2025.12.03 起業ガイド
トリマー起業は出張トリミングが儲かる理由と開業方法
Index
「ペット関連で起業したいけど、何から始めたらよいかわからない」。こう感じている方は少なくありません。
トリマー起業や出張トリミングで独立を考えても、収入や集客面での不安もあるはずです。
そこで今回は、トリマーが自宅サロンや出張トリミングで起業を進める手順と収支の考え方を紹介します。
本記事を読めば、トリマーならではの働き方や起業や経営に関する数字のイメージをつかみ、自分に合った独立スタイルを描けるようになります。
トリマー起業で出張トリミングが儲かる3つの理由

出典:経済解析室「ペットブームのその後は?(犬の登録頭数・猫の飼育頭数の推移)|経済産業省
グラフを見ると、犬の登録頭数は長期的には減少傾向にあるものの、直近では減少幅が小さくなり横ばいに近づいています。
一方で猫の飼育頭数は、一度減少したあとに再び増加に転じており、全体としてペットと暮らす世帯は大きく減ってはいません。
つまり、新規のペットブームが続いているわけではないものの、すでに犬や猫と暮らしている家庭のトリミング需要は今後も安定して存在すると考えられます。
そのため、地域の飼育頭数に合わせて顧客数を見積もれば、出張トリミングや自宅サロンでも現実的な売上目標を立てやすくなっているのがトリマー起業です。

出典:経済解析室「ペットブームのその後は?(ホームセンターにおけるペット・ペット用品の名目販売額と実質販売額の推移)|経済産業省」
また、上記のグラフから、ホームセンターにおける「ペット・ペット用品」の名目販売額は近年増加していますが、物価の影響を除いた実質販売額はむしろ縮小していることがわかります。
これは、ペットフードや用品の値上がりによって、飼い主が支出に慎重になっていることを意味します。
その一方で、飼育を続ける以上、カットやシャンプーなどのケアは一定の頻度で必要です。
出張トリミングは、店舗家賃を抑えつつ、移動時間やルート設計を工夫することでコスト管理がしやすく、物価高の環境でも利益を確保しやすいトリマーで独立する際のビジネスモデルといえます。
1. 出張トリミングが儲かる仕組みと収入モデル
出張トリミングが利益を出しやすい最大の要因は、固定費の安さと高単価な価格設定にあります。
店舗型サロンの場合、家賃や光熱費だけで毎月15万〜40万円以上の固定費がかかりますが、出張型であればガソリン代や車両の維持費のみに抑えられます。
また、飼い主の自宅へ訪問する利便性を提供するため、通常のカット料金に「出張費」を上乗せすることが一般的です。
例えば、トイプードルのカット料金を8,000円、出張費を2,000円とした場合、1頭あたりの売上は1万円になります。
1日3頭を20日間稼働させた場合、月商は60万円となり、そこから経費を差し引いても手元に残る金額は大きくなります。
このように、低コストで高付加価値なサービスを提供できる点が、出張トリミングの大きな強みです。
2. 勤務トリマーの年収は396万円

出典:職業情報提供サイト「job tag」トリマー|厚生労働省
データからもわかるように、勤務トリマーの平均年収は396万円前後といわれていますが、独立開業することで年収アップを実現する方は多くいます。
店舗型サロンを経営する場合、テナント料やスタッフの人件費が重くのしかかるため、オーナー自身の年収は500万〜600万円程度で頭打ちになるケースも少なくありません。
一方で、一人で運営する出張トリミングや自宅サロンの場合、売上のほとんどがそのまま利益になります。
もちろん集客の努力は欠かせませんが、リピーターが定着すれば年収500万円以上を安定して稼ぐことは十分に可能です。
さらに、自分の裁量で予約枠を調整できるため、売上を最大化する繁忙期と休みを優先する閑散期を使い分けるなど、柔軟な働き方ができるのも独立ならではのメリットといえます。
3. トリマーは1日に何頭カットするのか目安が必要
ひとりで開業する場合、1日に担当できる頭数は3頭から4頭が現実的な目安になります。
勤務時代に「スピード重視で1日6頭以上」を求められていた方もいるかもしれませんが、独立後は頭数よりも「質」と「単価」を重視するスタイルへの転換が必要です。
