2026.09.29 起業ガイド
土建屋は儲かる? 利益率・年収のデータと、儲かる会社・潰れる会社の違い
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「地元の土建屋の社長は、みんな高級車に乗っている」。
そんなイメージを持っている人は多いかもしれません。実際、建設業の利益率はここ数年上がっていて、公共工事の予算も増えています。
ところが、建設業の倒産は4年連続で増えています。
この記事では、公的統計をもとに土建屋が儲かる理由と儲からない理由を整理し、独立・開業するときのポイントまで解説します。
土建屋とは? 土木と建築の両方を担う建設会社
土建屋は「土木建築業者」を略した通称です。道路、河川、造成、上下水道といった土木工事と、建物の基礎や外構などの建築工事を手がける地域の建設会社を指します。
建設業許可の区分でいえば、「土木工事業」「とび・土工・コンクリート工事業」「建築工事業」などが中心です。
| 許可業種 | 許可業者数(2025年3月末) | 主な工事 |
|---|---|---|
| とび・土工・コンクリート工事業 | 183,700 | 掘削、盛土、基礎、足場、杭打ち、コンクリート打設 |
| 建築工事業 | 143,593 | 建築一式工事(元請として建物全体を取りまとめる) |
| 土木工事業 | 131,889 | 土木一式工事(道路、河川、造成などを元請として取りまとめる) |
出典:国土交通省「建設業許可業者数調査」(2025年3月末時点。1社が複数の業種の許可を持つため延べ数)。全体の許可業者数は483,700業者 https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00296.html
土建屋は儲かる? データで見る業界の実態
市場規模:建設投資は81.5兆円で拡大が続く
| 区分 | 2025年度(見込み) | 2026年度(見通し) | 前年度比 |
|---|---|---|---|
| 建設投資の総額 | 79兆1,800億円 | 81兆4,700億円 | +2.9% |
| 土木(政府・民間の合計) | 28兆200億円 | 28兆5,200億円 | +1.8% |
| うち政府の土木 | 18兆4,700億円 | 18兆5,800億円 | +0.6% |
| うち民間の土木 | 9兆5,500億円 | 9兆9,400億円 | +4.1% |
出典:国土交通省「令和8年度(2026年度)建設投資見通し」(2026年8月31日)https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001389.html
土木投資のうち約65%は国や自治体が発注する公共工事です。2026年度からは、国土強靱化の実施中期計画(5年間でおおむね20兆円強の事業規模)が始まりました。防災、インフラの老朽化対策、上下水道の更新といった仕事は、今後も底堅く続く見込みです。
利益率:業界平均は改善しているが、小規模ほど厳しい
財務省の法人企業統計調査によると、2025年度の建設業の売上高経常利益率は6.7%で、前年度から1.3ポイント上がりました。ただし、この数字は大手ゼネコンを含む平均です。
中小の建設会社を対象にした建設業情報管理センターの経営分析を見ると、規模による差がはっきり出ています。
| 区分(中小建設会社・2023年度) | 売上高経常利益率 |
|---|---|
| 全体 | 2.49% |
| 土木工事業 | 2.58% |
| 売上高5,000万円未満の会社 | ▲2.45%(赤字) |
| 売上高20億円以上の会社 | 5%台後半 |
出典:建設業情報管理センター「建設業の経営分析(令和5年度)概要版」https://www.ciic.or.jp/wp-content/uploads/2025/01/bunseki_R05_gaiyouban.pdf(経営事項審査を受けた中小法人約4.4万社が対象)
売上高が大きい会社ほど利益率が高く、売上5,000万円未満の層は平均で赤字です。「土建屋は儲かる」というイメージは、地域で元請として公共工事を受注する、一定規模以上の会社に当てはまるものと考えるのが実態に近いでしょう。
土建屋が儲かると言われる5つの理由
1. 公共工事で売上が安定する
公共工事は予算にもとづいて毎年発注されます。
入札参加資格を取って地元で実績を積めば、景気に左右されにくい売上の柱になります。代金を取りはぐれるリスクがほぼないのも大きな利点です。
2. 労務単価が14年連続で上がっている
公共工事の積算に使われる設計労務単価は、2026年3月の改定で全職種の加重平均が25,834円になり、14年連続で引き上げられました。
職種別では、普通作業員が23,605円、特殊作業員が28,111円、運転手(特殊)が29,442円です。発注額の基準が上がれば、そのぶん受注単価も上がります。
出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001981942.pdf
3. 人手不足で「施工できる会社」の価値が上がっている
建設業で働く人は、55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%しかいません。
職人と施工管理の担い手が減るなか、元請は信頼できる協力会社を囲い込もうとしています。「施工力」そのものが希少な資源になり、価格交渉がしやすくなっています。
4. 重機・許可・実績が参入障壁になる
土木工事には、重機、ダンプ、建設業許可、経営事項審査の点数、施工実績が必要です。
新しく参入する会社がすぐにそろえられるものではないため、地域で基盤を築いた会社は競争から守られやすくなります。
5. 自社で施工できる範囲が広いほど粗利が残る
掘削、運搬、基礎、外構まで自社の人員と重機でこなせれば、外注費を抑えて粗利を確保できます。自社で持つ重機の稼働率が高いほど、利益率は上がります。
一方で「儲からない土建屋」が増えている
東京商工リサーチによると、2025年の建設業の倒産は2,014件でした。4年連続で増え、12年ぶりに2,000件を超えています。
| 項目 | 2025年のデータ |
|---|---|
| 建設業の倒産件数 | 2,014件(前年比+4.6%) |
