2025.11.28 起業ガイド

福祉用具起業の条件や手順と利益が出る独立開業の仕組みを解説

福祉用具起業の条件や手順と利益が出る独立開業の仕組みを解説

「福祉用具専門相談員として現場で利用者に最適な提案を重ねても、会社員のままでは給与や裁量に限界がある」

「培った介護の知識と営業力を、もっと正当に評価される自分の事業として社会に還元したい」

このように現状への迷いを抱き、独立を志しても、何から手を付けたら良いかわからず、具体的な準備に進めない方も多いのではないでしょうか。

今回は、福祉用具起業を果たすための手順や開業資金の目安、そして安定して稼ぐための仕組みを解説します。

本記事を読めば、介護保険制度の特性を理解し、在庫リスクを抑えて着実に利益を積み上げる経営手法が分かります。

福祉用具起業の現状と将来性や儲からない噂の真実

福祉用具起業
出典:令和5年度 介護保険事業状況報告(年報)|厚生労働省

グラフの左端、制度開始当初の平成12年度には約256万人(2,562千人)だった認定者は、右端の令和5年度には約708万人(7,083千人)と、23年間で約2.8倍にまで増加しました。

特筆すべきは、この期間中に一度も減少することなく、きれいな右肩上がりで増え続けている点です。

多くの産業が少子化による市場縮小に直面するなか、福祉用具業界の「見込み客」は、これほど明確に拡大トレンドにあります。

では、なぜこれほど潤沢な市場でありながら「儲からない」「やめとけ」という噂が絶えないのでしょうか。

ここでは、データの裏にある市場の真実と、収益構造の正体を解き明かします。

約2.8倍増加した高齢化に伴う市場拡大と福祉用具貸与の今後

グラフが示す認定者数の増加は、今後も長期にわたり続くと予測されています。

日本はこれから、団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年に向けて、高齢化のピークを迎えます。

在宅介護を推進する国の施策もあり、車いすや特殊寝台といった福祉用具は、生活を支えるインフラとして欠かせない存在です。

つまり、福祉用具貸与事業は一過性のブームではなく、今後10年、20年先まで需要が約束された成長産業といえます。

これから参入しても「遅すぎる」ということはなく、むしろ需要の増大に対して供給の質を高める事業者が求められています。

儲からないと言われる理由と利益率の実態

圧倒的な需要があるにもかかわらず、「儲からない」という声が出るのには、構造的な理由があります。

1つは、介護報酬という公定価格(上限)が決まっており、爆発的な高利益を出しにくい点です。

もう1つは、利用者の獲得をケアマネジャーからの紹介に依存するため、営業力が弱いと客数が伸び悩み、損益分岐点を超える前に資金が尽きてしまうケースです。

しかし、これは「市場が悪い」のではなく「戦略不足」に起因します。

厚生労働省の経営実態調査などを見ても、福祉用具貸与の収支差率(利益率)は安定して推移しており、適切な営業と経費管理を行えば、十分に黒字化が可能な事業です。

一定割合の事業所が安定して5〜10%以上の黒字を確保

福祉用具起業
出典:令和5年度介護事業経営実態調査結果|厚生労働省

上記のグラフは、全国の福祉用具貸与事業所がどれだけ利益(収支差率)を上げているかを階級別に集計・可視化したものです。

これは「全事業所のうち、1〜3%、5〜7%、10%以上など、利益率がどの階級に分布しているか」を棒グラフで示しており、赤字の事業所が一部存在する一方で、一定割合の事業所が安定して5〜10%以上の黒字を確保していることが読み取れます。​

この分布から分かるのは、福祉用具貸与は全員が大儲けできるわけではないが、営業や効率経営を工夫すれば、毎月安定したストック収入型の黒字運営も十分に可能という、業界内の実態です。

多くの事業所が公定価格制の下でも経費管理や営業体制を整え、しっかり利益を確保しています。

福祉用具起業に必要な資格と人員や設備基準の要件

福祉用具貸与事業所を開設するには、介護保険法に基づく「指定基準」を満たし、都道府県や市町村からの指定を受ける必要があります。

ここでは、事業の基盤となる「人(資格・人員)」と「箱(法人・設備)」の条件を整理します。

福祉用具専門相談員の資格一覧と取得方法

福祉用具貸与事業所には、専門的な知識で選定やフィッティングを行う「福祉用具専門相談員」の配置が義務付けられています。

この職務に就くには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 指定講習修了者:福祉用具専門相談員指定講習(53時間)のカリキュラムを修了した者
  • 有資格者:介護福祉士、社会福祉士、保健師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、義肢装具士

