2025.12.21 起業ガイド
公務員の起業&転職ロードマップ-失敗を防ぐ考え方と準備を解説
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公務員として働きながら、「このままでいいのだろうか」と感じたことはありませんか。安定はあるものの、将来の選択肢が見えにくい。
そんな時に起業や転職を考える人も多いのではないでしょうか。ですが、情報の多さに戸惑いなかなか行動に移せないという人も多いと思います。
転職や起業は、大きな決断に思えるかもしれませんが、いきなり答えを出す必要はありません。
公務員として積み重ねた経験が、どのように外で評価されるのか。その現実を知ることが第一歩です。
本記事では、制度や市場背景を整理しながら、無理なく起業や転職に進む考え方を解説します。
今はまず、自分に何ができるのかを知るところから始めてみてください。
公務員の起業や転職に可能性はあるのか?
この章では、「公務員の経験は外で通用するのか」という疑問を整理します。
世の中の変化や働き方の動向を確認しながら、今、公務員の経験に注目が集まっている理由を見ていきます。
公務員の経験が求められている背景
公務員の経験そのものが市場で評価される場面は確実に増えています。
その背景には、個人の能力というより、社会全体の構造変化があります。
まず押さえておきたいのが、業務の複雑化、多様化した業務への対応の遅れの問題です。多くの企業が「業務を設計し、関係者を調整しながら進める人材が足りていない」と悩んでいます。
単に業務に特化した人材ではなく、ルールや現場事情を踏まえて物事を前に進められる人が不足している状況です。
民間企業の現場では、次のような内容もよく出る課題です。
- 書類や手続きが複雑で、業務が滞る
- 行政対応の進め方が分からない
- 部門間や利害関係者の調整役がいない
これらは、公務員が日常業務の中で当たり前に行ってきた仕事と重なります。利害を整理し、文章にまとめ、ルールを守りながら合意点を探す力です。
本人にとっては特別なスキルではなくても、外から見ると再現性の高い仕事能力として評価されやすい領域です。
起業・独立に踏み切る人は増えている
次に、働き方の選択肢そのものがどう変わっているのかを整理します。
起業や独立は特別な人の話、そう感じている人も多いかもしれません。
ただ、統計を見ると、考え方は少し変わってきています。
副業や追加就業を行う人の数は増加傾向にあります。
複数の収入源や役割を持つ働き方が、徐々に一般化してきました。
公務員も例外ではありません。
終身雇用への考え方が変わり、中堅年代以降のキャリアに不安を感じる人が増えたことで、すぐに公務員を辞めるわけではなくても、副業などの選択肢を知ろうとする動きが広がっています。
あなたも今の働き方に悩み始めた時点で、すでに一歩目は踏み出しています。
公務員が起業した後の収入はどう変わる?
この章では、公務員の収入はどのように決まり、独立後の収入は何によって左右されるのか、収入の仕組みの違いを整理します。
比較のポイントを明確にすることで、冷静な判断がしやすくなります。
行政職の年収レンジと「安定」の正体
公務員の収入を考える際、まず理解しておきたいのが「安定」の中身です。
ここでの「安定」とは収入が高いことではなく、未来予測が立てやすいことを指します。
東京都の一般行政職の平均給与月額は約47万円、平均年齢は40代前半です。
年換算するとおおよそ500万円台後半が一つの目安となります。給与実態調査を見ても、年齢や経験年数に応じて給与レンジが緩やかに上がっていく構造が確認できます。
この構造の特徴は、次の点にあります。
- 毎月の収入が大きく変動しにくい
- 賞与や昇給が制度として組み込まれている
- 長期的な見通しを立てやすい
一方で、収入の伸び幅はあらかじめ設計されており、成果や工夫によって急激に増えることは想定されていません。
ただ、起業や転職を考える際、この収入の仕組みが悪だという安易な判断を下すことで、「早く起業して収入を上げたい」という無計画な行動に移ってしまうのは危険です。
ここでは仕組みの良し悪しではなく、収入の性質の違いとして捉えておいてください。
起業後の収入は何で決まるか
起業や転職後の収入を考えるとき、「どれくらい変わるのか」という金額だけに目が向きがちです。
ただ、実際には収入の決まり方そのものが、公務員時代とは大きく異なります。
事業所得の分布は非常に幅広く、一定の平均値で語れるものではありません。
これは、起業後の収入が次の三つの要素によって左右されるためです。
- ①誰の困りごとを対象にするか
- ②どのような課題を扱うか
- ③その負担をどれだけ軽くできるか
たとえば、月に5万円、10万円、30万円といった収入の違いは、作業量の差ではなく、提供している価値の置き方から生まれます。
そして、ここで押さえておきたいのは、すぐにでも大きな事業を起こして最初から生活をすべて賄う必要はないという点です。
副収入レベルから試し、無理のない範囲で経験を積むといった選択肢も十分に現実的です。
