2025.12.23 起業ガイド

トラック起業|1台で独立は可能?資金・許可・荷主獲得の全手順

トラック起業|1台で独立は可能?資金・許可・荷主獲得の全手順

「会社の給料が上がらない」「もっと自由に稼ぎたい」。そう考えてトラックドライバーからの独立を夢見る人は多いでしょう。

2025年現在、物流業界は「2024年問題」を経て運賃適正化の動きがある一方で、燃料費の高騰やドライバー不足による倒産も過去最多ペースで増えています。

トラック1台で起業することは可能ですが、そこには「緑ナンバー取得の壁」や「荷主獲得の難易度」といった高いハードルが存在します。

この記事では、トラック起業に必要な資金、許可、そして確実に稼ぐための経営戦略を解説します。

最後まで読めば、トラックでどのように起業をすれば良いかの全体像が掴めるようになります。

トラック起業は自由か地獄か?2025年のリアルな市況

トラックでの起業は、成功すれば年収1,000万円超えも夢ではありませんが、失敗すれば多額のリース残債を抱えるハイリスクな挑戦です。

特に2024年4月以降、時間外労働の上限規制が適用され、「走れば走るだけ稼げる」という個人事業主の勝ちパターンが通用しにくくなっています。

しかし、これは裏を返せば「適正な運賃交渉ができる事業者」にとっては追い風です。荷主側もコンプライアンスを重視し始め、安さだけで業者を選ばなくなっています。

これからのトラック起業は、単なる「運び屋」ではなく、物流コンサルタントのような視点で提案できる経営者が生き残る時代です。

まずは市場の現状を冷静に見極めましょう。

ドライバー不足はチャンス?運賃値上げの波に乗れる人

ドライバー不足は深刻化しており、2030年には全国で約34%の荷物が運べなくなると予測されています。

この状況下で、トラック起業家には二極化が進んでいます。

一つは、下請け構造の最下層で安く買い叩かれ続ける人。もう一つは、希少価値を武器に運賃交渉に成功する人です。

後者になるためには、「特殊車両(冷凍車やユニック車など)」を扱うか、「緊急配送・深夜対応」などのニッチな需要に応える必要があります。

また、インボイス制度への対応や、デジタルタコグラフによる労務管理など、法令遵守を徹底していることも、大手荷主と直接契約を結ぶための必須条件となっています。

チャンスは確実にありますが、ものにできるのは制度や体制をしっかり準備したできた業者のみです。

結論|トラック1台からのスタートは可能だが条件がある

「トラック1台で独立したい」という相談は多いですが、法律の壁が立ちはだかります。

いわゆる「緑ナンバー(一般貨物自動車運送事業)」の許可を取るには、最低でも「車両5台」が必要です。

つまり、トラック1台では緑ナンバーの許可は下りません。では、1台で起業するにはどうすればいいのか。

方法は主に2つです。一つは「軽貨物(黒ナンバー)」で開業すること。これなら車両1台から可能です。

もう一つは、既存の運送会社の「協力会社(下請け)」として入り、その会社の名義(緑ナンバー)を借りて走る、いわゆる「持ち込み」という形態です。

ただし、持ち込みは違法リスク(名義貸し)と隣り合わせのため、契約形態には細心の注意が必要です。

知っておくべき一般貨物と軽貨物の決定的な違い

トラック起業を考える際、最初に決めなければならないのが「一般貨物(緑ナンバー)」を目指すか、「軽貨物(黒ナンバー)」で始めるかです。

この2つは、扱える車両の大きさだけでなく、開業に必要な資金、許認可の難易度、そして将来的な収益規模が全く異なります。

多くの人が「とりあえず軽貨物から」と考えがちですが、長距離輸送や大量輸送で大きく稼ぎたいなら、最初から一般貨物を見据えた準備が必要です。

以下の表で、両者の違いを比較しました。自分の資金力と目指すゴールに合わせて、どちらの道を進むべきか判断しましょう。

比較項目 一般貨物(緑ナンバー) 軽貨物(黒ナンバー)
対象車両 2トン、4トン、大型など 軽バン、軽トラのみ
最低車両数 5台以上(営業所ごとに) 1台からOK
開業資金目安 1,000万〜2,000万円 50万〜200万円
許可取得期間 申請から約4〜6ヶ月 届け出のみ(即日〜数日)
運行管理者 必須(国家資格者) 不要(一定台数までは)

