2025.12.09 起業ガイド
レンタカービジネス起業で1台からの小規模開業と収益性
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「所有している遊休車両や空きスペースを有効活用したいが、レンタカービジネスの始め方がわからない」
いざレンタカービジネスに参入を検討しても、そもそもどのように始めたら良いかわからず、動けずにいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、レンタカービジネス起業に必要な許可要件だけでなく、中古車や高級車を活用し、1台からのスモールスタートで利益を出しやすくするニッチ戦略について解説します。
本記事を読めば、あなたの資金や環境に合わせた無理のない事業計画を立案し、高収益なビジネスモデルと徹底したリスク対策をイメージできるようになります。
全国のレンタカー車両数は乗用車だけでも約69万台
出典:運輸支局別レンタカー車両数について|一般社団法人全国レンタカー協会をもとに弊社にて作成
全国のレンタカー車両数は2025年3月末時点で116万8,522台に達しており、乗用車だけでも約69万台と全体の6割以上を占めています。
関東は30万8,790台で突出して多く、特に東京は7万台超と大都市圏での利用ニーズの高さが際立ちます。
北海道・九州・沖縄など観光需要が強いエリアでも車両数が多く、観光客やビジネス利用に支えられた市場が形成されているのが特徴です。
一方で、地域別に見ると都市部に車両が集中しており、地方や観光地の中には競合が手薄なエリアもあるため、エリア特性に合わせて参入余地や差別化戦略を検討できる市場であることが数字から読み取れます。
こうした市場環境を踏まえると、まずはリスクを抑えて「1台からの開業」でノウハウを蓄積していく戦い方が現実的な選択肢です。
レンタカービジネスの車両数は長期的に右肩上がりで増加
001608644出典:レンタカー事業者数及び車両数の推移|国土交通省
国土交通省の統計によると、レンタカービジネスの車両数は長期的に右肩上がりで推移しており、全車種・乗用車ともに増加傾向が続いています。
事業者数も増加していることから、新規参入が相次ぎつつも市場自体が拡大している段階にあり、単なる一時的ブームではなく継続的な需要の底上げが進んでいると考えられます。
また、訪日外国人や国内旅行者数の増加、マイカー保有から「必要なときだけ借りる」利用スタイルへのシフトにより、観光・ビジネス双方でレンタカー需要が広がっている傾向です。
今後も人口減少や働き方の変化に伴い「所有から利用」への流れが進むことを踏まえると、地域やターゲットを絞ってサービス設計を行えば、中長期的に安定した収益源として育てやすい市場といえます。
レンタカー開業を1台から始めるメリット
レンタカー開業を1台から始めるメリットは、初期投資と固定費の負担を抑えつつ、実際の稼働率や客層、料金設定の感触を確かめながら事業を育てられる点です。
自家用車や既存の代車・在庫車を活用できれば、新たな車両購入コストを抑えつつ「自家用自動車有償貸渡業」の許可取得と保険・システム整備から段階的に始められます。
副業や本業と並行したテスト運営も可能です。
また、1台からのスモールスタートであれば、事故対応やメンテナンス、予約管理といったオペレーションを無理なく回しながらノウハウを蓄積でき、ニーズが見えた段階で台数を増やしたり、高級車・キャンピングカー・長期レンタルなどのニッチに広げる判断もしやすくなります。
高級車やキャンピングカーの需要
高級車やキャンピングカーは、マス向けレンタカーとは異なる「体験価値」を求める層から支持されており、単価の高さから少ない台数でも売上と利益に与えるインパクトが大きいジャンルです。
高級車レンタルは、インバウンドや記念日利用、富裕層・法人向けの送迎ニーズなどを背景に、世界的にも市場拡大が続いていると報告されており、日本国内でも空港周辺や観光地、都市部を中心に専門店が増えてきています。
キャンピングカーは、日本RV協会などの調査で「保有台数が2000年代半ばから現在までに約3倍以上に増えた」「キャンピングカー販売総額が直近10年で数倍規模に拡大した」とされています。
海外と比較すると国内の保有台数はまだ少なく、「今後も普及余地が大きい伸びしろのある市場」と位置付けられているため、キャンピングカーや高級車を組み合わせたレンタカービジネスは、単価と差別化の両方を狙いやすい選択肢といえます。