| うち職別工事業(とび、大工、塗装など) | 814件(全体の40.5%で、初めて総合工事業を上回った) |
| うち総合工事業(土木、建築) | 774件 |
| 従業員(代表者を含む)が1〜4人の会社 | 1,522件(74.3%) |
| 従業員10人未満の会社の合計 | 1,873件(91.4%) |
出典:東京商工リサーチ「止まらない建設業の倒産、職別工事が総合工事を抜く」(2026年7月6日)https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203016_1527.html
倒産の9割以上は従業員10人未満の小さな会社で、特に下請が中心の専門工事業者が目立ちます。倒産しやすい会社には共通点があります。1社の元請に売上を頼っていて価格交渉ができないこと。資材費や燃料費の上昇を請負価格に転嫁できないこと。そして、工事代金の入金より先に外注費や材料費の支払いが来て、資金繰りが回らなくなることです。
土建屋の年収:作業員と社長でこれだけ違う
厚生労働省のjob tagによると、建設・土木作業員の平均年収は415.1万円です。重機オペレーターや施工管理技士の資格を持つと、年収は上がります。
出典:厚生労働省 job tag「建設・土木作業員」https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/32
社長の収入は、会社の規模と元請比率で大きく変わります。
売上1億円規模で公共工事の元請を持つ会社なら、役員報酬と会社に残る利益を合わせて年1,000万円を超えることは珍しくありません。一方、1人から数人で常用(日当制)の下請だけをしている場合は、作業員時代と収入があまり変わらないこともあります。
収支シミュレーション:従業員4名+社長の土木会社
地方で、公共工事の元請(小規模工事)と民間の造成・外構工事を組み合わせる会社を想定して試算します。
| 項目 | 月額 | 前提 |
|---|---|---|
| 完成工事高(売上) | 800万円 | 年9,600万円 |
| 材料費・外注費・重機リース・残土処分費 | ▲440万円 | 売上の55% |
| 現場の人件費 | ▲160万円 | 4名 × 月40万円(法定福利費を含む) |
| 粗利(完成工事総利益) | 200万円 | 粗利率25% |
| 社長の役員報酬 | ▲60万円 | 年720万円 |
| 事務員の人件費 | ▲25万円 | 経理と書類作成を担当 |
| 車両・燃料・保険 | ▲30万円 | ダンプ、トラック、自社保有の重機 |
| 事務所・資材置場・その他 | ▲35万円 | 通信費、税理士報酬、各種手数料など |
| 営業利益 | 約50万円 | 年約600万円(営業利益率6.25%) |
※試算は一例です。天候、工期、受注の季節変動(年度末に工事が集中しやすい)、重機の購入費や借入の返済は含めていません。
この規模になると、社長の報酬と会社に残る利益を合わせて年1,300万円前後になります。ただし、工事代金は完成してからの入金が多いので、2〜3か月分の運転資金を手元に持っておくことが欠かせません。資金の手当ては創業融資の活用法も参考にしてください。
土建屋として独立・開業するには
建設業許可が必要になるケース
1件の請負金額が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を受けるには、建設業許可が必要です。500万円未満の工事だけなら許可がなくても営業できますが、元請や公共工事の仕事を取るには、事実上許可が欠かせません。
| 主な要件(一般建設業許可) | 内容 |
|---|---|
| 経営業務の管理体制 | 建設業の経営経験が5年以上ある役員などを常勤で置く |
| 営業所技術者(旧:専任技術者) | 施工管理技士などの国家資格、または10年以上の実務経験がある技術者を営業所ごとに置く |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があること |
| 誠実性・欠格要件 | 不正や不誠実な行為をするおそれがないこと、欠格要件に該当しないこと |
| 社会保険への加入 | 健康保険、厚生年金、雇用保険に適切に加入していること |
出典:中小機構 J-Net21「建設業を開業するにあたっての許認可要件」https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/startup/Q0094.html。知事許可を新規に申請する手数料は9万円です。
公共工事を受けるまでの流れ
公共工事の元請になるには、建設業許可を取ったあと、決算ごとに「経営状況分析」と「経営事項審査(経審)」を受けます。
そのうえで、国や自治体に入札参加資格を申請して名簿に登録されると、入札に参加できるようになります。最初は小規模な工事で実績を積み、少しずつ格付け(ランク)を上げていくのが一般的な流れです。
儲かる土建屋になるための4つのポイント
1つ目は、元請の比率を上げることです。下請の常用だけでは単価を決められません。
自治体の小規模な工事や、民間の造成・外構工事を元請として受注できるようになると、粗利が大きく改善します。
2つ目は、取引先を分散させることです。東京商工リサーチの調査でも、好調な小規模業者は品質で信頼を得て、複数の顧客から途切れず受注しているとされています。
1社への依存度が下がるほど、価格転嫁の交渉もしやすくなります。
3つ目は、資格者と若手を確保することです。施工管理技士は経審の点数にも許可要件にも直結します。
受験資格の緩和で若手も早く受験できるようになったので、社員に資格を取ってもらう支援は、そのまま会社の受注力になります。
4つ目は、資金繰りを管理することです。前払金制度を活用し、支払いと入金のタイミングを管理し、工事ごとに原価を把握する。どれも地味ですが、倒産を防ぐいちばんの対策になります。
まとめ
建設投資の拡大、労務単価の上昇、人手不足による施工力の希少化によって、土建屋を取り巻く環境は「儲かりやすい」方向に進んでいます。
一方で、倒産の9割以上は従業員10人未満の会社で、下請依存と資金繰りの弱さが共通の原因です。
土建屋で稼げるかどうかは業界全体の景気よりも、元請比率、取引先の分散、資格者の確保、資金管理という経営の設計にかかっています。

