2025.12.02 起業ガイド

救急救命士は起業できる!資格と実務経験を活かす民間救急独立法

救急救命士は起業できる!資格と実務経験を活かす民間救急独立法

「救急救命士として現場で経験を積み、資格取得まで果たしても、病院や消防での働き方や収入は大きく変わらない…」

そんな悩みを抱え、「民間救急で自分の実力をもっと社会に活かせるのでは」と考え始める方が増えています。

独立を考えると、認定取得・車両準備・営業・人材確保・経営管理など、乗り越えるべき実務上の課題に対応することが必要です。

この記事では、救急救命士の資格と現場経験を最大限に活かし、民間救急に挑戦するための現実的な起業ノウハウや、失敗しにくい収益モデルの選び方、働き方の幅を広げる具体策まで解説します。

民間救急の起業を目指す救急救命士が、自分の資格や経験を活かして安定した収入と地域貢献を実現する具体的な方法が分かります。

救急救命士起業の現状と将来性

出典:
第2-5-8図 救急出動件数・救急搬送人員の推移とその将来推移(2000年~2030年)|総務省消防庁

全国の救急搬送人員約529万件のうち、およそ6割を民間医療機関が受け入れており、病院数や病床数でも民間が大部分を占めているとの結果があります。

高齢化と救急需要の増加が続く中で、民間救急や民間病院が地域の救急医療を支える役割は今後さらに大きくなると見込まれます。

救急救命士が起業して民間救急や関連サービスを展開することは、この構造変化を背景にした成長余地の大きい選択肢です。

民間救急は「8割・7割・6割」の法則


出典:
日本の救急医療における民間病院の役割について|一般社団法人 日本医療法人協会

民間救急の市場規模をイメージするうえでよく引用されるのが「8割・7割・6割」の法則です。

これは、日本の病院数の約8割、病床数の約7割、年間救急搬送の約6割を民間病院が受け入れている構造を指します。

つまり、公的病院だけでは既に救急需要を賄いきれておらず、多くの地域で民間医療機関が救急医療の主力です。

今後も高齢化や在宅医療の進展によって搬送ニーズは増えると見込まれ、民間救急事業やそこに関わる救急救命士の活躍余地は一層広がると考えられます。

4秒に1回救急車が出動し年間で20人に1人が救急搬送される


出典:
第16図 救急出動件数及び搬送人数推移|総務省消防庁

総務省消防庁の第16図によると、救急出動件数と搬送人員は平成20年以降、一貫して増加しており、令和4年には救急自動車による出動が722万件、搬送人員が621万人に達しています。

1日平均では約1万9千件、約4秒に1回のペースで救急車が出動し、国民20人に1人が年間に救急搬送される計算です。

こうした継続的な需要の増加は、公的救急だけでは賄いきれない領域が広がることを意味し、民間救急や救急救命士の独立事業者が補完的な役割を果たす余地が大きいことを示唆しています。

救急救命士起業に必要な資格と認定

救急救命士が民間救急として起業するには、国家資格だけでなく、患者等搬送乗務員としての適任証や医療系資格の要件、さらに患者等搬送事業者として消防本部の認定を受けることが不可欠です。

民間救急で必要となる資格一覧

民間救急で「乗務員として認められるために必要な資格」は、各自治体の要綱を見るとおおむね次のいずれかに該当することと定められています。

  • 患者等搬送乗務員基礎講習を修了し、「患者等搬送乗務員適任証」の交付を受けている者
  • 医師・看護師・准看護師・保健師・助産師・救急救命士・医学士・看護学士など、消防本部が基礎講習修了者と同等以上と認める医療系有資格者(特例適任者)
  • 消防法施行規則第51条に定める救急業務に関する講習課程を修了した者(救急隊員向けの上級救急講習等)

実務的には「①基礎講習+適任証」か「②上記の医療・救急系国家資格(特例適任)」のどちらかを満たしていれば、民間救急の乗務員として必要条件をクリアできます。

民間救急資格取得手順と4つのチェックポイント

民間救急として認定を受けるまでの流れは、営業許可・乗務員資格・車両設備・消防本部への認定申請という四つの段階に整理できます。

以下のチェックリストを起業前に順番に確認していくことで、手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。

  • 介護タクシーなどの営業許可(福祉輸送限定)が取得済みか
  • 患者等搬送乗務員基礎講習を修了し、適任証や特例適任資格を満たしているか
  • 車両が患者等搬送用としての設備基準・携帯備品基準を満たしているか
  • 所轄消防への患者等搬送事業者認定申請に必要な書類・人員体制が整っているか

上記4点を満たして初めて「民間救急」として認定されるため、起業前のセルフチェックリストとしてこの順番で確認していくと抜け漏れを防ぎやすくなります。

救急救命士起業の収支モデルと3つの働き方

救急救命士が民間救急で起業するときは、「どれくらい稼げるか」「どんな働き方を選ぶか」をあらかじめ整理しておくことが大切です。

ここでは、単独開業、副業・フランチャイズ、介護タクシーとの組み合わせの3パターンで収支モデルを考えます。

1. 民間救急事業の収益モデルと年収例

民間救急の収益は、「出動件数×1件あたり売上−固定費・変動費」で考えると整理できます。

例えば、1件あたりの平均単価を2万5,000円とし、月40件対応すれば売上は月100万円です。

ここから燃料費、高速料金、人件費、車両リースや減価償却、保険料などを差し引き、手残りがどの程度かを見積もります。

救急救命士として地方でひとり起業の場合、年間売上1,000万〜1,500万円、経費差し引き後の年収は500万〜800万円を目標に置く事業者が一般的です。

複数台運用や看護師同乗など高単価案件を増やせば、年収1,000万円近くを狙える可能性もあります。

2. 副業やフランチャイズ展開の収入差

本業を続けながら副業として救急救命士に関わる場合は、稼働時間が限られるため「夜間・休日のスポット案件」や「フランチャイズ加盟による案件供給」を組み合わせるパターンがあります。