移動時間や準備、片付けを含めると、1頭あたり3時間程度の枠を確保することで、飼い主とのコミュニケーションや丁寧な仕上げが可能になります。
無理に予約を詰め込みすぎると、サービスの質が低下したり、体調を崩して休業せざるを得なくなったりするリスクがあります。
長く安定して経営を続けるためには、自分が無理なく対応できる頭数で目標売上を達成できる単価設定にすることが重要です。
トリマー起業の開業資金と必要なもの
トリマーが独立する際、どの程度の資金を準備すべきかは開業スタイルによって大きく異なります。
ここでは具体的な金額と必要な設備について解説します。
トリマー開業資金と独立費用の内訳
自宅の一室を改装してサロンにする場合、開業資金の目安は200万〜650万円程度です。
内訳としては、内装工事費に100万〜300万円、ドッグバスやトリミングテーブルなどの設備費に50万〜150万円、広告宣伝費や備品購入に60万〜200万円ほどがかかります。
一方、テナントを借りて開業する場合は、物件取得費や大規模な内装工事が必要となるため、500万〜800万円以上の資金が必要になることも珍しくありません。
初期投資を抑えたい場合は、まずは出張トリミングや自宅サロンから小さく始め、利益が出てから店舗を構えるというステップを踏むのが賢明です。
資金計画を立てる際は、開業費だけでなく、売上が安定するまでの半年分程度の生活費を含めた運転資金も必ず確保しておきます。
トリミングカー中古や出張トリミングカー費用
トリマーが出張トリミングを行う場合、専用の設備を備えたトリミングカーが必要です。
新車で購入する場合、軽自動車タイプで300万〜400万円、バンタイプであれば400万〜600万円程度が相場となります。
初期費用を抑えたい場合は中古車を検討するのも一つの方法で、状態にもよりますが150万〜250万円程度で見つかることがあります。
ただし、中古車の場合は給排水設備や発電機のメンテナンス状況を入念に確認しなければなりません。
また、最近では月額数万円から利用できるトリミングカーのリースサービスも登場しています。
手元の資金を残しつつ事業をスタートさせたい方は、購入だけでなくリースの活用も検討してみる必要があります。
トリマー開業で必要なものと営業許可
トリミングサロンを開業するためには、「第一種動物取扱業」の登録が必須となります。
営業許可登録を行うためには、事業所ごとに「動物取扱責任者」を1名選任しなければなりません。
動物取扱責任者になるには、獣医師や愛玩動物看護師の免許を持っているか、あるいは「半年以上の実務経験」に加えて所定の学校卒業や資格取得が求められます。
設備面では、シンク(ドッグバス)、トリミングテーブル、ドライヤー、バリカンなどの基本道具に加え、消毒設備や汚物処理のための設備も必要です。
自宅トリミングサロンの場合でも、飼育スペースと居住スペースが明確に区分されているかなど、保健所の立ち入り検査で細かくチェックされます。
物件や車両を契約する前に、必ず管轄の保健所へ図面を持参して事前相談を行うことで、手戻りを防げます。
トリマー起業で失敗や廃業率を防ぐ3つの視点
独立にはリスクが伴いますが、失敗するパターンを知っておくことで事前に対策を打つことができます。ここでは廃業を防ぐための経営視点をお伝えします。
1. トリマー開業失敗とトリミングサロン廃業率
一般的に、個人事業主が開業して3年以内に廃業する割合は高いといわれており、トリミングサロンも例外ではありません。廃業率は、5%〜10%程度といわれています。
特に多いのが、技術力には自信があっても経営のノウハウが不足しており、資金繰りに行き詰まるケースです。
また、トリマーという職業柄、腰痛や腱鞘炎などの体調不良により、ハサミを持てなくなって廃業を余儀なくされることもあります。
ひとりで経営する場合、自分が働けなくなることは収入がゼロになることを意味します。
そのため、万が一の怪我や病気に備えて所得補償保険に加入したり、体に負担のかかりにくい道具や設備を導入したりするなど、健康管理も重要な経営戦略の1つです。
2. トリミングサロン開業失敗の2つの共通点と対策