収入をどう増やすかより、どのような形なら続けられるかを意識してください。
起業・転職で失敗する人の共通点と、公務員が避けるべき地雷
この章では、起業した人が、「どこでつまずきやすいのか」を整理します。
必要以上に怖がる必要はありませんが、公務員という立場だからこそ、事前に避けておきたいポイントがあります。
まず知っておきたい「公務員法でNGなこと」
最初に押さえるべきなのは、公務員法の細かい解釈ではなく、原則の部分です。
国家公務員法・地方公務員法では、営利目的の兼業や報酬を得る活動に制限があります。
ここで重要なのは、「どこまでなら安全か」を把握することです。
-
公務員ができない行動
- 報酬を受け取る業務
- 継続的な営利活動
- 役職名や立場を利用した活動
-
公務員が準備段階として認められやすい行動
- 知識を学ぶ、情報を整理する
- 自分の経験を書き出す
- 条件を守った範囲での情報発信
総務省や各自治体の兼業許可基準を見ても、報酬の発生しない準備行動そのものを問題視していません。あくまで「営利性」と「継続性」が判断の軸になります。ここを外さなければ、大きな事故は避けられます。
起業・転職で失敗しやすい3つの行動パターン
法令を守っていても、別の理由でつまずくケースがあります。起業で多い失敗には、いくつか共通点が見られます。
一つ目は、準備をほとんどしないまま退職してしまうことです。事前の準備期間が短いほど事業の見通しが立たず、その場しのぎの対応で計画が破綻していくケースとなります。
二つ目は、スキルを言葉にしないまま始めることです。自分では当たり前の業務でも、相手に伝わらなければ価値になりません。
経験を整理せずに動くと、方向性を見失いやすくなります。
三つ目は、最初から稼ぐことだけを考えてしまう点です。
短期的な収入を優先すると、無理な選択を重ねがちです。結果として、続けられなくなるケースも少なくありません。
これらは能力の問題ではなく、避け方を知っていればコントロールできる要素です。
起業や転職の前に、多くの失敗談を見ることもあるかと思いますが、それらの情報は怖がる材料ではなく、安全に進むためのヒントとして受け取ってください。
公務員が起業・転職前にやるべき準備
この章では、「今確実にできること」を整理します。
起業という夢に意識を引っ張られず、公務員退職前にできる準備と、無理のない収入イメージを切り分けて考えることがポイントです。
退職前にできる準備チェックリスト
起業準備というと、特別な手続きや資金を想像しがちです。
ただ、最初にやるべきことは、もっと地味な作業です。事業の成否は準備段階の整理に左右されますので、着実な一歩目を踏んでください。
退職前にできる準備は、次の三つに分けられます。
-
①経験の棚卸し
- 相談を受けた相手
- 手続きが楽になった場面
- 調整がうまく進んだ経験
- これまでの仕事を「業務内容」ではなく、「誰の負担をどう軽くしたか」という視点で書き出します。
こうした整理が、後の方向性を決める土台になります。
②小さな学習
- いきなり資格や高額な講座に手を出す必要はありません。書籍やオンライン講座など、低コストで試せる範囲から始めてください。重要なのは、学んだ内容を自分の経験と結びつけることです。
③発信・相談
- 匿名でのアイディア発信や、信頼できる相手への相談も準備の一部です。反応を見ることで、独りよがりな判断を避けられます。
これらの三つは、今日からでも着手できます。大きな決断より、小さな行動が優先です。
最初に狙うべき収入ラインと考え方
次に考えたいのが、収入の目安です。
ここで注意したいのは、「いくら稼ぐか」ではなく、「どの段階を目指すか」という考え方です。
多くの起業家が開業初期は副収入レベルから始め、段階的に広げていくというステップを踏みます。
そして、月数万円レベルの収入であっても、次のような意味を持ちます。
- 価値の提供が成立しているか確認できる
- 生活を大きく崩さずに試せる
- 継続できるかどうかを判断できる
ここで大切なのは、時間と精神的な余裕です。
無理に収入を引き上げようとすると、判断が荒れやすくなります。
まずは無理なく続けられる形を作り、その延長線上で高い収入を考えましょう。
起業は一発勝負ではありません。設計次第で、試しながら進める選択肢もあります。
現実的なラインを意識することが、長く続けるためのポイントです。
まとめ:起業や転職前にしっかり準備しよう
ここまで、公務員から転職や起業を考える際に、多くの人がつまずきやすいポイントを整理してきました。
大切なのは、勢いで結論を出すことではなく、判断できる材料をそろえることです。起業や転職は、しっかり準備したあとに決めても遅くありません。
また、公務員の経験は、社会の変化と重なり、市場で評価されやすい場面が増えています。まずは、自分の経験を書き出し、学び、考えるところから始めてみてください。
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