2025.11.11 起業ガイド
放課後等デイサービス起業とは?認可申請5つの流れと4つの条件
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「今の福祉・教育現場の働き方で、自分の専門性を本当に活かせているのだろうか…」
「子どもたちの成長にもっと深く関わりたい。自分の理想とする支援を形にできないか…」
放課後等デイサービスでの起業に魅力を感じながらも、「開業に必要な認可申請や人員・設備基準といった複雑なルールをクリアできるだろうか」「自己資金だけでは足りないけど、融資や助成金はどう活用すればいいの?」といった悩みを抱える方は少なくありません。
今回は、放課後等デイサービスの起業を本気で検討している方が直面する課題や不安を解消し、開業後に後悔しないための具体的な手順と事業継続のポイントを解説します。
記事を読めば、あなたの持つ専門性を活かし、地域に貢献しながら理想の放課後等デイサービスを築くための方法が明確になります。
放課後等デイサービスは障害のある就学児童の放課後支援を行う事業
放課後等デイサービスは、障害のある小学生から高校生まで(6歳〜18歳)の就学児童が、放課後や夏休みなどの長期休暇中に利用する福祉サービスです。
単に子どもを預かる場所ではなく、一人ひとりの特性に合わせた発達支援を提供し、子どもたちの自立と社会参加を促す重要な役割を担っています。
対象となる子どもとサービス内容
対象となる子どもは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)などのある就学児童です。
サービスの利用には、お住まいの市区町村が発行する「通所受給者証」が必要となります。
具体的なサービス内容は事業所によって特色がありますが、主に日常生活動作の指導、集団生活への適応訓練、創作的活動や作業活動の提供、地域交流の機会の提供などが行われます。
子どもたちが安心して過ごせる居場所を提供し、様々な経験を通じて成功体験を積み重ねられるよう放課後等デイサービスでは支援します。
事業の位置づけと社会的な意義
放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業の1つです。
共働き世帯の増加や発達障害への理解の深まりを背景に、ニーズは年々高まっています。
2012年の制度開始以来、事業所数・利用者数ともに増加傾向にあり、今後も安定した需要が見込まれる市場です。
放課後等デイサービスは、子どもたちの成長を支えるだけでなく、保護者のレスパイトケア(休息)の役割も担っています。
保護者が自分の時間を持つことで、心にゆとりを持って子どもと向き合えるよう支援することも、大切な社会貢献といえます。
放課後等デイサービス起業に必要な厳しい4つの基準
放課後等デイサービスを起業するには、誰でもすぐに始められるわけではなく、児童福祉法に基づいた厳格な基準をクリアし、都道府県または市から「指定事業者」としての指定を受ける必要があります。
ここでは、開業前に必ず理解しておくべき4つの基準について解説します。
1. 法人格を取得して立ち上げること
放課後等デイサービスは、個人事業として開業することは認められていません。
事業を始めるには、必ず「法人格」を取得する必要があります。
法人格にはいくつかの種類がありますが、多くの場合は「株式会社」や「合同会社」といった営利法人、または「NPO法人(特定非営利活動法人)」「一般社団法人」などの非営利法人を設立します。
それぞれ設立費用や手続き、運営上のルールが異なるため、ご自身の事業計画や理念に合った法人形態を選択することが重要です。
2. 所定の人員配置・資格条件を満たすこと【経営者に資格は不要】
放課後等デイサービスの事業所運営には、専門的な知識や経験を持つスタッフの配置が義務付けられています。
前提として、経営者(オーナー)自身に特定の資格は求められません。しかし、事業所には以下の職種を、定められた人数で配置する必要があります。
- 管理者
- 児童発達支援管理責任者
- 児童指導員または保育士
事業所には、管理者として1名を配置し事業所全体の管理業務を担います。
