2025.12.10 起業ガイド
宅配弁当起業は儲からない?小規模から始める配食サービスを解説
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「宅配弁当で起業をしても本当に利益が残るのか」
「原価や人件費、ガソリン代を考えると、自宅キッチンから小さく始めても赤字にならないか」
こんな不安から、興味はあっても具体的な行動に進めない方は少なくありません。
さらに、高齢の親や共働き家庭の食事づくりを支えたい気持ちがあっても、「フランチャイズに加盟すべきか」「自分でメニューを組み立てるか」といった選択や、廃業の話を耳にして迷いが深くなるケースもあるのではないでしょうか。
この記事では、宅配弁当ビジネスの利益構造や必要な販売数、小規模から始めるときのリスクと対策を具体的な数字で整理し、自分の生活を守りながら現実的に成立する宅配弁当起業の始め方を解説します。
宅配弁当ならではの収益モデルと失敗しにくい始め方を具体的に把握できます。
宅配弁当で起業する市場の将来性と今後の需要
高齢者人口が約3,600万人超まで増え続ける日本では、介護予備軍となる75歳以上も急増し、「食の支援サービス」へのニーズは今後も高まります。
加えて、夫婦の約7割が共働き世帯となり、一人暮らし・単身高齢者も増加する中で、「健康に配慮しつつ調理の手間を省きたい」という需要が強まっています。
宅配弁当で起業することは、高齢者配食・共働き家庭・単身者向けの三つの成長市場を同時に捉えられる有望な選択肢と言えます。
高齢者向け配食サービスの安定した需要【高齢者は約3627万人】

出典: 図1 高齢者人口及び割合の推移(1950〜2040年)|総務省統計局
宅配弁当ビジネスが注目される最大の理由は、圧倒的な「高齢者市場」の拡大です。
総務省等のデータによると、日本の65歳以上人口は約3,627万人(総人口の29.1%)に達し、2040年には35.3%まで上昇すると予測されています。
特に買い物や調理が困難になる75歳以上の増加が著しく、配食サービスは一時的なブームではなく、電気やガスと同様の「生活インフラ」として、今後数十年単位で需要が途切れない確実な市場と言えます。
共働き世帯や単身者向けビジネスの拡大【夫婦の約7割が共働き】
高齢者以外にも、現役世代のライフスタイル変化があげられます。
かつての専業主婦世帯に代わり、現在は夫婦の約7割が共働き世帯です。
さらに2040年には全世帯の約4割が単独(一人暮らし)世帯になると予測されています。
「忙しくて料理をする時間がない」「一人分を作るより買った方が効率的」と考える層が増加しており、平日夕食や在宅ワーク中のランチとして、宅配弁当は家事代行に代わる現実的な解決策として定着しています。
健康志向による食事提供ビジネス機会【健康志向45%簡便化38%】
空腹を満たすだけでなく、「健康管理」としての利用価値も高まっています。
日本政策金融公庫の調査では、食の志向として「健康志向(45.7%)」が「経済性(40.8%)」や「簡便化(38.2%)」を上回りトップとなりました。
多くの人が「健康的な食事をしたいが、手間はかけられない」というジレンマを抱えています。
そのため、減塩・低糖質・無添加など、「家庭で作るのが難しい健康メニュー」を提供できれば、大手チェーンとの価格競争に巻き込まれず、個人店でも高単価で選ばれるビジネスチャンスがあります
宅配弁当の起業で考えるべき事業形態3選
宅配弁当で起業すると決めても、事業形態は3つあります。
どのビジネスモデルを選択するかで、初期投資、運営方法、顧客ターゲット、そして収益構造が大きく変わります。
自分の資金力や経験、目指す方向に合った形態を見極めることが必要です。
- フランチャイズ加盟と個人開業
- 自宅や間借り厨房から始める小規模モデル
- 仕出し弁当と日替わり配食サービス
それぞれの特徴を理解し、あなたにとって現実的で成功の可能性が高い方法を選択するための判断材料になります。
フランチャイズ加盟と個人開業
フランチャイズ加盟は、本部が持つブランド力や確立された運営ノウハウを活用できるため、飲食業の経験が浅い人でも比較的スムーズに事業を始められます。
メニュー開発や集客支援を受けられる一方で、加盟金やロイヤリティの支払いが発生し、経営の自由度は低くなります。
