2025.08.09 起業ガイド
開業届で税金は増えない!個人事業主の賢い節税ガイド
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個人事業主として開業届を出すと、税金がかかりそうだし、手続きが面倒で、税務署に目をつけられたくならどうしようと誤解や不安を抱えていませんか?
実は、開業届は税金を増やすものではなく、むしろ最大限の節税をするためのスタートラインに立つための重要な手続きです。
この記事では、開業届と税金の正しい関係、そして知らないと年間数十万円も損する可能性のある青色申告のメリットまで、専門家が初心者にも分かりやすく徹底解説します。
この記事を読めば、個人事業主として開業するにあたって、税金の悩みが解消されます。
【結論】開業届を出しても、すぐに税金が増えるわけではない
まず、最も大切な結論からお伝えします。開業届を税務署に提出したからといって、税金が増えることは一切ありません。
開業届は「事業を始めました」という単なる報告書
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、あくまで「私、〇〇は、この日から個人事業主としてビジネスを始めました」と税務署に報告するための書類です。
この届出によって、あなたが事業を行っている事実を税務署が把握しますが、それだけで新たな税金が課されることはありません。
税金は「利益(所得)」に対してかかるもの
個人事業主が支払う税金は、事業の「売上」ではなく、売上から経費を差し引いた「利益(所得)」に対してかかります。
つまり、事業が赤字で利益がなければ、所得税や住民税は発生しません。
開業届を出したかどうかに関わらず、利益が出れば納税の義務が生じ、利益がなければ納税の義務は生じない。これが大原則です。
むしろ開業届は「節税の権利」を得るための第一歩
では、なぜ開業届を出すのでしょうか。その最大の理由は、強力な節税メリットがある「青色申告」を行うための前提条件だからです。
開業届を提出することは、納税義務を増やす行為ではなく、むしろ「私はこれからルールに則って事業を行い、その代わりに節税の権利を使います」という意思表示です。
今すぐできるアクション:
「開業届=納税義務の始まり」という誤解を捨て、「開業届=節税権利の獲得」と意識を切り替えましょう。
個人事業主にかかる4つの税金とそのタイミング
開業届を出す・出さないに関わらず、個人事業主として利益が出た場合に関わってくる主な税金は4種類です。
それぞれの内容と支払うタイミングを把握しておきましょう。
税金の種類 | 内容 | 支払うタイミング |
---|---|---|
所得税 | 1年間の利益(所得)にかかる国の税金 | 翌年2月16日~3月15日に確定申告・納税 |
住民税 | 所得税の確定申告情報に基づき計算される地方の税金 | 翌年6月頃に納付書が届き、年4回に分けて納税 |
個人事業税 | 法律で定められた70業種で、利益が290万円を超えた場合にかかる税金 | 翌年8月頃に納付書が届き、年2回に分けて納税 |
消費税 | 2年前の売上が1,000万円を超えた場合などにかかる税金 | 翌年3月31日までに確定申告・納税 |
これらの税金は、すべて確定申告で計算された「所得」を基に算出されます。
だからこそ、次に説明する「青色申告」で所得をいかに圧縮できるかが、手元に残るお金を最大化する鍵となるのです。
開業届を出す最大のメリットは「青色申告」による節税効果
開業届を提出する最大のメリットは、青色申告承認申請書を同時に提出することで「青色申告」が選択できる点にあります。
この制度を活用するかどうかで、手元に残るお金が劇的に変わります。
青色申告とは?白色申告との違い
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
青色申告は、正規の簿記の原則に従って帳簿付けを行う代わりに、税金面で非常に大きな優遇を受けられる制度です。
一方、白色申告は簡易的な帳簿で済みますが、税制上のメリットはほとんどありません。
メリット1:最大65万円の特別控除(利益を圧縮できる)
青色申告の最大の目玉が、所得から最大65万円を無条件で差し引ける「青色申告特別控除」です。
例えば、利益が300万円だった場合、65万円を引いた235万円を基に税金が計算されるため、大幅な節税になります。これは、白色申告にはない強力なメリットです。
メリット2:赤字を3年間繰り越せる(将来の黒字と相殺)
開業1年目が赤字になってしまっても、青色申告ならその赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。
1年目に50万円の赤字、2年目に100万円の黒字が出た場合、2年目の黒字と1年目の赤字を相殺し、利益50万円として申告できます。
メリット3:家族への給与を経費にできる(専従者給与)
配偶者や親族に事業を手伝ってもらっている場合、その給与を全額経費として計上できる「青色事業専従者給与」という制度があります。
白色申告でも控除はありますが上限額が低いため、家族と事業を行うなら青色申告が圧倒的に有利です。
今すぐできるアクション:
青色申告のメリットを享受するため、「開業届」と「青色申告承認申請書」は必ずセットで提出すると決めましょう。
【シミュレーション】青色申告だと、手取りはいくら変わる?