また、個別支援計画の作成など支援の核となる児童発達支援管理責任者を1名以上、指導・訓練の時間帯には児童指導員または保育士を2名以上(定員10名の場合)配置することが必要です。
各職種にはそれぞれ資格や実務経験の要件があるため、基準を満たす人材を確保することが不可欠です。
3. 設備・物件要件を満たしていること
子どもたちが安全かつ快適に過ごせるよう、放課後等デイサービスでは施設や設備に関する基準も定められています。
主に以下のスペースを確保できる物件が必要です。
- 指導訓練室
- 相談室
- 事務室
支援のメインとなる部屋である指導訓練室は、利用者一人あたり2.47㎡以上の面積が必要です。
また、プライバシーに配慮し保護者と安心して面談できる空間として、パーテーションなどで区切られた相談室も設置します。
職員が事務作業を行うための事務室も必要です。その他、洗面所やトイレなども衛生的に利用できるよう整備しなくてはなりません。
物件探しの際は、これらの設備基準をクリアできるかを必ず確認します。
4. 管理責任者やスタッフの採用・配置体制が整っていること
放課後等デイサービスの質は、スタッフの専門性や人柄に大きく左右されます。
特に、個別支援計画を作成する「児童発達支援管理責任者(児発管)」は事業所の要となる存在です。
児発管は資格要件が厳しく、採用が難しい職種でもあります。
そのため、事業計画の早い段階から採用活動に着手することが必要です。
また、単に人数を揃えるだけでなく、子どもたちの特性に合わせた支援を提供できる、経験豊かで意欲のあるスタッフを集め、適切な研修を行う体制を整えることも重要です。
放課後等デイサービス起業と認可申請までの6つの流れ
ここでは、放課後等デイサービスの起業を決意してから、実際に事業を開始するまでの具体的な手順を6つのステップに分けて解説します。
開業準備には、およそ半年から1年程度の期間を見込んでおくことが必要です。
1. 必要な法人の設立と事業目的の確認
放課後等デイサービスの起業では事業の母体となる法人を設立することが必要です。
株式会社、合同会社、NPO法人など、どの法人形態を選ぶかを決定し、定款の作成や登記申請といった手続きを進めます。
この際、法人の定款に記載する「事業目的」に、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業を行う旨を明記しておくことが必要です。
この記載がないと、指定申請が受理されません。司法書士などの専門家に相談しながら進めると、スムーズに手続きを完了できます。
2. 初期費用・運転資金の目安と開業資金の調達【助成金や融資】
放課後等デイサービスを始めるには、十分な資金計画が不可欠です。
必要な資金は大きく分けて「初期費用」と「運転資金」の2つがあります。
初期費用は、法人設立費、物件取得費(敷金・礼金)、内装工事費、備品購入費(事務用品、教材、送迎車など)を含み、500万〜1,000万円程度が目安です。
| 項目 | 主な内容・目安 | 金額例 |
|---|---|---|
| 法人設立費用 | 登録免許税・定款認証代 | 約20万円(株式会社)、約6万円(合同) |
| 不動産賃貸費用 | 敷金・礼金・仲介手数料 | 300万円以上(都市部家賃15〜20万円/月) |
| 内装修繕費 | 壁紙、設備改修、消防対策 | 100万円〜200万円以上 |
| 備品購入費 | 机・椅子・PC・教材等 | 100万円以上 |
| 送迎車購入費 | 車両2〜3台、保険込み | 350万円以上 |
| 保険費用 | 賠償・火災保険等 | 約8万円 |
| 求人広告費 | 採用活動(求人媒体等) | 50万円 |
| 集客・営業費 | HP・パンフレット・名刺作成等 | 50万〜70万円 |
| 運転資金(3ヶ月分) | 人件費・家賃・光熱費等 | 100万〜110万円/月 × 3ヶ月 |
一方、放課後等デイサービスの運転資金は、人件費、家賃、水道光熱費など月々の運営費です。
サービスの対価である報酬は、サービス提供の約2ヶ月後に入金されるため、少なくとも3ヶ月分以上の運転資金を準備しておく必要があります。
自己資金で不足する場合は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」などの融資や、返済不要の助成金・補助金の活用を検討します。