対して個人開業は、自分の理念やアイデアをメニューやサービスに直接反映できる自由度の高さが魅力です。
利益はすべて自分のものになりますが、ブランド構築から集客まで、事業の成功も失敗もすべて自己責任となります。
自宅や間借り厨房から始める小規模モデル
初期投資を大幅に抑えたい場合、自宅のキッチンを改装して営業許可を得る方法があります。
店舗を借りる必要がなく、家賃や保証金といった大きな固定費を削減できるのがメリットです。
ただし、衛生基準を満たすための設備改修や、製造量の限界といった制約も考慮しなければなりません。
もう1つの選択肢が、飲食店の空き時間を借りる「間借り厨房」やシェアキッチンです。
すでに営業許可を取得済みの厨房設備を低コストで利用できるため、テストマーケティングや副業として始める際に非常に有効な手段となります。
仕出し弁当と日替わり配食サービス
提供するサービスの形態にも違いがあります。
仕出し弁当は、主に法人や団体向けに、会議やイベントなどの需要に応じてまとまった数の弁当を予約制で提供するビジネスです。
事前に注文数が確定するため、食材のロスが少なく、売上の予測を立てやすいのが特徴です。
一方、日替わり配食サービスは、主に高齢者や共働き世帯の個人宅へ、定期契約で毎日異なるメニューを届けます。
継続的な利用による安定した収益基盤を築きやすい反面、日々の献立作成や効率的な配送ルートの構築が運営上の課題です。
宅配弁当の起業が「儲からない」と言われる3つの理由
宅配弁当ビジネスは、参入障壁が比較的低い一方で、継続して利益を出し続けることが難しい側面もあります。
「思ったより利益が残らない」「忙しいだけで手元にお金がない」といった事態を避けるためには、なぜ儲からないと言われるのか、構造的な理由を事前に理解しておくことが必要です。
主な要因は3点に集約されます。
- 食材原価と人件費で利益を圧迫しやすい
- 競合が多く差別化が難しい集客と配送問題
- 初期投資の回収に時間がかかる設備と車両費用
これらのリスクを正しく認識し、適切な対策を講じることが求められます。
食材原価と人件費で利益を圧迫しやすい
宅配弁当の利益構造において、最も大きな割合を占めるのが食材費と人件費です。
特に、健康志向や品質へのこだわりを追求しすぎると、食材原価率は容易に上昇し、利益を圧迫します。
また、調理スタッフに加え、配送スタッフの人件費も発生するため、労働集約型のビジネスモデルになりがちです。
適切な原価率の設定と効率的な人員配置を行わなければ、どれだけ売上を上げても、最終的な利益はわずかしか残らないという状況になります。
競合が多く差別化が難しい集客と配送問題
大手フランチャイズから個人店、コンビニエンスストアまで、宅配弁当市場には多くの競合が存在します。
似たような価格帯やメニューでは顧客に選ばれにくく、新規顧客を獲得するための広告宣伝費がかさむ傾向です。
さらに、配送エリアが広すぎると、ガソリン代などの配送コストが増加するだけでなく、移動時間のロスにより、一日に届けられる件数が制限されてしまいます。
他店との差別化ポイントを明確にし、効率的に回れる商圏に絞り込むことが、収益性を高めるポイントです。
初期投資の回収に時間がかかる設備と車両費用
店舗型の飲食店に比べれば初期費用は抑えられますが、それでも業務用厨房機器や冷蔵設備、配送用の車両といった設備投資には、数百万円規模の資金が必要です。
これらの設備は減価償却費として長期にわたり計上され、毎月の収益を圧迫する要因となります。
売上が軌道に乗るまでの運転資金も確保しておかなければ、投資回収の目処が立つ前に資金繰りが悪化し、廃業に追い込まれるリスクがあります。
小さく始めて、需要に応じて徐々に設備を拡張していく姿勢が重要です。
宅配弁当の起業で失敗しない3つの方法
宅配弁当ビジネスには固有のリスクがあるものの、それを回避し、安定した収益を生み出すための確実な方法は存在します。
成功している事業者の多くは、感覚的な経営ではなく、数字に基づいた管理と明確な戦略を持って運営しています。
失敗を避けるための具体的なアプローチは3つです。
- 原価管理とメニュー構成で利益率を高める
- 高齢者や法人など特定ターゲットへの絞り込む