緑ナンバー取得のハードル|資金500万と車両5台の壁

一般貨物の許可取得が難しい最大の理由は、「ヒト・モノ・カネ」の要件が非常に厳しいからです。

まず「モノ(車両)」は5台以上揃える必要があり、それらを停める車庫も確保しなければなりません。

次に「カネ(資金)」です。事業開始に必要な資金(人件費、燃料費、車両費などの6ヶ月〜1年分)を確保していることを証明する「残高証明書」が必要です。

目安として最低でも500万円、規模によっては1,000万円以上の預金残高が求められます。

最後に「ヒト」です。国家資格である「運行管理者」と「整備管理者」を配置し、さらにドライバーも5人確保(兼務不可の場合あり)する必要があります。

黒ナンバーの手軽さと単価の限界の現実

一方、軽貨物(黒ナンバー)は比較的に容易に開業できます。

軽自動車(バンやトラック)を用意し、運輸支局に届け出を出すだけで、費用も数千円程度で済みます。

AmazonなどのEC配送需要の爆発的増加により、仕事自体は豊富にあります。

しかし、軽貨物には「積載量の限界(350kg)」があり、それが売上の限界に直結します。

どんなに頑張っても、1回に運べる量が少ないため、大型トラックのような高単価案件は受けられません。

数をこなすための長時間労働になりがちで、体を壊すと収入がゼロになるリスクもあります。

軽貨物は「入り口」としては優秀ですが、一生続けるビジネスモデルとしては体力的な限界があることを理解しておきましょう。

トラック起業に必要な資金はいくら?シミュレーション公開

「トラックを買う金さえあれば始められる」と思っていませんか?

運送業の開業には、車両代金以外にも見えないコストが山のようにかかります。

また、運送業特有の「入金サイト(支払いサイクル)」の問題もあり、売上が上がっても現金が入ってくるのは数ヶ月先ということも珍しくありません。

資金ショート=黒字倒産を防ぐためには、緻密な資金計画が不可欠です。

ここでは、中古の4トントラックで独立を目指す場合(一般貨物の許可取得を前提としない、持ち込み等のケースを含む)の現実的な初期費用をシミュレーションします。

車両購入費・駐車場・保険…開業前にかかる初期費用一覧

以下は、中古トラック1台でスタートする場合の概算費用です。

車両の状態や保管場所によって変動しますが、最低でもこれくらいの現金は手元に必要です。

特に注意したいのが「任意保険」です。営業用ナンバー(緑・黒)の保険料は自家用車に比べて非常に高く、年齢や等級によっては年間数十万円〜100万円近くになることもあります。

ここをケチって補償を薄くすると、たった一度の事故で人生が終わります。

また、ナビやドラレコ、積み荷を固定するラッシングベルトなどの備品代も地味にかさむため、余裕を持った予算組みが必要です。

項目 概算費用 備考
中古トラック購入費 300万〜500万円 4トンウィング等を想定。頭金が必要な場合も。
車両整備費 20万〜50万円 タイヤ交換、オイル交換、点検など。
任意保険料(初年度) 30万〜60万円 一括払いか分割か要確認。
駐車場契約・敷金 10万〜30万円 大型車可の物件は敷金が高い傾向。
会社設立・届出費用 20万〜30万円 法人化する場合の登録免許税など。
合計目安 約380万〜670万円 ※運転資金は含まず

運転資金は3ヶ月分必要?入金サイトの罠

初期費用以上に重要なのが「運転資金」です。

運送業界の商習慣として、運賃の支払いは「月末締め翌々月払い(約60日後)」などが一般的です。

つまり、今日働いた分の給料が入ってくるのは2ヶ月後です。

しかし、燃料代(ガソリン・軽油)や高速道路料金、車両のローン返済は待ってくれません。

これらを立て替えるための資金が尽きると、トラックは動かせなくなります。

最低でも「売上がゼロでも3ヶ月間は経費と生活費を払えるだけの現金」を用意しておくのが鉄則です。

燃料カード(ガソリンカード)も、開業直後の個人事業主では審査が通らないことが多いため、最初は現金払いになるのでその点は留意しておきましょう。

5台も集められない人が独立するための裏ルート

「5台もトラックを買う金はない。でも、軽貨物ではなく大きなトラックで稼ぎたい」。そんな人が取るべき戦略は、正面から緑ナンバーを取りに行くことではありません。業界には、資金力が乏しい個人でも参入できる「抜け道」や「ステップアップの手順」が存在します。