3. 行政基準を満たす物件選び・設備準備
放課後等デイサービスの資金調達の目処が立ったら、次は事業所の拠点となる物件を探します。
先に解説した「設備基準」を満たすことはもちろんのこと、その他にも、子どもたちが通いやすい立地であるか、送迎車の駐車スペースが確保できるかといった点には考慮が必要です。
また、建物の用途が「事務所」や「店舗」となっているか、消防法の基準をクリアしているかも確認が必要です。
気に入った物件が見つかったら、内装工事を行い、指導訓練室や相談室などを基準通りに整備していきます。
4. 指定基準に合った職員採用と配置
物件の準備と並行して、放課後等デイサービスのスタッフ採用活動を進めます。
「人員基準」で定められた資格を持つ専門職の確保が必要です。
特に、実務経験が豊富な児童発達支援管理責任者や児童指導員は、放課後等デイサービスの質の高いサービスを提供するうえで欠かせません。
求人広告を出す際は、どのような支援を目指しているのか、事業所の理念やビジョンを明確に伝えることで、想いに共感する意欲の高い人材が集まりやすくなります。
採用が決まったら、雇用契約を結び、開業に向けた研修などを実施していきます。
5. 申請書類の作成・自治体への提出と審査対応
法人、物件、人員のすべての準備が整ったら、いよいよ管轄の行政窓口(都道府県または市)へ放課後等デイサービスの指定申請を行います。
申請には、申請書をはじめ、定款、従業員の勤務体制一覧表、事業所の平面図、運営規程など、多くの書類が必要です。
書類に不備があると、開業時期が遅れてしまう可能性もあります。
そのため、提出前に自治体の担当窓口へ事前相談に行き、念入りに確認することが重要です。
申請後、書類審査や現地確認を経て、問題がなければ指定事業所として認可されます。
6. 事業開始と難しい利用者受入れ・管理体制の構築
行政から指定通知書が交付されれば、晴れて放課後等デイサービス事業を開始できます。
指定申請の準備と並行して、開業後すぐに利用者が来てくれるよう、地域の相談支援事業所へ挨拶回りをするなどの営業活動も行います。
事業開業後は、個別支援計画に基づいた質の高いサービスを提供することはもちろん、利用者情報の管理や国保連への請求業務など、適切な管理体制を構築し、運営していくことが必要です。
放課後等デイサービス起業と自治体ごとの認可枠・規制4つのポイント
放課後等デイサービスの起業を考えるうえで、全国一律の基準だけでなく、事業所を開設する自治体独自のルールを理解しておくことが重要です。
地域によっては、新規参入が難しくなっているケースもあります。ここでは、エリア選定で失敗しないための4つのポイントを解説します。
1. 地域を選ぶ際の注意点
まず、起業を希望するエリアで、本当に放課後等デイサービスの需要があるのかを調査することが大切です。
市区町村が公表している障害福祉計画などを確認し、地域の障害児数や既存の事業所数を把握します。
競合となる放課後等デイサービス施設が多い地域では、利用者獲得が困難です。
一方で、事業所が少なく、待機児童が発生しているような地域であれば、安定した運営が見込めます。
市場調査を徹底し、事業の将来性を見極めることが、地域選びには必要です。
2. 指定事業者基準の厳格化と条例への対応が難しいケース
近年、放課後等デイサービスの事業所数が急増したことを受け、サービスの質を確保するために、国や自治体は指定基準を厳格化する傾向にあります。
さらに、自治体によっては、国の基準に上乗せする形で独自の条例を定めている場合もあります。
例えば、人員配置を手厚くすることや、建物の構造に関する追加の基準です。
また、一部の自治体では、事業所が飽和状態にあるとして、新規の指定を一時的に停止する「総量規制」を行っているケースもあります。
例えば、兵庫県芦屋市のように、原則として新規開設が認められない地域も存在するため、必ず開業希望の自治体へ事前確認が必要です。
3. 行政相談と認可取得の方法
自治体ごとの複雑なルールを正確に把握し、スムーズに認可を取得するためには、行政とのコミュニケーションがポイントです。
自己判断で準備を進める前に、まずは管轄の障害福祉担当課へ「放課後等デイサービスを開業したい」と相談に行くことをおすすめします。