- 補助金や日本政策金融公庫の創業融資を活用する
これらの方法を実践することで、リスクを最小限に抑え、持続可能な事業運営が可能になります。
原価管理とメニュー構成で利益率を高める
利益を確保するための基本は、食材原価率を徹底的に管理することです。
具体的には、販売価格が800円のお弁当であれば、食材原価を30%(240円)、容器・包装代を5%(40円)以内に抑え、1食あたり520円の粗利益を確保するといった明確な基準を設けます。
季節の安価な食材を活用したり、廃棄ロスを減らすための予約制を導入したりする工夫が必要です。
また、利益率の高いサイドメニューを組み合わせるなど、全体の原価バランスを調整しながら、顧客満足度を下げずに収益性を高めるメニュー構成を考えることが重要です。
高齢者や法人など特定ターゲットへ絞り込む
「誰にでも売れる弁当」を目指すと、結局誰にも刺さらず、大手チェーンとの価格競争に巻き込まれてしまいます。
そこで、「地域の高齢者向け配食」や「企業の会議用弁当」のように、特定のターゲットに絞り込むことが有効です。
ターゲットを明確にすれば、メニュー開発の方向性が定まり、効率的な営業活動が可能になります。
特に高齢者向けは継続利用が見込め、法人向けはまとまった注文が期待できるため、特定の顧客層のニーズを深く満たすことで、安定した売上基盤を築けます。
補助金や日本政策金融公庫の創業融資を活用する
自己資金だけで、すべての開業資金を賄うのはリスクが高く、手元の現金を減らすことは経営の安定性を損ないます。
そこで検討したいのが、国や自治体の補助金制度、日本政策金融公庫の創業融資です。
2つを活用すれば、初期投資の負担を軽減し、運転資金に余裕を持たせることができます。
特に創業融資は、事業計画書の作成を通じて自身のビジネスモデルを見直す良い機会にもなり、資金的なゆとりを持つことで、予期せぬトラブルにも対応できる経営体質を構築できます。
宅配弁当の起業で必須となる資格と営業許可
宅配弁当の開業には、法律に基づいた適切な資格取得と営業許可の申請が不可欠です。
「自宅で作るから大丈夫だろう」といった安易な判断で無許可営業をしてしまうと、営業停止処分や罰則を受けるだけでなく、食中毒などの事故が起きた際に取り返しのつかない事態を招きます。
お客様に安全な食事を提供するための法的責任を果たすことは、事業主としての義務です。
ここでは、必ず押さえておくべき資格と許可について解説します。
食品衛生責任者資格と飲食店営業許可の取得手順
開業にあたり、必ず取得しなければならないのが「食品衛生責任者」の資格です。
これは調理師や栄養士の免許がなくても、各自治体で開催される講習会を受講することで取得できます。
次に、管轄の保健所に「飲食店営業許可」を申請します。
自宅のキッチンとは別に、業務用の手洗い設備や床材など、保健所が定める施設基準を満たした調理場が必要です。
内装工事を始める前に保健所へ図面を持参し、事前相談を行うことで、基準を満たせずに再工事となるリスクを防止できます。
手作り弁当の販売と仕入れ販売での許可の違い
自分で調理した弁当を販売する場合は、前述の「飲食店営業許可」が必要です。
一方、他店で作られた完成品の弁当を仕入れて販売するだけの場合は、「食料品等販売業」の届出や許可が必要になるケースがあります。
また、パンや菓子類を製造して販売するには「菓子製造業許可」、乳製品を扱うなら「乳類販売業許可」など、取り扱う品目や販売形態によって必要な許可は異なります。
自分のビジネスモデルがどの許可区分に該当するのか、管轄の保健所で正確に確認することが重要です。
まとめ:宅配弁当で起業して地域の食を豊かにしよう
宅配弁当ビジネスは、高齢者人口の増加やライフスタイルの変化に伴い、今後も確実な需要が見込まれる成長産業です。
初期投資や競合との差別化といった課題はありますが、適切な事業形態を選び、リスク管理を徹底することで、十分に利益を得られます。
何より、あなたが作るお弁当は、忙しい共働き世帯や買い物が困難な高齢者にとって、日々の生活を支える大切な「食」となります。
ビジネスとしての成功を目指すと同時に、地域の人々の健康と笑顔を守るやりがいのある仕事です。
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