ただし、これらは知識がないと法的な落とし穴にハマる危険性もあります。

ここでは、合法的に実績を積み、将来的な一般貨物許可取得につなげるための現実的なアプローチを紹介します。いきなり頂上を目指すのではなく、まずはベースキャンプを作る発想です。

まずは利用運送(水屋)から始める選択肢

トラックを持たずに運送業を始める方法として「利用運送事業(第一種貨物利用運送事業)」があります。通称「水屋(みずや)」と呼ばれ、荷物を運んでほしい荷主と、空いているトラックを持つ運送会社をマッチングさせる手配師のような仕事です。

これならトラックも車庫もドライバーも不要で、登録要件も一般貨物に比べて格段に低いです(資産基準300万円など)。

まずは水屋として独立し、荷主とのパイプを作り、利益を蓄えながら少しずつ自社トラックを購入して5台揃え、満を持して一般貨物の許可を取るというルートは、非常に堅実で賢い戦略です。

協力会社として既存の運送会社の下請けに入り実績を作る

どうしても最初からハンドルを握りたい場合は、信頼できる運送会社の「専属傭車(ようしゃ)」や「協力会社」として契約する方法があります。

ただし、個人事業主が自分の白ナンバーのトラックで運送行為をして報酬を得ることは法律で禁止されています。

そのため、形式上はその運送会社に車両を持ち込んで「緑ナンバー」をつけてもらい、その会社のドライバー(または個人事業主扱い)として稼働する形をとることが多いです。

しかし、これは実質的な「名義貸し」とみなされるリスクがあり、摘発されれば許可取り消しなどの重い処分が下ります。

完全にコンプライアンスを守るなら、まずは法人を設立し、正規の手順で許可を目指すのが遠回りのようで一番の近道です。

良いトラックを買っても荷主がいなければタダの鉄塊

トラック起業で失敗する人の典型例は、「ピカピカのトラックを買ってから営業を始める」パターンです。

トラックは持っているだけで税金、保険、駐車場代がかかる「金食い虫」です。

荷物がなければ、それは資産ではなく負債でしかありません。成功する起業家は、トラックを買う前に荷主を見つけています。

「もし私が独立したら、今の仕事をそのまま発注してくれますか?」と、現職時代から根回しをしているのです。

ここでは、車両というハードではなく、営業力というソフトの部分に焦点を当て、安定した売上を作るための方法を解説します。

マッチングサイト頼みは危険?直請け営業の基本

「ハコベル」や「トラボックス」などの求荷求車(マッチング)サイトは便利ですが、これだけに依存するのは危険です。

なぜなら、サイト上の案件はスポット(単発)が多く、手数料が引かれるため利益率が低いからです。

また、ライバルとの価格競争になりやすく、常にスマホをチェックして案件を取り合う消耗戦になります。

安定経営を目指すなら、やはり「直請け(荷主との直接契約)」がベストです。

地元の製造業、食品加工場、建材メーカーなどに足を運び、「緊急時の配送」や「定期ルート便」の提案を行いましょう。

大手運送会社が断るような「面倒な仕事(早朝、荷積み・荷降ろし作業あり等)」こそが、個人が入り込む隙間です。

下請け脱却!単価交渉ができる経営者になるために

最初は下請け(二次請け、三次請け)からのスタートでも構いませんが、いつまでもそこに留まっていてはジリ貧です。

元請け会社に中抜きされた運賃では、車両の更新もままならず、事故を起こした瞬間に倒産します。

単価交渉をするためには、相手にとって「代わりのきかない存在」になることです。

「あいつに頼めば絶対に遅れない」「荷扱いが丁寧でクレームがない」という信頼を積み重ねることが、最強の交渉材料になります。

また、原価計算(1km走るのにいくらかかるか)を正確に行い、「燃料費がこれだけ上がったので、〇円上げてください」と数字で交渉できる経営者になりましょう。

論理で話せるドライバーは、荷主からも一目置かれます。

まとめ:失敗しないための事業計画書を作ろう

トラック起業は、勢いや根性だけで成功できる時代は終わりました。

資金計画、許可取得のスケジュール、営業戦略、そしてリスク管理。

これらを統合した「事業計画書」がなければ、銀行から融資を受けることも、安定して経営を続けることも難しいです。

しかし、多くのドライバー上がりの起業家は、この「計画作り」が苦手で、どんぶり勘定のまま走り出し、資金ショートで挫折してしまいます。

まずは事業計画書を作り、具体例な資金や事業スケジュールを練りましょう。

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