事前相談では、その地域独自のローカルルールや、申請手続きのスケジュール、必要書類の詳細などを確認できます。
行政の担当者と良好な関係を築き、助言をもらいながら準備することが、認可取得をスムーズに進めるためのポイントです。
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4. 制度変更による影響と対策事例
障害福祉サービスは、国の政策や社会情勢を反映して、数年ごとに制度改正(報酬改定)が行われます。
報酬単価が変更されたり、新たな加算制度が設けられたりすることで、放課後等デイサービス事業所の収益構造は大きく変化します。
例えば、過去の改定では、専門職員の配置や支援内容の評価に応じて報酬が変動する仕組みが強化されました。
起業する際は、将来的な制度変更にも柔軟に対応できる事業計画を立てておくことが重要です。
常に最新の情報を収集し、サービスの質を高める努力を続けることが、長期的に安定した経営につながります。
放課後等デイサービス起業後の運営課題3つ
無事に放課後等デイサービスが起業できたとしても、すべての事業所が順風満帆に運営できるわけではありません。
経営を軌道に乗せ、継続していくためには、開業後に待ち受ける3つの課題をクリアする必要があります。
1. 利用者募集と営業活動
1つ目の課題は、放課後等デイサービスを開設しても、自然に利用者が集まるとは限らない点です。
質の高い支援を提供していても、存在を知ってもらえなければ意味がありません。
利用者募集(集客)は、経営者が直面する最初の課題です。
効果的な営業活動には、地域の相談支援専門員との連携が不可欠です。
地域の相談支援事業所を訪問し、自社の支援内容や理念を丁寧に説明して信頼関係を築くことが、利用者の紹介につながります。
また、保護者向けの事業所見学会や体験会を定期的に開催し、施設の魅力を直接伝えることも有効な手段です。
2. 収支モデルの見通し【平均利益率は5.9%】
放課後等デイサービスを継続するためには、安定した収益を確保することが不可欠です。
厚生労働省の「令和4年障害福祉サービス等経営概況調査」によると、放課後等デイサービスの平均収支差率(利益率)は5.9%となっており、黒字経営は十分に可能です。
しかし、これはあくまで平均値であり、赤字に陥る事業所も少なくありません。
安定経営のためには、稼働率(定員に対する実際の利用者数の割合)をいかに高く維持するかが重要です。
人件費や家賃といった固定費を常に意識し、無駄な支出を削減するとともに、利用者一人ひとりの満足度を高め、継続利用につなげる努力が求められます。
3. 保護者・地域連携の進め方
放課後等デイサービスの運営は、事業所内だけで完結するものではありません。
子どもの成長を支援するためには、保護者との密な連携が不可欠です。
日々の送迎時の情報共有や定期的な面談を通じて、家庭での様子を把握し、支援方針を共有することが信頼関係の基礎となります。
また、学校や他の福祉サービス事業所、医療機関など、地域の関係機関と連携し、チームとして子どもを支える体制を築くことも重要です。
地域に開かれた事業所として、イベントなどを通じて積極的に交流を図ることが、事業所の評価を高め、安定した運営につながります。
まとめ:放課後等デイサービス経営者として理想の起業を実現しよう
本記事では、放課後等デイサービスの起業に必要な基準から、開業までの具体的な流れ、そして運営を成功させるためのポイントまでを解説しました。
放課後等デイサービスは、社会的な意義が大きく、やりがいのある仕事ですが、その一方で、安定した経営のために綿密な準備と戦略が求められます。
しかし、福祉・教育の現場で培ってきたあなたの豊富な経験と、子どもたちを支援したいという強い想いは、何物にも代えがたい資産です
本記事で得た知識をもとに、ご自身の理想とする支援の形を明確にし、事業計画を具体化してみましょう。
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そんなお悩みもあるかと思います。スタートアップアカデミーでは、公式LINEで無料相談会を実施しています。
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