「青色申告が有利なのは分かったけど、具体的にいくら得するの?」その疑問にお答えします。
ここでは、年間所得(売上-経費)が300万円と500万円のケースで、白色申告と青色申告(65万円控除)の税額を比較してみましょう。
年間所得300万円の場合の比較
項目 | 白色申告 | 青色申告(65万円控除) |
---|---|---|
課税所得 | 252万円 | 187万円 |
所得税・住民税(概算) | 約38万円 | 約25万円 |
差額(節税額) | 約13万円 |
※基礎控除48万円を適用した場合の概算
年間所得500万円の場合の比較
項目 | 白色申告 | 青色申告(65万円控除) |
---|---|---|
課税所得 | 452万円 | 387万円 |
所得税・住民税(概算) | 約81万円 | 約65万円 |
差額(節税額) | 約16万円 |
※基礎控除48万円を適用した場合の概算
このように、所得が増えるほど節税効果は大きくなります。開業届と青色申告承認申請書の提出という一手間をかけるだけで、毎年これだけの金額が手元に残るのです。
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開業届に関する税金のQ&A
ここでは、開業届と税金に関してよく寄せられる質問にお答えします。これから開業を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
Q. 開業届を出さないとどうなる?罰則は?
A. 所得税法上、事業開始から1ヶ月以内の提出が義務付けられていますが、提出しなくても直接的な罰則はありません。
しかし、最大のペナルティは「青色申告ができないこと」です。また、屋号での銀行口座開設ができない、融資を受けにくいなど、事業上のデメリットも大きいです。
Q. 開業日はいつにすれば税金で有利?
A. 開業日をいつに設定しても、税金面で有利・不利になることは基本的にありません。
実際に事業を開始した日や、準備が整った日など、ご自身の都合の良い日付を記入して問題ありません。ただし、失業手当を受給している場合は、受給資格に影響する可能性があるため注意が必要です。
Q. 副業の場合、会社にバレる?
A. 開業届を提出したこと自体が会社に通知されることはありません。
副業が会社に知られる主な原因は、副業の所得によって住民税の額が変動し、経理担当者が気づくケースです。これを避けるには、確定申告の際に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択する方法があります。
Q. 赤字でも開業届は出すべき?
A. 赤字の場合こそ、開業届と青色申告承認申請書を出すべきです。
青色申告のメリットである「赤字の3年間繰越控除」が使えるためです。今年の赤字を来年以降の黒字と相殺できるため、将来の節税につながります。
まとめ:開業届は賢く節税するための「お守り」
開業届と税金の関係、そして青色申告の重要性をご理解いただけたでしょうか。
この記事のポイントをまとめます。
- 開業届を出しても税金は増えない。税金は利益(所得)にかかる。
- 開業届を出す最大のメリットは、強力な節税策である「青色申告」の権利を得られること。
- 青色申告には「最大65万円の控除」「赤字の繰越」など、金銭的なメリットが大きい。
- 開業届と青色申告承認申請書は、必ずセットで期限内に提出することが鉄則。
開業届は、あなたを縛るものではなく、むしろ事業を守り、手元資金を最大化するための賢い「お守り」のような存在です。
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