開業に失敗するサロンの多くは、「集客の見通しが甘い」「安すぎる価格設定」の2つの共通点があります。
「良いサービスを提供していれば自然と客は来る」と考えがちですが、競合が多い地域では待っているだけでは新規顧客は獲得できません。
開業前からSNSやホームページで情報発信を行い、認知度を高めておく努力が必要です。
また、自信のなさから近隣店舗よりも安く設定してしまうと、数をこなさなければ利益が出ず、結果として疲弊してしまいます。
安売り競争に巻き込まれるのではなく、「皮膚ケアに強い」「シニア犬も安心」といった独自の強みを打ち出し、適正価格で選ばれるサロンを目指すことをおすすめします。
3. トリミングサロン利益率と撤退ラインの考え方
事業を長く続けるためには、ざっくり計算する「どんぶり勘定」をやめて毎月の収支を正確に把握する必要があります。
一般的なトリミングサロンの利益率は20%〜30%程度ですが、家賃や人件費のかからない一人経営の場合、売上の50〜60%を目指せます。
しかし、売上が経費を下回る赤字の状態が半年以上続くようであれば、経営方針の抜本的な見直しが必要です。
最悪の事態を避けるためにも、開業前に「資金が残り◯◯万円になったら撤退する」あるいは「アルバイトを併用する」といった撤退ラインや新プランを決めておくことが大切です。
感情ではなく数字に基づいて判断することで、再起不能なほどの借金を背負うリスクを回避できます。
トリマー起業と補助金活用や公的支援情報
開業資金の負担を軽減するために、国や自治体が提供する補助金や融資制度の活用を検討します。
補助金や助成金は返済不要のため、資金調達のチャンスにもなります。
トリミングサロン開業補助金や融資制度
個人での小規模な開業において使いやすいのが「小規模事業者持続化補助金」です。
これはチラシの作成やウェブサイトの構築、店舗の改装費などの販路開拓にかかる経費の一部(通常50万円まで)が補助される制度です。
また、トリミングカーや予約システムの導入に「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」が活用できる場合もあります。
資金調達については、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」が代表的です。
これは無担保・無保証人で融資を受けられる制度で、多くの創業者が利用しています。
これらの制度を利用するためには事業計画書の作成が必要ですが、商工会議所などの窓口で無料で相談に乗ってもらえるため、早めの情報収集と資料の準備がポイントです。
トリミングサロン経営資格と公的講習情報
動物取扱責任者の要件を満たすために必要な資格は多岐にわたりますが、代表的なものとしてジャパンケネルクラブ(JKC)のトリマー資格や、認定団体のライセンスがあります。
すでに実務経験がある方でも、独立にあたって「愛玩動物飼養管理士」などの資格を追加で取得すれば、飼い主への信頼性を高めることができます。
また、動物愛護管理法は頻繁に改正されるため、開業後も自治体が実施する「動物取扱責任者研修」へ年1回の参加は義務です。
こうした講習や研修は最新の法令や動物福祉の知識を得る貴重な機会です。
常に学び続ける姿勢を持つことが、プロの経営者としての責任を果たし、顧客からの信頼を守ることにつながります。
まとめ:トリマー起業で自分らしい独立を実現
トリマー起業は、決して夢物語ではなく、計画的に準備を進めれば十分に実現可能なキャリアプランです。
出張トリミングや自宅サロンという形態を選べば、初期費用を抑えつつ、ライフスタイルに合わせた働き方を手に入れることが可能です。
まずは自分の理想とする働き方と、実現するために必要な売上や経費を具体的に計算してみます。
そして、今の職場にいながらできる情報収集や、事業計画の作成に取り組んでみましょう。
あなたの技術と経験を活かして、多くのペットと飼い主を笑顔にするサロンを作り上げてください。
◯関連記事
・【ペットシッターで起業】資格なしでも成功する!始め方と集客の秘訣
・【ペット業界で起業】アイデア12選|「好き」を仕事にする成功戦略