レンタカービジネス起業の収益性と年収シミュレーション
レンタカービジネスの収益性は、保有台数の稼働率と設定単価、そして経費コントロールのバランスによって大きく変動します。
大手チェーンのように薄利多売を目指すのではなく、中古車や高級車を活用して車両原価を抑えつつ高単価なサービスを提供することで、小規模でも高い収益性を確保する経営が可能になります。
レンタカービジネスの利益率は30%台も可能な経費構造
一般に「優良ビジネス」とされる営業利益率15%超と比べると、レンタカービジネスは条件を整えれば20〜30%台を狙える余地がある一方、稼働率が低い・価格競争が激しい・車両コストや事故が多いと一気に利益が削られるリスクも大きいビジネスです。
レンタカービジネスは在庫リスクが低く、一度車両を導入すれば継続的に売上を生み出すストック型ビジネスに近い側面があるため、適切な経費管理を行えば高い利益率を期待できます。
売上に対する主な経費は、車両の減価償却費、駐車場代、任意保険料、車検・点検費用、そして集客にかかる広告宣伝費やシステム利用料です。
特に個人の場合は人件費や地代家賃を抑えられるため、稼働率が損益分岐点を超えた段階で手元に残る利益が大きく跳ね上がる構造になっています。
初期段階では固定費を極力抑え、車両の維持費などの変動費中心の経費構造にすることが、安定した利益率を維持するポイントです。
開業資金の目安と初期費用の内訳
1台からレンタカービジネスを開業する場合、車両購入費を除いた手続き関連の初期費用として、およそ15万円から30万円程度を見込んでおく必要があります。
具体的な内訳は以下の通りです。
- 登録免許税
- 申請代行手数料(行政書士に依頼する場合)
- 車両の登録に伴う諸費用
登録免許税として9万円が必要になるほか、ナンバープレートの変更や車庫証明の取得に数千円から数万円がかかります。
ここに車両購入費や駐車場契約の初期費用、任意保険の初回支払分などが加算されますが、すでにある車両をはじめとする資産を活用できれば、100万円以下の資金でも十分に事業を開始できる計算になります。
レンタカービジネスの補助金活用事例
新規事業としてレンタカーを開業する場合、国の補助金制度を活用することで初期投資の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
例えば「事業再構築補助金」は、本業の売上が減少している事業者が新たな分野に挑戦する際に、車両購入費の一部(電気自動車など要件あり)や改装費、広告宣伝費が補助対象になるケースがあります。
また、「小規模事業者持続化補助金」は販路開拓を目的としており、Webサイト制作やチラシ作成、看板設置などの費用に充当可能です。
こうした制度は公募時期や要件が頻繁に変更されますが、活用できれば資金繰りに大きな余裕を持たせた状態で事業をスタートできます。
レンタカービジネス起業に必要な許可要件と手続きの流れ
レンタカービジネスを行うためには、「自家用自動車有償貸渡業」の許可を国土交通省(運輸支局長)から受けることが法律で義務付けられています。
この許可を取得せずに有償で車を貸し出す行為は法律違反となり、厳しい処罰の対象となるため、正しい手順で許可を得ることが事業の出発点です。
レンタカー許可不要の誤解と法的責任
「わ」ナンバー以外の車両を有償で貸し出す行為や、個人間で許可なく車を貸し借りするカーシェアリング類似の行為は、道路運送法違反(いわゆる白タク行為や無許可営業)とみなされるリスクがあります。
近年普及している個人間カーシェアサービスは、プラットフォームを介して「共同使用」の枠組みで行われるものであり、事業として反復継続して利益を得るレンタカー業とは法的な位置付けが異なります。
事業として収益化を目指すのであれば、必ず許可を取得し、適切な保険に加入して「わ」ナンバーで運用しなければなりません。
無許可営業は摘発されると懲役や罰金などの刑事罰が科されるだけでなく、万が一の事故の際に保険が適用されず、経営者が莫大な損害賠償責任を負う事態になりかねないため、注意が必要です。
自家用自動車有償貸渡業の必要書類
許可申請には、事業を遂行する能力と体制があることを証明するために、複数の書類を作成して管轄の運輸支局へ提出する必要があります。
主な必要書類は以下の通りです。
- 自家用自動車有償貸渡許可申請書