もし経営者自身が上記の国家資格を持っていない場合でも、民間のスクールなどが実施する「指定講習」を受講すれば、比較的短期間で資格要件を満たすことが可能です。

現場経験のある介護職の方であれば、すでに保有している資格がそのまま要件に該当するケースも多いため、まずは資格証の確認からはじめます。

事業所の立ち上げに必要な人員基準と兼務規定

人員基準では、最低でも以下の2名の常勤換算職員が必要です。

  • 管理者:事業所の管理運営を行う責任者(常勤1名)
  • 福祉用具専門相談員:実務を行う専門職(常勤換算で2名以上)

「2名以上」と聞くと、必ず2人を雇わなければならないように見えますが、実は「管理者と専門相談員の兼務」が認められています。

つまり、経営者自身が管理者兼専門相談員として常勤し、もう1名の専門相談員(常勤または非常勤)を採用すれば、最低2名体制で開業要件をクリアできます。

初期の固定費を抑えるため、まずはこの最小構成でスタートし、利用者の増加に合わせて増員する手法が一般的です。

独立開業に向けた法人化の条件と設備基準

介護保険事業の指定を受ける大前提として、「法人格」を有していることが必要です。個人事業主では指定申請ができません。

株式会社、合同会社、NPO法人など、法人格の種類は問われませんが、定款の事業目的に「介護保険法に基づく福祉用具貸与事業」などの文言を正しく記載する必要があります。

また、設備基準として以下の環境を整えます。

  • 事務室:机や書庫などを配置できる専用スペース
  • 相談スペース:利用者のプライバシーに配慮した区画(パーテーション等でも可)
  • 保管設備:福祉用具を衛生的に保管できるスペース
  • 消毒設備:器材の消毒に必要な器材(消毒を委託する場合は不要なこともあり)

自宅の一室を事務所にする場合でも、生活空間と明確に区分けされており、独立した出入り口があるなどの条件を満たせば認められる場合があります。

福祉用具起業の手順と法人設立から指定申請の流れ

要件を確認したら、次は具体的な開業スケジュールを組みます。

物件の契約から指定までは概ね2〜3ヶ月程度かかりますが、逆算して行動することでスムーズな営業開始が可能です。

法人設立から指定申請を行い営業開始する6ステップ

開業までの大まかな流れは6ステップで完了します。

  1. 法人設立(定款作成・登記):事業目的に介護事業を行う旨を記載し、法務局で登記
  2. 事業所の確保・備品購入:設備基準を満たす物件を契約し、PCやデスク、電話などを設置
  3. 人員の確保:管理者および専門相談員を採用(または内定)し、雇用契約を締結
  4. 指定申請:都道府県または中核市の窓口へ申請書類を提出。通常、指定日の1〜2ヶ月前が締切
  5. 現地確認・審査:担当官による実地確認が行われ、設備基準などをチェック
  6. 指定・営業開始:指定書が交付され、晴れて毎月1日より事業開始

指定申請には膨大な書類が必要となるため、行政書士などの専門家に代行を依頼するか、自身で行う場合は十分な作成期間を確保しておくことが重要です。

福祉用具貸与事業所の開業資金と初期費用

福祉用具貸与は、訪問介護などと同様に大規模な施設投資が不要なため、比較的少額で始められる独立起業です。

初期費用の目安は、合計で300万〜500万円程度(運転資金を除く)と想定され、内訳は主に4つ挙げられます。

  • 法人設立費:約10万〜30万円(会社形態による)
  • 物件取得費:約50万〜100万円(敷金・礼金・仲介手数料など)
  • 車両購入費:約100万〜200万円(搬送用の軽バンやワンボックスカー)
  • 事務機器・ソフト:約50万〜100万円(請求ソフトやPC、複合機など)