副業型では月10〜20件程度の稼働で、粗利ベースの副収入が月10万〜30万円に落ち着くケースが想定されます。

一方、フランチャイズ本部からの紹介案件を中心にフルタイム稼働する場合、ロイヤリティ支払いは発生しますが集客コストを抑えやすく、売上の安定性が高まりやすい傾向です。

完全独立は高収益を狙える反面、集客リスクも背負うため、自分の営業力とリスク許容度に応じて副業型かFC型かを選ぶことが重要です。

3. 民間救急と介護タクシーの違い

民間救急と介護タクシーはどちらも移動支援サービスですが、前者は消防認定を受けた患者等搬送事業であり、医療的ケアが必要な利用者が対象です。

救急救命士として医療機器を搭載した車両や複数乗務員で対応するため単価が高く、その分収益性も高まりやすいといえます。

一方、介護タクシーは要介護者の通院や日常外出を支えるサービスで、介護保険が関わるケースもあり、料金は民間救急より低めに設定されます。

収益面では大量稼働型に近く、リピートや定期契約をどれだけ獲得できるかがポイントです。

医療依存度が高い案件は民間救急、比較的安定した利用者は介護タクシーと役割分担を意識すると、両事業を組み合わせた収益設計がしやすくなります。

救急救命士起業成功に不可欠な4つの準備

収支モデルが見えたら、次は「どう準備を進めるか」が重要です。

ここでは、相談先の選び方、資金と車両・設備、人材と営業、全体の事業設計という4つの視点から起業準備のポイントを整理します。

1. 民間救急開業相談のステップと注意点

民間救急で起業する際は、いきなり車両を購入するよりも、まず所轄の消防本部と運輸局、行政書士など専門家への相談から始めると安全です。

最初に患者等搬送事業の認定基準や申請書類、車両設備要件を具体的に確認し、次に介護タクシーなど福祉輸送の許可手続きの流れを把握します。

そのうえで、自分が狙うエリアでの需要や競合状況を簡単に調査し、売上見込みと初期費用を試算します。

相談時には、「どの車両を使う予定か」「どんな人員構成にしたいか」「どの時間帯を中心に稼働するか」を整理してメモしておくと、具体的なアドバイスを受けるために有効です。

制度面とマーケットの両方を早い段階で押さえることで、あとからやり直す手間を回避できます。

2. 資金計画と車両・設備の準備方法

資金計画では、「車両」「医療・搬送資機材」「許認可や専門家への手数料」「広告費」「運転資金」の5つに分けて考えることがポイントです。

例えば、中古の福祉車両にストレッチャーや酸素、吸引器などを装備する場合、初期投資は数百万円規模になります。

自己資金だけで賄えない場合は、日本政策金融公庫の創業融資や自治体の制度融資を検討し、返済額が月の想定キャッシュフローに収まるかを確認します。

また、最初からフル装備にせず「必要案件が増えた段階で機器を追加導入する」段階的な投資も選択肢です。

固定費を抑えつつ、安全・品質に直結する部分にはしっかり投資するバランス感覚が重要です。

3. 営業・人材確保で押さえるポイント

営業面では、病院の医療連携室や地域包括支援センター、ケアマネジャー事業所、介護施設など「搬送ニーズを抱えた相談窓口」と継続的につながることが重要です。

単発の飛び込みより、紹介元との信頼関係づくりを意識した訪問や情報提供を重ねる方が、長期的な案件獲得につながります。

一方、人材面では、救急救命士や看護師だけでなく、患者等搬送乗務員基礎講習を修了したドライバーや介護職経験者の採用・育成がポイントです。

勤務シフトが不規則になりやすいため、オンコール体制や待機手当のルールを明確にし、働き方のイメージを共有しておくと離職リスクを抑制できます。

「安心して任せられる乗務員チームを育てること」が、そのまま事業の評判とリピート率に直結します。

4. 失敗しにくい民間救急の事業設計

失敗しにくい事業設計を考えるときは、「案件の偏り」と「固定費の重さ」に注意が必要です。

転院搬送など高単価案件だけに依存すると、病院の方針変更や競合参入の影響を受けやすくなります。

そのため、通院支援や一時帰宅、福祉施設送迎など案件の種類を分散し、平日昼間と夜間・休日の収益バランスを意識したスケジュール管理が不可欠です。

また、開業初期から車両を複数台用意すると、稼働率が上がる前に資金繰りが厳しくなるおそれがあります。

1台から小さく始めて需要を見ながら増車する、固定費は低く抑えつつ柔軟に拡張できる形を意識するとリスクを管理しやすくなります。

まとめ:救急救命士起業で未来を切り開こう

救急救命士が起業する際に民間救急を選択することは、収入アップだけでなく、地域の救急・介護インフラを支える新たな役割を担う選択です。

収支モデルや働き方の違い、資格と認定の条件、資金や人材、営業戦略までを一度整理しておくと、自分に合った形が見えやすくなります。

小さく始めて着実に信頼を積み重ねていけば、やりがいと安定収入を両立したキャリアを築ける可能性が高まります。

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