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2026.08.15 起業ガイド

介護施設・老人ホームを開業するには?種類別の要件と初期費用、倒産176件の現実

介護施設・老人ホームを開業するには?種類別の要件と初期費用、倒産176件の現実

「現場で培った経験を活かして、自分の理想とする介護施設を開業したい」。

高齢化が進む日本において、介護は需要が消えることのない社会インフラであり、介護報酬という公定価格に支えられた比較的読みやすい収益構造を持つ業態です。

しかし、一方で介護業界は人材確保難と報酬改定に常に揺さぶられる、極めて経営難易度の高い市場でもあります。

東京商工リサーチの調査によると、2025年の介護事業者の倒産は176件、うち訪問介護が91件と半数以上を占めました。

十分な資金計画や人員体制の設計なしに「利用者はいくらでもいるはずだ」という理由だけで開業すると、人員基準を満たせず指定を維持できないまま資金が尽きるケースが少なくありません。

本記事では、トップマーケターおよび介護事業経営支援の視点から、施設種別ごとの開設要件・リアルな初期費用・必要な法人格と人員基準・収支シミュレーション・倒産事業者と生き残る事業者を分ける経営判断までを徹底解説します。リスクを抑えて確実に収益化する事業をつくるためのロードマップとしてご活用ください。

まず知る:あなたが開業できる施設、できない施設

「老人ホーム」と一括りにされますが、法的な位置づけと開けるプレイヤーはまったく違います。

種類 必要な法人格 手続き 初期費用の目安
訪問介護 株式会社・合同会社・NPO法人等(個人事業主は不可 都道府県・市の指定申請 数百万円〜
デイサービス(通所介護) 同上 指定申請 1,000万〜3,000万円程度
住宅型有料老人ホーム 同上 老人福祉法第29条の届出 数千万円〜
介護付き有料老人ホーム 同上 届出+特定施設入居者生活介護の指定(自治体の総量規制あり) 1億円規模〜
特別養護老人ホーム(特養) 社会福祉法人・自治体等のみ 設置認可・補助金申請等 数億円規模

費用は規模・地域・物件形態で大きく変動する目安です。

ここで最重要の一点。

特別養護老人ホームは、老人福祉法第15条により国・自治体・社会福祉法人等が設置主体と定められており、株式会社では設置できません。

社会福祉法人の設立には所轄庁の認可と厳格な資産要件があり、個人が思い立って始められる領域ではありません。まずここで進路が分かれます。

もう一つ。介護付き有料老人ホームを名乗るには特定施設入居者生活介護の指定が必要ですが、多くの自治体が介護保険事業計画に基づく総量規制を敷いており、公募枠でなければそもそも指定を受けられないです。

事業計画を作る前に、必ず自治体の高齢福祉担当課で枠の有無を確認してください。

訪問介護:最も参入しやすく、最も倒産している

初期費用が最も低いのが訪問介護です。

要件は①法人格を持つこと、②人員基準(管理者、サービス提供責任者、訪問介護員を常勤換算2.5人以上)、③設備基準(事務室、相談スペース、手指消毒設備等)、④運営基準を満たし、自治体の指定を受けること。事務所と人が揃えば始められます。

だからこそ、最も苦しい。2025年の訪問介護倒産91件の内訳を見ると、原因の82.4%が売上不振、資本金500万円未満が80.2%、従業員10人未満が86.8%。

小規模事業者が集中的に脱落しています。倒産のうち94.5%が破産で、再建ではなく消滅を選んでいます。

理由は構造的です。介護報酬は公定価格のため値上げによる価格転嫁ができません。

一方でヘルパーは集まらず、賃上げ圧力とガソリン代・物価の上昇はそのままコストになる。売上の上限が制度で決まっている事業で、コストだけが自由に上がる。これが「需要はあるのに潰れる」の正体です。