特に車両は、利用者の自宅へ商品を搬入出するための重要な「足」です。

最初は中古車やリースを活用して初期支出を抑える戦略も有効です。

日本政策金融公庫の融資や助成金の活用方法

介護保険ビジネスは、サービス提供から入金(介護報酬の支払い)まで約2ヶ月のタイムラグがあります。

そのため、開業資金だけでなく、半年分程度の運転資金を手元に用意しておくことが安全経営の鉄則です。

自己資金で賄いきれない場合は、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などの活用を検討します。

無担保・無保証で利用できる枠もあり、多くの新規開業者が利用している融資です。

また、IT導入補助金や地域ごとの創業助成金などが使える可能性もあります。商工会議所や自治体の窓口で最新情報を収集し、活用できる制度は漏れなく申請することで、資金繰りの安定が図れます。

福祉用具起業で利益を出すビジネスモデルと戦略

準備が整い営業を開始した後は、いかにして利益を残すかが課題です。

福祉用具貸与は「卸レンタル」という独自の仕組みを活用することで、リスクを最小限に抑えつつ収益を上げられる構造を持っています。

福祉用具レンタルの利益構造と収支の見積もり

福祉用具レンタル事業の売上は、「利用者からのレンタル料(1〜3割)」と「国保連からの介護給付費(7〜9割)」の合計で構成されます。

利益の計算式はシンプルです。
レンタル売上 -(卸レンタル料 + 人件費 + 車両費等の経費)= 利益

例えば、月額レンタル料が平均2万円の利用者を50人獲得した場合、月商は100万円です。

ここから商品の仕入れ値(卸価格)や人件費を差し引いた残りが利益となります。

損益分岐点は、固定費の金額にもよりますが、おおよそ利用者数40〜60名程度です。

ここを超えれば、以降の新規契約分は大きな利益として積み上がっていきます。

在庫を持たずに運営できる卸レンタルの仕組み

「高価な電動ベッドや車いすを何台も購入する資金がない」と心配される方もいますが、その必要はありません。

多くの小規模事業所は、福祉用具の「卸レンタル(貸与卸)」という仕組みを利用しています。

これは、在庫を保有する卸会社から商品を借り、それを利用者へ又貸しするシステムです。

卸レンタルには、2つのメリットがあります。

  • 在庫リスクゼロ:商品がレンタルされた期間だけ卸料金を支払うため、不良在庫を抱えるリスクなし
  • メンテナンス不要:返却後の洗浄・消毒・メンテナンスは卸会社が行うため、消毒設備の設置や手間を省略

卸レンタルの仕組みのおかげで、独立直後の資金力が少ない時期でも、大手と同じラインナップの商品を提案でき、資金繰りを圧迫せずに経営を続けられます。

地域で信頼される営業戦略とケアマネジャー連携

福祉用具貸与事業において、利用者を獲得するルートはほぼ100%、「ケアマネジャー(居宅介護支援事業所)からの紹介」です。

そのため、地域のケアマネジャーに「この相談員なら安心して任せられる」と信頼されることが、経営安定の生命線となります。

営業戦略としては、単にカタログを配るだけでなく、3つの付加価値を提供することが重要です。

  • スピード対応:「退院が決まったので急いでベッドを入れたい」などの要望に即日対応
  • 解決策の提案:商品のスペック説明ではなく、「この手すりがあれば、転倒せずにトイレに行ける」という生活の解決策を提案
  • 報告・連絡・相談:利用者の小さな変化を敏感に察知し、ケアマネジャーへフィードバック

現場経験を持つ方であれば、ケアマネジャーが何に困っているか、利用者が何を望んでいるかを肌感覚で知っています。

現場力こそが、大手他社との差別化になり、選ばれる理由です。

まとめ:福祉用具起業で地域社会に貢献し安定経営へ

福祉用具事業での起業は、公的保険制度に守られた堅実なビジネスモデルです。

爆発的な利益を短期間で出すことは難しいものの、正しい手順で開業し、誠実な対応で信頼を積み重ねれば、在庫リスクを抑えながら着実に資産となる収益基盤を築けます。

少子高齢化が進む日本において、在宅生活を支える福祉用具の需要はこれからも拡大し続けます。

あなたの経験と資格を活かし、地域になくてはならない事業所として、起業してみましょう。

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