- 貸渡料金表および貸渡約款
- 事業計画書(収支見積書含む)
- 欠格事由に該当しない旨の宣誓書
- 事務所および車庫の配置図・契約書等
これらの書類では、営業所から2km以内に駐車場が確保されていることや、適切な料金設定と約款が用意されていることを示します。
特に貸渡約款は利用者との契約内容を定めた重要な書類であるため、標準約款をベースにしつつ、自社のサービス形態に合わせて内容を精査することが求められます。
整備管理者などのレンタカー事業資格
レンタカービジネスの開始にあたり、特定の国家資格が必須となるわけではありませんが、車両の安全を確保するために管理体制を整える義務があります。
具体的には、保有車両の点検や整備を管理する「整備管理者」を選任する必要があり、一定の実務経験を持つ者や整備士資格を持つ者がその任にあたります。
ただし、保有車両が10台未満(乗車定員11人以上のバス等を除く)の小規模な事業者の場合は、整備管理者の選任届出は不要ですが、定期点検基準に従って点検を行う義務は変わりません。
資格者がいない場合でも開業は可能ですが、安全管理の責任は事業者にあるため、近隣の整備工場と提携するなどして、車両の品質を維持できる体制を構築しておくことが不可欠です。
レンタカービジネス起業の失敗事例とリスク管理の徹底
どれほど収益性の高いビジネスモデルであっても、たった一度の重大事故やトラブルで事業継続が困難になるケースは珍しくありません。
成功している事業者は、攻めの集客と同じくらい、不測の事態に備えた守りのリスク管理に投資しています。
レンタカー開業失敗の典型的なパターン
レンタカービジネスで失敗する典型的なケースは、差別化できないまま価格競争に巻き込まれて利益が出なくなるか、事故やトラブルへの備えが甘く突発的な支出で資金ショートするパターンです。
大手と同じようなコンパクトカーを揃えても、知名度や価格で対抗するのは難しく、結果として稼働率が上がらずに車両の維持費だけがかさむ事態に陥ります。
また、利用者の質を見極めずに誰にでも貸し出してしまい、車両を乱暴に扱われたり、最悪の場合は乗り逃げや犯罪に使われたりするリスクもあります。
事業を継続させるためには、ターゲットを絞って適正価格で貸し出すことと、利用者を選別する審査基準を持つことが重要です。
レンタカービジネスのリスクと保険加入
レンタカービジネスでは、利用者が起こした事故に対する補償だけでなく、車両が修理中で使えない期間の休業補償(NOC:ノン・オペレーション・チャージ)についても対策を講じる必要があります。
法令により、レンタカー車両には対人・対物・搭乗者傷害などの自動車保険への加入が義務付けられていますが、これらは最低限の基準に過ぎません。
事業用保険は自家用よりも割高になりますが、ここを削ると事故発生時に会社が倒産するリスクに直結します。
免責補償制度を導入して利用者から手数料を徴収し、万が一の際の自己負担額をカバーする仕組みを作るなど、保険制度自体を収益モデルの一部として設計する視点も有効です。
貸渡時の審査厳格化とトラブル事例
車両の傷やへこみ、返却遅延、車内の汚れや臭いなど、利用者とのトラブルを未然に防ぐためには、貸渡時の手続きと確認作業を厳格化することが最も効果的な対策です。
出発前には必ず利用者と一緒に車両の外装チェックを行い、傷の位置を記録した書面にサインをもらうことで、返却時の言った言わないの争いを防げます。
また、免許証の有効期限確認はもちろん、本人確認書類の写しをとる、連絡先が繋がるかその場で確認するなど、身元の確かな相手にのみ貸し出す姿勢を崩してはいけません。
トラブル発生時の対応マニュアルを作成し、警察や保険会社への連絡フローを明確にしておくことで、いざという時に冷静に対処できる体制を整えておきましょう。
まとめ:独自の価値で安定収益を実現しよう
レンタカービジネスは、正しい知識と戦略を持って臨めば、個人や小規模事業者でも十分に収益化できる可能性を秘めています。
1台からのスモールスタートでリスクを最小限に抑えつつ、高級車やキャンピングカーといったニッチな市場で独自の価値を提供することが成功への近道です。
手続きやリスク管理は決して軽視できませんが、それらを乗り越えた先には、あなたの資産を活かした安定的で将来性のあるビジネス基盤が待っています。
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