問看護の報酬は、基本となる「訪問看護費」だけではありません。
24時間対応体制や、ターミナルケア、特別な管理が必要な利用者への対応など、特定の要件を満たすことで算定できる、様々な「加算」が存在します。
この加算こそが、ステーションの利益率を大きく左右する鍵です。
しかし、多くの経営者は、加算の算定要件が複雑であるため、本来取れるはずの加算を取りこぼしています。
回避術は、介護保険制度を深く理解し、自社の強みを活かして、どの加算を戦略的に取得していくか、開業当初から計画を立てることです。
罠3:【チーム崩壊の罠】情報共有不足と過重労働で、看護師が定着しない
訪問看護は、一人で完結する仕事ではありません。
利用者様の情報をスタッフ全員で共有し、チームとして一貫したケアを提供することが不可欠です。
しかし、経営者が日々の業務に追われ、スタッフ間の情報共有が不足すると、サービスの質が低下し、ミスや事故に繋がります。
また、特定のスタッフに訪問やオンコールが集中すれば、その人は心身ともに疲弊し、離職してしまいます。
回避術は、ITツール(チャットツールや電子カルテ)を活用してリアルタイムに情報共有する仕組みを作ること、そして、スタッフ全員で公平に業務を分担する、明確なルールとシフト体制を構築することです。
年収UPを実現する!訪問看護起業・成功ロードマップ5ステップ
では、どうすれば失敗の罠を避け、社会に貢献しながら、看護師として年収UPを実現できるのでしょうか。
ここでは、あなたの看護への想いを、持続可能な「儲かる事業」へと変えるための、具体的なロードマップを5つのステップで解説します。
ステップ1:【事業計画と資金調達】融資を引き出す「勝てる収支計画」の作り方
開業には、事務所の賃料、人件費、車両費、備品購入費、そして当面の運転資金など、最低でも1,000万円程度の資金が必要です。
自己資金で不足する分は、日本政策金融公庫の創業融資などを活用します。
融資審査の鍵を握るのが「事業計画書」です。
なぜこの地域で開業するのか(市場調査)、競合とどう差別化するのか(独自の強み)、そして、利用者数と訪問回数、加算の取得計画から算出した具体的な「収支計画」を提示する必要があります。
この計画の具体性と実現可能性が、融資の成否を分けます。
ステップ2:【法人設立と指定申請】最短ルートで「訪問看護事業者」になる
介護保険事業を行うには、「法人格」が必須です。
まずは、株式会社または合同会社を設立しましょう。
設立手続きは司法書士に依頼するのが確実です。
同時に、事業所に常勤で配置する必要がある「管理者」の要件(看護師または保健師であること等)や、「人員基準(常勤換算2.5人以上)」を満たす必要があります。
法人設立と並行して、専門家の助言を受けながら、膨大で複雑な指定申請書類の準備を進めるのが、開業までの最短ルートです。
ステップ3:【人材採用とチーム作り】「辞めない組織」を作る採用と教育のコツ
事業の成否は「人」、つまり看護師の質と定着で決まります。
求人広告では、給与や待遇だけでなく、
「利用者様とじっくり向き合える」
「残業が少なく、プライベートも大切にできる」
「研修制度が充実している」
といった、あなたのステーションの理念や働きがいを具体的に伝えましょう。
採用後の研修では、技術指導だけでなく、理念の共有やチーム内のコミュニケーションルールを徹底します。
そして、スタッフの頑張りを正当に評価し、給与や賞与に反映させる仕組みを構築することが、「辞めない組織」作りの鍵となります。
ステップ4:【営業戦略】ケアマネに「あなたを指名させる」最強の営業ツールとは
仕事の獲得は、地域の居宅介護支援事業所(ケアマネジャーが所属)や、病院の退院支援室への営業が中心です。
ただ名刺を配るだけの営業では、その他大勢に埋もれてしまいます。
ケアマネジャーに「あなたを指名させる」ための営業ツールは、「ステーションの強みが一目で分かるパンフレット」と「専門知識をまとめた情報紙」です。
「当ステーションは、〇〇(例:精神科、小児、ターミナルケア)に特化しています」「最新の〇〇ケアに対応可能です」といった強みを明確に伝え、定期的に訪問して情報提供を行うことで、「〇〇のケースなら、あのステーションに相談しよう」と、第一想起される存在を目指します。
ステップ5:【収益最大化】どの「加算」を狙うべきか?戦略的な加算取得計画
ステーションの収益を最大化し、経営を安定させるためには、「加算」の戦略的な取得がポイントです。
まずは、比較的算定しやすく、多くの事業所が取得している「緊急時訪問看護加算」や「特別管理加算」の体制を整えましょう。
その上で、自社の看護師のスキルや地域ニーズに合わせて、「ターミナルケア加算」や「精神科訪問看護基本療養費」など、より専門性が高く、単価の高い加算の取得を目指します。
どの加算を、どのタイミングで、どうやって取得していくか。
この加算戦略こそが、あなたのステーションの収益性を決定づける、経営者としての腕の見せ所です。
まとめ:訪問看護の起業とは、地域の「安心な在宅療養」を支える砦である
訪問看護ステーションの経営は、利用者様が住み慣れた自宅で、最期までその人らしく、安心して暮らすことができる社会を実現するための、地域医療で極めて重要な仕事です。
責任は重いですが、利用者様とご家族からの「あなたたちがいてくれて、本当に良かった」という心からの言葉は、病院勤務では決して得られなかった、やりがいを感じられるはずです。
あなたのその看護への情熱と経験を、待っている人が必ずいます!
ぜひこの記事を参考にいまから一歩を踏み出してみましょう。
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