なお政府は2026年度の臨時改定で2.03%の引き上げと最大1.9万円の介護職員の賃上げを決定しています。

追い風ではありますが、これは主に人件費に充てられる性質のもので、事業者の利益をそのまま押し上げるものではない点にご注意ください。

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有料老人ホーム:届出を怠ると罰則があります

有料老人ホームを設置する場合、老人福祉法第29条第1項に基づき、事業開始前に都道府県知事等への届出が必要です。

届出をせずに開設・運営した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります(同法第40条)。

注意すべきは「有料老人ホーム」の定義の広さです。

高齢者を入居させ、食事の提供、介護、家事、健康管理のいずれかを行う施設は、名称が「シェアハウス」「下宿」であっても該当し得ます。

いわゆる無届施設が問題になるのは、この認識のズレが原因です。多くの自治体が届出前の事前相談を必須としているため、物件を押さえる前に相談してください。

なお、2025年の有料老人ホームの倒産は16件で、過去最多だった2024年の18件からは減少しましたが、依然として過去2番目の高水準です。

認知症グループホームも2件から9件へ急増しており、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅との競合、職員不足による受け入れ制限が背景と指摘されています。

資金調達と、計画に必ず入れるべき「入金の谷」

資金は日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金は融資限度額7,200万円、設備資金20年以内・据置5年以内)、信用保証協会の創業関連保証、自治体の制度融資が中心です。

そして、この業界特有の落とし穴が介護報酬の入金サイクルです。国保連への請求から入金まではおおむね2か月かかります。4月にサービスを提供しても、入金は6月。

その間の人件費と家賃は、全額自己負担で立て替えることになります。

つまり開業費用とは別に、最低3〜6か月分の運転資金が必須です。

倒産の8割が売上不振とされていますが、実態としては「売上が立つ前に資金が尽きた」ケースが相当数含まれていると考えるべきです。

融資申込時にこの2か月の谷を織り込んだ資金繰り表を出せるかどうかで、審査官の評価は変わります。

それでも生き残る事業者の3条件

倒産事業者の共通項が「小規模・売上不振」である以上、打ち手は逆算できます。

第一に、開業前に紹介ルートを確保すること

介護は広告で集客する事業ではありません。

利用者は地域包括支援センターと居宅介護支援事業所のケアマネジャーから来ます。物件を契約する前に、商圏内のケアマネへ挨拶に回り、「この地域で足りていないサービスは何か」を聞く。ここで手応えがなければ、その立地では開業しないという判断すらあり得ます。

第二に、人員基準ギリギリで始めないこと。常勤換算2.5人で開業し、1人辞めた瞬間に基準を割れば、指定の維持ができません。倒産原因に「従業員退職」が並ぶのは、この脆弱さの表れです。

第三に、加算を取りに行くこと。基本報酬は横並びでも、処遇改善加算や特定事業所加算などを算定できるかで収支は変わります。制度が求める体制を整えられる事業者だけが、公定価格の中で利益率を動かせます。

よくある質問

Q. 介護の資格がなくても開業できますか?

経営者自身の資格は必須ではありませんが、管理者やサービス提供責任者には要件があるため、有資格者を雇用する必要があります。ただし、現場を知らない経営者が制度改定に対応できず苦しむケースは多く、実務経験は事実上の必須条件に近いのが実情です。

Q. 一番小さく始めるならどの業態ですか?

訪問介護が最も初期費用を抑えられます。ただし本文のとおり最も競争が激しい領域でもあります。小さく始める目的を「安く始めること」ではなく「その地域で本当に需要があるかを検証すること」に置いてください。

Q. フランチャイズはどうですか?

指定申請の支援やノウハウ提供は価値がありますが、ロイヤリティは公定価格の収益構造を直接圧迫します。契約前に、加盟金・ロイヤリティ・解約条件を、想定売上に対する比率で必ず試算してください。

まとめ:需要ではなく、収支構造で判断する

介護施設の開業判断で見るべき順序は、①その業態を自分の法人格で開けるか(特養は不可、介護付きは総量規制)→②商圏のケアマネから紹介の見込みがあるか→③人員基準に余裕を持って配置できるか→④2か月の入金の谷を越える運転資金があるか。この4つです。

倒産176件という数字は、この市場が終わっているという意味ではありません。「高齢化しているから需要がある」という抽象的な理由だけで参入した事業者が、公定価格と人手不足という現実に耐えられなかったという意味です。地域の不足を具体的に把握して入る人には、依然として席があります。

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今の自分に必要な知識を学び、
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